Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

ベルイマン流トラウマ対処法(7)

2021年09月14日 06時30分00秒 | Weblog
(引き続きネタバレにご注意)

 (新たに登場した)サラと二人の男友達(神学生と医学生)は、(かつての婚約者であった)サラとイサク&ジ-グフリドの似姿だろう(サラの女優は一人二役のようである。)。
 三人は実に楽しそうで、幸福だったイサクたちの青年時代を象徴しているかのようだ(ちなみに、神学生と医学生は、神の存在に関する議論を戦わせており、さりげなく「神の沈黙」のテーマが現れている。)。
 次に道中で出会うのは、口論ばかりする夫婦:アルマンとベーリットである。
 これはイサクと亡き妻の似姿と思われるが、この二人が加わって、イサクの車(ロールスロイス)の中はなんと7人になってしまう。
 アルマンとベーリットは車中でも口論を続け、怒りの余りベーリットはアルマンをひっぱたく。
 なおも喧嘩が続き、耐えられなくなったマリアンは、「降りて下さい」と言って二人を車から追い出してしまう。
 次に向かったのはイサクの母(95歳)の家。
 母はさんざん親族の悪口を言った後で、「(50歳をむかえる初孫に)パパの金時計を贈りたいの。針が取れたけど、いいかしら?」と針のない古い懐中時計をイサクとマリアンに見せる(「針のない時計」!の再登場。このあたりは、小津監督の東京物語(1953年)のラストシーン(但し、懐中時計の意味はまるで正反対)にヒントを得たのかもしれないし、キューブリック監督のシャイニング(1980年)などに活かされているのかもしれない。ちなみにこの場面で私は心の中で拍手喝采。やはり映画マニアは治らないようだ。)。
 このシーンは、イサクが、過去のトラウマからも、迫りくる死からも、どうやっても逃れられないことを暗示しているかのようだ。
 車に戻ると、イサクは再び眠りに落ち、今度はやや長い悪夢を見る。
 人との付き合いを断って「生涯がむしゃらに働いた」とイサクは自負するものの、これはトラウマから逃れるための「仕事への逃避」だったのかもしれない(冷静に観察していると、こんな風に自分自身の人生から仕事へと逃避してしまう人間が、この世の中には少なからず存在することに誰もが気付くだろう。)。
 ところが、案の定と言うべきか、夢の中ではこうした医師・医学者としてのプライドまでもが否定されてしまう。
 夢の中に現れたアルマンは医師免許の更新試験(?)の試験官で、「医師としての第一義務」(許しを請うこと)を答えられないイサクに対し、「あなたは有罪です。・・・ごく普通の罰です」と述べて、「孤独」という罰を宣告する。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ベルイマン流トラウマ対処法... | トップ | ベルイマン流トラウマ対処法... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事