すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

徹底しない悩みの訳は

2018年01月28日 | 読書

 放春花(boke)2

2018読了10
 『100の悩みに100のデザイン』(南雲治嘉  光文社新書)


 先日、気の置けない友人と一献やっていたときに、何気なく「デザインの仕事をやってみたかったなあ」と呟いた。口にしてから少し自分でも驚いた気分になったのだが、教職を続けてきたなかで、まんざら無縁だったわけでもない。それは「デザイン」という語がずいぶんと広範囲に使われ出しているからだろう。


 このユニークな書名の本書では、デザインの本質を「問題を解決すること」とし、『デザイン辞典』からその意味を引用している。曰く「デザインとは、ある目的に向けて計画を立て、問題解決のために思考・概念の組立を行い、それを可視的・触覚的媒体によって表現すること」。英和辞典では、初めに「計画」とある。


 「可視的表現」の部分が強調されがちだが、最近の著名デザイナーの仕事はプロデューサー的要素も強いのは一般的だ。その意味では著者が喩えとして出した「料理人(レシピ)」「医者(処方箋)」は頷けるものがある。学校教育でもよく「グランドデザイン」等使われていた。そこに色や形や図や関係性を持ち込む。


 この新書は端的に日常的な仕事や生活の悩みについて問題解決法を図解するパターンでまとめられている。図解はここ十数年多少勉強したが、学んだこととの共通点を感じた。つまり問題把握、目的設定、計画立案、遂行手順等を絞り込みながら、筋道をつけていくこと。デザインとは、積み立て、組み立て結晶化だ。


 考え込んだ一節「初めてのものに出合ったとき、人は二つの反応を見せます。好奇心と恐怖心です」。好奇心を持つ者はデザイン志向なのだという。他人への興味もより強い。では、そうでない人つまり恐怖心が大きく自分への興味がより強い者は…というとアート志向だそうだ。うむ、徹底できない訳はそこにあったか。