和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

漱石の夏やすみ。

2023-07-23 | 思いつき
夏休みといえば、思い浮かぶのが
高島俊男著「漱石の夏やすみ」(朔北社・2000年。ちくま文庫・2007年)
単行本のカバーの折り返しには、こうあります。

「『木屑録』は、漱石が23歳のときに書いた房総旅行記である。
 これまでも存在は知られていたが、『漢文』で書かれているために、
 読まれることは少なく、まして味わわれ評価されることは稀な作品であった。

 本書は自在な訳文によって、『木屑録』本来のすがた、味わいを
 初めて明らかにしただけでなく、執筆の契機となっている
 漱石と子規の、文章を通しての友情に説き及ぶ。・・・   」

はじまりは、こうでした。

「『 木屑録(ぼくせつろく) 』は、
  夏目漱石が、明治22年、23歳のときにつくった漢文紀行である。
  漱石は、第一高等中学校の生徒であった。
  このとしの夏やすみを、漱石は旅行ですごした。 」

漱石の海水浴も記されております。

「 房州旅行中、おれは毎日海水浴をした。
  日にすくなくも二三べん、多くは五たびも六たびも、

  海のなかにてピョンピョンと、子どもみたいにとびはねる。

  これは食欲増進のためなり、あきれば熱砂に腹ばひになる。
  温気腹にしみて気持よし。

  かかること数日、毛髪だんだん茶色になり、
  顔はおひおひ黄色くなつた。

  さらに十日をすぎて、茶色は赤に、黄色は黒にと変化せり。
  鏡をのぞきこれがおれかと、アツケにとられたり。     」
                   ( p22  単行本 )

もう一箇所だけ引用しておきます。

「 ともに旅せるはわれを入れて五人、
  風流を解するやつは一人もない。

  酒を飲んではわめくやつ、大飯食って下女をたまげさせるやつ。
  ふろよりあがれば碁か花札で、ヒマをつぶすがおきまりなり。

  しかるに、我輩一人のみ、仲間にはいらず沈思黙考、
  うめきを発して苦悶のありさま。連中みなこれを笑ひものになし、

  こやつ変人なりと言ふもわれ顧慮するところなし。
  知るや知らずやかの邵青門、脳中に文を練るときは
  無限の苦しみある者に似、その文成るや歓喜きはまり、
  ・・・・                     」(p25単行本)


ちなみに、昨日の
宮沢賢治の夏休みは、農学校教師のころ。
夏目漱石の夏休みは、生徒のころでした。
コメント
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