Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

未完成の理由

2023年01月28日 06時30分53秒 | Weblog
東京フィルハーモニー交響楽団 2023シーズン定期演奏会(1月) シューベルト 交響曲第7番
 「第2楽章の第1主題は、調も節まわしも、『冬の旅』で束の間の陽光を放つ「菩提樹」の囁きかけと同じだ。まもなく孤独なさすらいが回帰するも、光の主題がこれを包み込んで終わる。つまりこの楽章は、“光による歌の回復”を描いている。
 「永遠なる至福の世界が、一挙に、まるで瞬間のうちに押しよせてくるのを僕は感じた……」。自筆メルヒェン(1822年7月3日)のラストは、第2楽章を言葉にしたものだろう。文学と音楽、歌曲と器楽のあいだで心情をまっすぐに吐露した人―それがシューベルトという作曲家である。
」(p4)

 シューベルトの交響曲第7番「未完成」が第2楽章までで終わっている理由については諸説紛紛としているわけだが、私見では、第2楽章に「菩提樹」のモチーフが取り入れられている点が大きなヒントであるように思う。
 ということで、「菩提樹」の解釈が必要となる。

ドイツ・リート名詩百選
 "Komm her zu mir, Geselle, Hier findst du deine Ruh’!"(「ここへおいで、若者よ、ここにお前の憩いがある」と)
 「deine Ruh’ 「おまえのいこいを」ここでは死を意味している。」
(p142~143、p225)

 この詩については、トーマス・マンが「魔の山」の中で分かりやすく解説してくれているが、第4連の"Ruh"(憩い)が「死」を意味している点が重要である。
 つまり、シューベルトは、本来終楽章で使うべきこのモチーフを第2楽章で使ってしまったために、先を続けられなくなったと考えることが出来るのだ。
 強引に続けようとすれば、「復活」のモチーフを捻出するくらいしかないだろうが、それは難しいだろう。
 こういう風に、ドイツ・リートの解釈は結構面白い。
 例えば、続く第5連の「帽子」の意味もそうだ。

 ”Die kalten Winde bliesen Mir grad’ in’s Angesicht, Der Hut flog mir vom Kopfe, Ich wendete mich nicht.”
 つめたい風が 私の顔にまっすぐに吹いてきて 帽子が頭から飛び去った でも私は振り向かなかった


 「帽子」は、冷たい風(生きていくうえで経験するさまざまな困難や逃れがたい運命)から私を守るものであるが、やがて風が私から奪っていくものである。
 なので、「帽子」は、私を庇護してくれるが、やがて失われる運命にある人物、つまり「両親」と解釈できるのだ。 
コメント
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