和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

ハナニアラシノタトエ

2023-10-06 | 詩歌
福沢諭吉翁の言葉といわれる『心訓』というのがあります。
じつは、どうも福沢諭吉の文ではないようなのですが、
けれど、どうも福沢諭吉が語ってもおかしくないような言葉。
はい。そういうのって、ありますよね。

たとえば、親鸞の言葉といわれる

   あすありと思う心のあだ桜
         夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは

これも、親鸞の言葉といわれているのですが、出典未詳。
それはそれとして、この言葉の意味を知りたくなります。

「観桜は明日にしようと、明日を恃む心はあだである。
 夜半に嵐が吹いて、桜が散らないとはかぎらないのだから。

 この歌が人口に膾炙する理由の一つは、
 明日ありと恃む心が仇となって、
 いたずらに日を延ばしたばかりに、
 思わぬ故障から成るものが成らなかった経験、
 これが万人に普遍的であること。・・・    」
   ( p168 木村山治郎編「道歌教訓和歌辞典」東京堂出版・1998年 )

ちなみに、その次のページには五首が並んでおりました。
興味深いので、そのままに列挙。

  あすは斯(かく)ときのう思いしことも
     今日多くは変る世の習いかな

  こころしてことをばいそげ
   いそげたださわり出(いで)くる物は世の中

  明日ありと思う心にはかられて
     今日を空しく暮らしつるかな

  あすまでと思う心のおこたりに
     今日をばあだに暮らすはかなさ

  あすよりは徒(あだ)に月日を暮らさじと
      思いしかどもきょうも暮らしつ


もどって、親鸞の言葉といわれる

    あすありと思う心のあざ桜
      夜半(よわ)に嵐の吹かぬものかは

この次に、ついつい井伏鱒二の現代語訳の
言葉とを、ならべて置きたくなるのでした。

まずは、原文。そして、井伏鱒二訳。

      勧 酒       于武陵

    勧 君 金 屈 巵
    満 酌 不 須 辞
    花 発 多 風 雨
    人 生 足 別 離


   コノサカヅキヲ受ケテクレ
   ドウゾナミナミツガシテオクレ
   ハナニアラシノタトヘモアルゾ
   「 サヨナラ 」ダケガ人生ダ


    ( p53 井伏鱒二「厄除け詩集」講談社文芸文庫 )


はい。こちらは、酒飲みの歌ですね。禁酒の人には辛い。

    
コメント
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