地方自治体の条例、これは一体誰がつくるのだろうと考えてみた
条例として認められるには議会の承認が必要だが
議会は議決だけなので、つくった当事者とは言えない
その議案(条例)の上提者が作った人と考えるのが自然かもしれない
議案の上程者、行政のトップである首長には新しい条例を作成した
という名誉の称号が与えられる可能性がある
しかし現実的には首長は「これこれの条例を作るように」
と指示するだけで、現実的には行政のスタッフがそれに沿って
具体的な作業を行うことになる
これは「奈良の大仏を誰がつくったのか?」の問を連想する
「聖武天皇」と答えると、「ブー、大工さんたち」とやり返すように
現実的な作業は、現場で行われる
少し前、ある条例を作るための一連の工程を経験した
それは、よくあるようにまずは現状分析から始まる
最初のステップをとして、行政からの依頼で市民の集まりが結成され
「作業部会」なる組織が作られた
その「作業部会は」市長の諮問機関である「市民自治会議」の
そのまた下請け的な位置づけで、そこでは一般市民の感じる
現状把握、共通認識、問題点などの意見交換がなされた
一般市民の集まりはどうしても話が四方八方に拡散しがちになる
それを防ぐために実質的な会議の進行者である行政はレジュメ作成し
それに沿って会議を行うようリードする
この方法は必然的に無駄な話はなくなる、、という良い面はあるのだが
「そもそもこの条例は作る必要があるのか?」
というスタート時点に立ち返った議論はなされない
市民自治会議から委託された議論は、「ありやなしや」ではなく
どのようにしたら良い条例ができるか、、に終始するように
会議はコントロールされる
ところで、この行政から依頼され市民というのが、出席一回に付き
いくらかの「報酬」が支払われる(これは条例で決まっている)
ただ「会議自体の方向性が予め決まってみえること」
「報酬をもらうことで自由な意見が言えなくなる」
ことに関して個人的には若干の不満を覚えたので、
報酬の支払いを辞退し、好き勝手なことを言わしてもらう、、
を条件に作業部会の出席を続けた
作業部会は行政の望んだようには進まなかったのかもしれない
この会の委員長がとても優秀な人で、拡散しそうな意見も適度に取り上げ
それぞれ好き勝手な発言を許し、それでいて本筋から外れないよう
コントロールされた会議が続いた
初対面で遠慮気味に構えていたメンバーもそのうちに和気あいあいと
自らの経験による考えを披露することになった
会議は本筋から離れないとはいうものの、行政の望んだように進まなかった
というのは、条例の前提となる「市民間のレベルアップを如何に進めていくのか」
との深刻な問題が、条例作成のための議論の時間よりも長くなったのだ
この「市民間のレベルアップ」については、作業部会は依頼主の市民自治会議に
提出した書類にさらなる検討事項として書き込まれた
しかし、、、、
舞台は今度は市民自治会議に移った
市民自治会議は作業部会の討論(議事録)を踏まえ、次の討論をすることになっているのだが
現実は作業部会で討論・問題視されたことを再び話し合うようなことになり
議論が進んだという実感はない(傍聴してる限りは)
時間が残り少なくなると、条例化の具体的な内容に入っていった
実際のところ、素人は条例文など作成できない
そんなことに慣れていないこともあるが、
一つの文章が他の法律・条例に矛盾していないかをチェックしなければならない
そんなことができるのは、法務に通じた行政しかない
結局のところ条例文は、法務の知恵を借りた担当部署の行政が作成することになった
その出来上がりの文章は、作業部会・市民自治会議の内容をどのように反映しているか
については、かなり不漫が残るもののように思えた
条例文にあまりにもあれこれ書き込むと却って矛盾点が多くなってしまうので
抽象的な一般論的な表現にとどまることになるらしいが
それならば、あの長い時間を費やした会議等はどのような意味があったのか
と考えてしまう
つまるところ、最終段階としての議決が、目前にある条例文だけを読んで
「是か非か」を判断するのが議員の役割だとしたら
その行為は何か違っているような気がしてならない
大体において条例文は、まずいことが書かれていることはなく
ケチのつけようがない可能性がある
だからこそ問われるのは、その条例の生まれる必然性とか存在価値となるのだが
それは初期の会議で話されたこと
その会議の情報を見ずして、目前のケチのつけようにないと思える条例文に
「是か非か」の判断をするのは、どうしてもステップを踏んだだけ
と思えて仕方ない
果たして今回の定例会で議会はどのような判断を下すのか
(条例の作成過程を見たものとしての備忘録としてアップした)