すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

本へ、手と声をいざなう

2018年09月28日 | 読書
 三十代半ばの学級担任の頃、ようやく「読み聞かせ」に身を入れて取り組み、手応えを感じたものだった。しかし翻って、父親として我が子に出来ていたかというと、かなり低い点数をつけるしかない。本は買い揃えたが、忙しさを言い訳にして手も声も伸びなかった。深く反省して、次の機会は(笑)と決意している。



2018読了91
 『かーかん、はあい 子どもと本と私』(俵万智 朝日文庫)


 これは読書案内としては最適な一冊だ。実際に母親として読んで聞かせ、また表現者としての目も発揮しているし、そして子どもの反応を汲み取りながら紹介している。書かれたのは10年ほど前だが、新しく父母になる方々には参考になるに違いない。新しく祖父になった自分には懐かしくもあり、新鮮でもあった。


 絵本が多いが、図鑑やドラえもんなどまであり、成長や興味にあった形で選択されている自然さがよい。どうしてこの本に子どもは惹きつけられるかという観察と解釈も、納得する。「失敗もするくまちゃんだからこそ、好きになって真似するのだろう。なんでもできるいい子がお手伝いをする話なんて、つまらない


 柳田邦男は「絵本は、人生で三度読むものですよ」と言ったそうである。世代的には子ども時代に多く読んだとは言えず、親としても中途半端だったので、もはや「人生の後半に自分のために…」という構えになってしまった。昨年も必要があって何冊か手にしたが、今後かなりペースを上げて読み深めていきたい。


 この文庫は2冊の単行本を合本にしたもの。歌人らしく文章中にいくつか歌が盛り込まれている。Ⅱの方つまり息子さんがある程度成長してから作られた歌がとてもいい。親心が切なく伝わってくる。さすがに上手い。三首紹介する。

振り向かぬ子を見送れり振り向いた時に振る手を用意しながら

「テロ」という言葉を君はいつどこでどんな文脈で知るのだろうか

たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやる いつかおまえも飛んでゆくから