古本で、森浩一著「食った記録」(sure・2005年)を手にしました。
「喜寿記念特別出版」とあります。
あれれ、ここにも、司馬遼太郎・須田剋太画伯がおりました。(p28∼30)
「四川省のあと雲南省に滞在し、昆明から上海へ飛んだ。
1981年のこの回の旅は、最初に江南の各地を見てまわったので、
旨いといってもぼつぼつ中国料理に飽きかけていた。
それに機内では暇だったので、ぼくが
『今、ものすごく食べたい日本食はなんですか。一点ずつ記入してください』
のメモをまわした(口絵参照)。
すると一番に司馬さんは青いボールペンで『タケノコ飯』と書かれた。
・・・・因みに、ぼくはこの時、『おでん』と書いた。
同行の須田剋太画伯は『まんじゅう』。
須田さんは服のポケットにエンピツやケシゴムとともに
無造作に饅頭がほおりこまれているのに驚いたことがある。
司馬さんはタケノコ飯がすごく好きだった。・・・・
司馬さんは偏食とはいえ、このように好きなものをはっきり主張される。
そのことが清張さんと違っていた。
『街道をゆく』の『中国・蜀と雲南のみち』で、
竹内叔雄の『竹の本』のなかの焼筍の作り方を引用している。
そのあと『こういうものは現実に食べるのはおろか、読んで想像するほうがいい。
想像するだけであふれるような味覚を感じてしまう』。と述べておられる。
人間の胃袋には限りがある。
ぼくには不可能なことだが、想像で食べて満足する。・・・
ぼくは2001年の暮れに急に入院する破目となり、
それから医学的には『病人』扱いである。
強がっていても、意図的に食物の量をへらしたり・・・
でも今もっとも食べたいもの(気分だけであっても)はある。・・・」
はい。こうして食にまつわる、ご自身のさまざまな本からの抜粋で
なりたっている一冊なのでした。本文イラストも森浩一。
ちなみに、私はこの引用した箇所だけでもう満腹(笑)。
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