すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

龍虎、相まみえて

2019年08月09日 | 読書
 発売日直前に注文しようとアマゾンを開いたら、次のような紹介があった。「緻密な論理を積み上げ天駆ける龍と、初等教育という迷い多き竹藪を自在に歩む虎が、ここに初めて一冊の本の中で相まみえます」横山社長が書いたのだろうか。しびれる惹句である。これが読まずにいられようか、という思いにさせられた。


2019読了78
『教育と授業  宇佐美寛・野口芳宏往復討論』(さくら社)



 この討論は、宇佐美先生が著書で述べている「前おきはやめよう」について、野口先生が「前おきも必要である」と題して批判することからスタートした。野口先生はその意義や効用を具体的に明らかにする。それに対して宇佐美先生は、「前おき」の概念を問題とする。この時点で十分に考えさせられることが多い。


 宇佐美先生は次の「予測」を書く。「両著者は、結論を求めるのではなく、読者が今後、思考・探究するのに参考になるヒント・示唆を具体例とともに書くという道を歩む」。まさにその通り。話題は「読み書き」「自己教育」「学習者・教材」「発問」「英語教育」と、次々に橋を架けながら道が作られるイメージで進む。


 物語教材『海の命』をめぐってかわされる応酬は読みごたえがある。長年野口先生から学んできた者にとっては、先生の考えは納得のいくものばかりである。宇佐美先生の指摘、批判に対して揺らがずに持論を展開し、具体例で応える姿勢には、そこで積み重ねられてきた理論と実践の頑強さがひしひし伝わってくる。


 読了してから、つけられた上記キャッチフレーズの見事さを改めて思う。「天翔ける龍と竹藪を自在に歩む虎」…ここには視点だけではなく、主戦場の違いによる攻撃の特性的なイメージも表現されている。双方が存在は意識していても、眼前の対象ではないので軽視する部分もある。ただ、相まみえている迫力は一品だ。