すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

考えた果て、感じた果てに

2018年01月05日 | 読書

(20180104 車庫の初雪下ろし、結構ある)

2018読了1
 『残酷人生論』(池田晶子 毎日新聞社)


 パロディ風にこの本の語り口を紹介すれば…「人生論」とは何か。そも人生とは論じられるものか。詳らかに語れば、誰か特定の個を論じたとしても、その人生は、誰かであって貴方ではない。それが有益な何かをもたらすと言うか。信じることで行動を起こすためというかもしれない。否、「信じる」とは何ですか…。


 と、こんな感じで進むわけで、本当に「わかる」にはほど遠いのだが、救われるのは著者が「あとがき」に記した次の文章である。「最初はよくわからなくとも、子供がお経を諳んじるように諳んじているだけでも、あるときふと『わかる』ということも、あるかもしれない」。確かに音読していると頭に入りやすい本だ。


 読み上げてストンと落ちてくる部分が一つでもあればいいと思っている。今回は、この部分がすっと入ってきたので嬉しい。「対話とは、わからないもののわからなさについてわかり合う形式、そのとき、言葉が、不可知の宇宙を開く合鍵となる」。改めて「わからないことがわかっていること」が全ての基礎だと思う。


 「残酷」は何故つけられたか。著者は「考える」重要さを繰り返し強調しつつ、こうも書く。「自分が居て宇宙があるということは、なんと神秘か不思議なことと、普通に感じられてさえいるなら、答えはそこに尽きている」…それは残酷でもなく優しくもない。また残酷でもあり優しくもある…という観点で付けられた。