和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

「大阪の名著発掘」。

2020-12-14 | 本棚並べ
昨日の寝床本は
谷沢永一編「なにわ町人学者伝」(潮出版社・昭和58年)。
といっても、すぐ寝てしまうので、
ちょっとの、数ページをめくって、寝ました。

この本の最後には、肥田晧三による「大阪の名著発掘」。
14ページに、10冊の本が紹介されておりました。
それぞれが、1ページほどの紹介文です。
ここでは、三木佐助著「玉淵叢話」(1902年)を
とりあげた文をとりあげてみます。
はじまりは
「『玉淵叢話(ぎょくえんそうわ)』は、幕末から明治大正時代に
大坂で出版業者として手広く営業を続け、機敏な活躍で業界の
成功者となった三木佐助(みきさすけ)の自叙伝である。
50歳の時に自己の経歴と見聞を口述したのを、
明治35年(1902)に出版したものである。」

はい。短い紹介文の真ん中をカットして、つぎは最後を引用。

「・・単なる出世物語ならさして推賞するにあたらぬのであるが、
ここには幕末から明治へかけての大阪書籍業界の実情、我国における
西洋楽器製造の初期の事情などが興味深く語られており、そうした主軸
に加えて丁稚生活の回想や大阪風俗の変遷がじつに面白く叙されている。

しかも、それらが談話形式のきわめて読みやすい文体で書かれ、
語られた事実と文体の妙が相俟って、一つの傑出した文学作品を
かたち作っているのである。いったんこの書物を手にしたら、
しまいまで巻をおけぬ位の面白さなのである。

明治時代の自伝文学にすぐれた作品は多く、
福沢諭吉の『福翁自伝』が第一に思い浮かぶけれども、
それと比べて決して遜色のない『玉淵叢話』のような
ユニークな自伝が大阪で生まれたことは愉快というべきである。」
(p168~169)


はい。こういう箇所を、つまんで読んでから寝ると、
「『福翁自伝』と比べて遜色のない」という箇所が
なんだか、夢のなかで、どんどん膨らんでゆくような、
そんな夢を見たような、見ないような寝起きとなります。

コメント
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