和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

枕草子で読む「心の贅沢」。

2020-12-03 | 本棚並べ
気になるので、枕草子の新しい現代語訳をさがしてみる。
ちくま学芸文庫に島内裕子校訂・訳「枕草子」上下巻があるので
すこしでも安くと古本で注文。
上には帯もありまして、その帯には大きめに
「大人のための、新訳」とあり、帯の下には、
「北村季吟の『枕草子春曙抄』本文に
文学として味わえる流麗な現代語訳を付す」とあります。
ページの最後をめくると
「本書は『ちくま学芸文庫』のために新たに書き下ろされたものである。」
とあります。
ちなみに、2017年4月10日第一刷発行。

うん。せっかくなので「はじめに」のはじまりを引用。

「春は曙・・・。この一言を聞いただけで、
『枕草子』の伸びやかで、美しく、楽しい世界が、心に広がる。
『枕草子』の世界は、当時、最高に豪奢な中宮定子の宮廷生活から
生れたが、その豪奢は、威厳に満ちた重々しさではなく、機知と辛辣、
笑いとさざめきが、縦横無尽の光の箭(や)となって飛び交い、
織り上げてゆくものであった。
だから、現代のわたしたちは、『枕草子』を読むことによって、
本当の心の贅沢というものを、つまりは、溌剌とした人間精神の精粋を、
わが胸の裡に蔵(おさ)めることができる。・・・」(p9)


うん。パラリとひらいた箇所から第73段
『喩無(たとしへな)き物』の現代語訳を引用。

「かけ離れすぎていて、とうてい比較できない物。
夏と冬。夜と昼。雨の日と晴れの日。
若い人と年老いた人。笑うのと腹が立つの。
黒と白。愛情と憎悪。藍色と黄蘗色(きはだいろ)。
雨と霧。かつての愛情が無くなってしまえば、
自分の相手を見る場合でも、相手が自分を見る場合でも、
もはや同じ人とも思えないくらい、
かけ離れた別人になっているものだ。」

うん。『評』も引用。

「この段は、今までの列挙章段と視点が違う。
なぜなら、今まである一つのテーマに当て嵌まるものを
次々に挙げていたのが、ここでは、極端な対立項をワンセットとして、
列挙しているからである。
季節や天候や時間帯や人間感情など、
ある意味で常識的であるが、最後の一文が、深い含蓄を感じさせる。

『春曙抄』はこの部分、『白氏文集』の『太行路』を引き、
『人情の反覆』(人間の心が反転してやまないこと)を示唆する。
・・・・・」(上巻p231~232)


はい。ちなみに現代語訳の「若い人と年老いた人」は、
原文では、「若きと、老いたると」となっております。

え~と。あとは、この文庫のページ数。
上巻が455ページで、
下巻は島内裕子さんの解説もはいって524ページ。



コメント (4)
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