Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

25年前(11)

2022年12月17日 06時30分11秒 | Weblog
新国立劇場の演劇『夜明けの寄り鯨』稽古場&演出家コメント映像
 ヤマモトマサヒロ「地図あったら安心じゃない?・・・自分の居場所、作れるから」(0:35付近)

 自殺の実行リスクを高める要素①は、「所属感の減弱」、つまり「この世における自分の居場所を見失う感覚」だった。
 ヤマモトは、「地図」で「自分の居場所」を作り、心療内科に通いながら、何とか生きているのだった。
 私は、劇中のヤマモトマサヒロ(というか作者の横山氏)は、自殺予防のための一つのアイデアを提示しているように思う。
 それは、「自分の居場所」(地図)を自分でつくるということである。
 この劇を観てつくづく感じたのは、25年前の日本社会はやはり全般的に不健全だったということであり、その代表的な例が、横山氏も指摘した「誰かを揶揄して笑いを取る」言動である。
 この種の言動の要因を分析するのは難しいが、私見では、「強すぎる承認欲求がマウント行動としてあらわれたもの」と理解するのがよいと思う。
 どういうことかというと、25年前にテレビで揶揄されていた対象は性的少数者や障がい者などであったが、こうした人たちを「笑う」ということのもつ意味は、「『自分は彼ら/彼女らより優位にある』ということを、帰属集団の内部で相互に承認することによって、対象たる人間の居場所を奪うと同時に、自分たちの居場所を確保する」というところにあるのではないかと考えられるのである。
(未開社会における贈与やその極限形態であるポトラッチの主たる目的も、「相手集団より優位に立つこと」であった。)
 これは、他人の価値を落として自分の価値を高めようとする思考(「引き下げの心理」)に基づくものでであり、マウント思考・行動の一種とされている。

他人にマウントをとる人のあまりに情けない心理 他人の価値を落として自分の価値は上がるか
 「マウントを取る人というのは承認欲求が強い人です。承認欲求というのは「周りからすごいと思われたい、認められたい」という欲求です。そして、承認欲求が人一倍強いのに、その裏では自信がなくて不安でたまらない。自尊心を保てなかったり、努力して自分の価値を上げることができなかったりします。
 「一方、人間なら誰でも「自分には価値がある」と思いたいものです。だからマウントを取って「お前より俺のほうが勝っている」と思えれば自分のプライドが守られます。
 こうやって他人の価値を落として相対的に自分のほうが優位に立とうとすることを「引き下げの心理」といいます。


 強すぎる承認欲求のためにマウント行動に走ってしまうのは、個としての自我が確立していないことの裏返しであり、帰属集団への過剰な依存にほかならない。
 こういう風に考えてくると、またしても同じところにたどり着いたという感を抱く。
 つまり、結論として、やはり「réciprocité(レシプロシテ)からの解放」(丸山先生の錯覚?)(言い換えれば「自由」)が必要ということになるだろう。
 もっとも、25年かけて経済的な「没落現象」を経験した(したがって「没落現象回避型自殺」は減少したと思われる)一方で、マウント思考・行動を潜在化・不可視化・制度化したかの如き「新階級社会」が出来上がってしまった現在の日本社会において、「自分の居場所」(地図)を自分でつくることは、依然として容易なことではないのである。
 ・・・さて、今から25年後、日本社会はどうなっているだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする