何年か経過した後、何を覚えているか、、その時感じたことがそのまま記憶に残っているか、、
年齢のせいもあって、なかなか自信のない事柄だが、とりあえずせっかくお金と時間をかけて
東京まで出かけたのだから、忘れないうちに備忘録として残すことにしよう
一冊の本を読んで2.3箇所覚えていれば、それで良しとの話があるが、この考え方はとても安心できる
昨日一昨日の出来事も、結局は2.3の記憶しか残らないかもしれないかもしれない
でも、それはそれで仕方ない
一昨日、昨日とラ・フォル・ジュルネ2018に出かけた
幾つかの会場に分かれていたが自分が出かけたのは東京国際フォーラムで行われた方
一昨日の3日は4公演、昨日の4日は2公演(ちょっとした手違いで1公演は聴けなくなってしまった)
約一時間以内の演奏会で料金も抑え気味のこの催し、ネットで予約して気になるプログラムを選んだ
選ぶのは演奏される曲、プログラム主体で演奏家の良し悪しではなかった
というより、最近は以前のようにレコード芸術のような本は読んでいないので、演奏家等の情報がほとんど頭の中にない
演奏家の情報がないので演奏の聴き比べと言うより曲そのもの、どのような思いのこもった曲なのか、、
と言った方面に関心がいく
最初に聴いたのは

ベートーヴェンの英雄(エロイカ)がメインのプログラム
この曲はラ・フォル・ジュルネの一番最初の年、テーマがベートーヴェンの時
やはり一番最初に聴いた曲だ
その時聴いて覚えている感情は「これを作曲し終わった時のベートーヴェンは嬉しかっただろうな」
という妙な思い
野心に満ちた作品を力づく、奔放な想像力で見事に作り上げた達成感はどんなものだったろうと
いかばかりのものだったのか、、と思っりした
さて今回の演奏、まず気になったのはテンポが速かった
1時間以内で2つのプログラムとなれば、それは予想されたが、想像以上に速かった
最近はこのくらいの演奏が多いのかどうかは知らない
その他で気になったことは管楽器の音が目立った
そんなに大きくない編成のせいなのかどうかはわからないが、普段よりもフルート・オーボエがよく耳に入った
それとティンパニの音 これもまるで音程楽器のようにメロディの一部のように、しかも乾いた音で大活躍
体全体で指揮する若い指揮者で、若さが要求するテンポとか音色感なんだろうか、、
でも少し残念なのは音楽よりは記憶に残っているのはこうした些細な事柄、、まだ聴く態勢ができていなかったのか
二番目は

ピアノの夜想曲をテーマとしたプログラム
夜想曲の元祖といわれるフィールドとショパンの予想曲を交互に並べたもの
この時間帯のプログラムはやばかった
合間の時間に昼ごはんとビールをネオ屋台村でお腹に入れたものだから眠くて眠くて、、
最初のフィールドを聴いてショパンを聴いて、、、
フィールドは叙情的な面もわかるが、名を残した作曲家と比べて尖る才能にかけるような普通の印象
ショパンのほうがセンスが良いというか、どこかちょっと違う感じ
でも、眠くて、、よく覚えていない(ほんと失敗、、でも良いか、こういう楽しみ方も)
三番目は、大好きなモーツァルト

一番の楽しみはK304
その第2楽章のさらっと流れていく悲しみ、、その美しさ、、これがどんな風に演奏されるか
そこは聞き逃すまい、、と思っていた
この曲は第一楽章からヴァイオリニストは気合が入っていたように感じた
細めの小柄な女性で、音色も豊かな方ではない
でも気持ちと言うか情熱というか、、どこか熱いものがヴァイオリン・ソナタはピアノとヴァイオリンとの
対話とか競争なのだとも感じる瞬間があった
ヴァイオリニストは曲に沿ってとても自然にまるで踊るように身体を動かし
場所を移動して、ピアノとの対話を繰り返す
その瞬間、、モーツァルトはいいなあ、、といつもの感覚が頭をよぎる
そして2楽章の冒頭、、モーツアルトの母がなくなった時に作曲されたということを
フト連想させる淋しい、美しい瞬間、、そこには思わずわかっていても涙が出そうな自分がいた
一日目最後は冬の旅

開演前にネオ屋台村での時間つぶしでお話した女性が、この歌手はイケメンで
女性は楽しみにしてると思う、、などと言われたものだから
始まる時は興味半分にご尊顔をちょっと注意して見てしまった
一曲目の「おやすみ」が始まるとピアノが心地よい
これこそは高校時代に音楽の時間に教師が演奏したのを思い起こさせる
宗次ホールで聴いた冬の旅は高橋悠治のピアノでとんがって違和感があったが
今回は本当に曲の流れとか歌詞、雰囲気に沿って、まるでシューマンやヴォルフの曲の
伴奏みたいに雄弁に、しかも出しゃばらず心地よかった
で歌手の方はと言えば、何よりも驚いたのは声量 声の大きさ
ドイツリート、しかも失恋のせいでの冬にさまよう男の絶望に満ちた内容というのに
この元気は馬力のある歌は、、ちょいと驚いた
この主人公の悩みは、いつか時とともに忘れられる一過性のもの、、
しかし確かに生きている若者の肉体的な苦痛を伴う悩み、、みたいなものが感じられた
短調の多い曲の中で「菩提樹」とか「春の夢」などはホッとさせる安らぎを感じさせる、
そして中間部は声の音色を変えて、、レコードのフィッシャー=ディースカウもこんな風にやってたな
とつい思い出した
でもこの「冬の旅」は伴奏のピアニストがとても気に入った
ということで、自分にとっての一日目終了
聞く耳になるのは少しばかり慣れが必要だったのかもしれない
後半は前半よりも集中できた気がする