和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

親鸞さんと井伏さんの現代語訳。

2023-10-05 | 詩歌
野間宏・増谷文雄の対談に

増谷『 ・・・「讃阿弥陀仏偈和讃」ですね、
    これは全部原文がありますですね。

    それを親鸞はなんとかやわらかくしようとしながらも、
    原文の大事なところは原文のままに生かして「和讃」を
    作っているのですね。・・・

    親鸞さんも実は現代語訳をしたんだなと気がついたのです。
    「讃阿弥陀仏偈」の文句は、むろん漢文でしょう。
    それを現代語訳なさっているんです。

    いわゆる歌を作るというのとは少しわけが違うように思うのです。

    現代では仏教ものの現代語訳をしきりとやりますけれども、
    あの時代に親鸞さんはもう現代語訳をなさっているのですな。」
         ( p10 「日本の思想3 親鸞集別冊 」筑摩書房 )


こういう箇所を読むと、先へとすすまずに、ひょんなことを思うんです。
そういえば、井伏鱒二に、漢詩の現代語訳があったなあ。

うん。ここは、井伏鱒二の『厄除け詩集』から、
この詩を引用したくなりました。原文は李白。

      静夜思   李白

    牀 前 看 月 光
  
    疑 是 地 上 霜

    挙 頭 望 山 月

    低 頭 思 故 郷


はい。井伏鱒二の現代語訳はというと。

    ネマノウチカラフト気ガツケバ

    霜カトオモウイイ月アカリ

    ノキバノ月ヲミルニツケ

    ザイシヨノコトガ気ニカカル


漢文を訳す、井伏鱒二の現代語訳というのは、
親鸞さんの時代から、連綿と続いているのだ。

その繫がりを知らずに、『厄除け詩集』を読んでいたのは、
何と不自然だったのだろう。と、ようやく気づく年頃です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする