和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

『草むしり』の禅問答。

2023-07-06 | 本棚並べ
火曜日に届いた古本に、
臼井史朗著「疾風時代の編集者日記」(淡交社・2002年)。内容は、
編集者としてご自身の日記から、故人をしのぶ箇所をとりあげてあります。

はい。こういうのは、横着なパラパラ読みには格別の味わいがあります。
ここはひとつ、芳賀幸四郎先生にまつわる古い日記をひらいている箇所。
そこを引用してみることに。

「 昭和40年9月16日 草むしり五徳

 今日は、昨日の敬老の日の代休日。10時頃から庭掃除。午後5時に終わる。

 何時だったか、芳賀幸四郎先生と話をしたときのことだった。
 君の趣味は何だね・・と。
 僕の趣味は草むしりですよ・・・と答えた。

 先生は、臼井君には魂消(たまげ)たよ・・・と、
 その理由はいったい何だと、それを言え、
 それを言わんと帰さんぞと禅問答みたいになり、
 結局草むしりの十徳か五徳かを語りあった。

 〇 個、孤独の自分が発見出来るということ!
   毎日毎日、誰かと何かを、いやな話ばかりに追っかけられている。
   禄でもない話ばかり。せめて一人になりたい。
   草むしりは自分をひとりにするものだ。

 〇 雑草の生命をきくことが出来る!
   草むしりである以上、雑草を取るのだが、
   雑草とて生きんがため、生命をかけて生きている、
   その姿を発見出来るということ。

 〇 土の感触から大地の呼吸を感じられる。・・・・

 〇 自問自答の時間が得られる!
   ぶつぶつと、何をつぶやいてもいい。
   自らが自らに問いただすこと。そのことの意味は大きい。
   そのことが出来るのは、この時間をおいて外にはない。禅ぐらいか?

 ・・・・・・・そんな話をしたことを思い出す。
 面白いことを言う奴だ、と笑われた。・・・・・    」( p106 )


ちなみに、芳賀徹のお父さんが芳賀幸四郎。

昨日、待っていた、新潮文庫の古本「注文の多い料理店」が届く。


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