森三千代さんの「徒然草」あとがきも、
印象に残りますので、この機会に引用。
岩崎書店「日本古典物語全集⑦ 枕草子物語」(昭和50年)。
この本のあとがきから引用。
「・・しかし、もっともおどろくべきことは、
その感覚の新鮮なことです。
たとえば、蠅が顔にとまったのを、むれた足でとまると言ったり、
牛車で道を行って、車の輪がおしつぶして行く
よもぎの葉のにおいを感じたり、ちょっと人の気づかない、
それでいて、言われてみると、はっと思うような
新しい感覚をもっています。
また、人の心の、とてもこまかいところまで
わけいって考えています。
いい就職の知らせがあるかどうかを待っている一家の人びとの気持だとか、
あこがれていた宮中にはじめて出仕したときの清少納言自身の複雑な気持
だとかは、われわれ現代人が日常に味わっている気持ともぴったりします。
千年というながい年月をへだてていても、
人間の感情はそんなにちがってはいないと、つくづく考えさせられます。
『枕草子』の文章は、だらだらしたところがなく、
簡潔で、印象的です。そして、どこをとってみても、
ぴりっとしていて、生きているようです。
それは、多感で、明るくて、さっぱりした
清少納言の性質そのままをあらわしているようです。
賀茂の祭のことや、中宮の身辺の生活を書いたのを見ますと、
清少納言が、どんなに美しいものを愛していたかがわかります。」
(p314~315)
はい。枕草子の内容によりそう
豊穣でいて、さりげない「あとがき」を読めました。