すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

橋を渡れば、出逢える

2018年01月22日 | 読書

(201801-- いつ花開くかはお任せで)

 詩集としてとっつき易いのはアンソロジーだろう。テーマに出版社の意図や工夫が表れる。編者が誰かによってもずいぶん色合いが違ってくる。この詩集は「恋愛」と名がついているけれど、かなり範囲が広い。編者は語る。「恋うとは遠いものに橋を渡すこと、そうだとしたら、詩のことばはみんな恋を生きている


2018読了7
 『恋愛詩集』(小池昌代・編  NHK出版)


 冒頭は『一目惚れ』というポーランドの詩人が書いた作品。それに吉原幸子の『初恋』という詩もあるけれど、いわゆる男女の恋愛に焦点を当てた詩だけではない。宮沢賢治が二度登場し、一つは「報告」という二行詩。もう一つは「無声慟哭」なので、賢治を少しでも知る人は「恋愛」の意味の想像が拡がるだろう。


 若い時目にした詩にまた出会えた。それは滝口雅子の『男について』。本県出身の伝説のフォークシンガーである山平和彦が、デビューアルバム『放送禁止歌』の中で、曲をつけ発表している。後年、ある新書でその詩を見つけ性的情念のような感覚が迫ってきたことを覚えている。これも「恋愛」の強烈な側面である。


 編者の小池は、「恋歌」の読者は、現在進行形の恋する者ではなく「今日も明日も、一見恋とは程遠い現実のなかで、汚れにまみれながら生きている、わたしたち」だと言う。「恋」には初期も晩期もあり、種類と段階にあふれていると書く。人がそれぞれに発した「念」が漂流していて、詩によって呼び戻される感覚か。


 印象深い詩が並んでいる。『伝説』(会田綱雄)の「蟹」と「わたくしたち」のイメージの深さには胸を絞めつけられる。『はる なつ あき ふゆ』(大岡信)には、言葉の響きが描き出す情景の仕掛けに参った。時代を重ねてしまうからだろうか、編者も記すように『好日』(天野忠)の最終連の「落差」にはめまいがした。

 引用してあるサイトを紹介しましょう。
 『伝説』http://www.haizara.net/~shimirin/on/akiko_02/poem_hyo.php?p=1
 『はる なつ あき ふゆ』http://kz-style.seesaa.net/article/35649356.html
 『好日』http://loggia52.exblog.jp/16824010/