北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

掃海艇たかしま(MSC-603)自衛艦旗授与式2月26日に実施 ひらしま型三番艇

2010-02-18 23:27:26 | 先端軍事テクノロジー

◆海上自衛隊最後の木製掃海艇となるか

 2月26日、横浜市鶴見区のユニバーサル造船京浜事業所において、掃海艇たかしま、の引渡式と自衛艦旗授与式が行われるとのことです。

Img_58361  自衛艦旗授与式は、横須賀地方総監松岡貞義海将が執り行い、防衛省からは海上幕僚監部代表として総務部長の安齋勉海将補、装備施設本部代表として副本部長の細谷正夫海将補が出席、初代艇長となる豊田和弘3佐に自衛艦旗を授与します。1100~1105に引渡式、1105~1137に自衛艦旗授与式、1200~1245に祝賀会、1305~1320に出航見送りが行われる予定です。ひらしま型の、ひらしま、やくしま、は掃海隊群第2掃海隊に所属していて佐世保を母港としていますから、ひらしま型である、たかしま、も就役後はやはり佐世保に向かうのでしょうか。

Img_7347  たかしま、は、ひらしま型掃海艇の三番艇で、今回の記事は、ひらしま型掃海艇の写真が手元に少ないので、やえやま型掃海艦や、すがしま型掃海艇の写真で代用していますが、ひらしま型掃海艇の最終艇となる予定の掃海艇です。また、同時にこれまで海上自衛隊の掃海艇は、磁気機雷に対する感応防止や触雷時の衝撃吸収という利点から、木造船体を採用してきました。日本国内には高い木造造船技術があるので、満載排水量で650㌧ある、ひらしま型掃海艇のような大きなものでも、木造で建造することが出来ました。

Img_6157_1  しかし、この掃海艇たかしま、の就役を以て木造掃海艇の建造は終了し、複合FRP構造を採用した新しい570㌧型掃海艇が整備されることとなっています。木造掃海艇は、先程列挙しましたように利点が多いのですが、木材であることから腐食するという難点があるので、艦の寿命にも限界がありました。そこで、ひらしま型3隻を最後にFRP構造に移行させることで寿命の増大を図るとともに、機関砲を20㍉から30㍉へ大口径化させて哨戒任務に充てることを計画しているようです。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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第43期一般幹部候補生卒業式と外洋練習航海の実施日程が発表

2010-02-17 23:15:35 | 北大路機関 広報

◆江田島にて2月19日実施予定

 海上自衛隊の発表では、2月19日、広島県江田島市の海上自衛隊幹部候補生学校において第43期一般幹部候補生114名が卒業式を迎え、外洋練習航海に出発するとのことです。

Img_1134_2  卒業式は1040~1135時に行われ、赤煉瓦の幹部候補生学校から候補生、教官が見送る卒業式見送りが1320~1350時に行われるとのことです。これに続く外洋練習航海は、2月19日に江田島を出航、大韓民国平沢、フィリピン共和国マニラに寄港し、3月20日に帰港するとのことです。

Img_5778_1  外洋練習航海には、第11護衛隊司令の伊藤誠1佐が指揮を執り、護衛艦しらゆき、みねゆき、せとゆき、が参加します。しらゆき、みねゆき、は満載排水量4000㌧、せとゆき、は満水排水量4200㌧の護衛艦で、三隻は対空対潜対水上の各種装備とヘリコプターを搭載するガスタービン推進艦として12隻が建造された、はつゆき型護衛艦です。

Img_7216  海上自衛隊の任務は年々世界規模で拡大し、その責務に応えるべく、新鋭艦による近代化を進めていますが、海軍機構にあって最も重要なものは、人材であり、困難に打ち勝ち、遠い洋上において限界に打ち勝つことのできる乗員によって艦船や航空機の能力が最大限に発揮できるわけです。その資質を伸ばすために卒業式とともに外洋練習航海に出航するとのことです。

HARUNA

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P-1哨戒機四機を厚木航空基地へ配備 2011年度末にも実現

2010-02-16 23:54:29 | 先端軍事テクノロジー

◆P-1哨戒機部隊配備へ

 海上自衛隊は、川崎重工を中心として日本中の防衛産業が結集して開発中の新哨戒機P-1について、その実用化と部隊運用を行うに当たって飛行試験を実施してきましたが、その結果が良好であったことから、いよいよP-1哨戒機の部隊配備が開始されるとのことです。

Img_7945  P-1はP-X,XP-1としてC-X,現在のXC-2とともに並行して開発が進められてきた航空機で、輸送機と哨戒機を同時開発することで設計費用の低減を図り、所要の性能を損なわない範囲内での可能な限りの部品共通化を図り、量産効果を高めるべく開発されたもので、世界で広く使われている冷戦時代に導入された哨戒機を置き換える新型哨戒機、そして30㌧台の装備品を比較的高速度で長距離を輸送することが可能な新型輸送機と、果たして全く運用性能が異なる機体を同時開発出来るかも含め、世界注目の新型機です。

Img_7941  神奈川新聞からの記事の引用です。厚木の海自後継哨戒機にP1を4機配備へ、ジェットエンジン搭載で「騒音激化」と地元反発/神奈川 ・・・防衛省は15日、海上自衛隊P3C哨戒機の後継として開発中の次期固定翼哨戒機(P1)4機を2011年度末から、全国で初めて海上自衛隊厚木基地(大和、綾瀬市)に配備する計画を明らかにした。併せて基地内に関連施設を整備する。同省南関東防衛局が同日、両市に通知した。プロペラ機のP3Cとは異なり、P1はジェットエンジン4基を搭載している。国がジェット機の使用制限を定めた「46文書」の扱いが、今後の課題となりそうだ。

Img_9638  配備計画の通知を受けた両市は騒音被害が増大することなどを懸念し、反発している。防衛省によると、配備されるのは性能評価のために08年9月から同基地に順次乗り入れている試作機2機と、新たに取得する4機(703億円=08年度予算契約ベース)のうちの2機。12年度には残りの2機も同基地に追加配備するという。また、搭乗員のシミュレーション施設として、滑走路東側の空き地部分に2階建ての「訓練講堂」も整備。10年度予算案に5億6千万円を盛り込んだ。ジェット機のP1をめぐっては、地元から「騒音の激化につながる」との声もあるが、防衛省はこれまで「騒音はP3Cと同等か静か」と説明していた。

Img_9654  通知を受けた大和市の大木哲市長は「受け入れられない。46文書との関係も含め、地元に十分な説明と対応を求めたい」とコメント。綾瀬市の笠間城治郎市長も「超過密地の基地は移転すべきだ」とし、市が掲げる「基地機能の整理縮小」が遠のくことを危惧(きぐ)した。P3Cは潜水艦や不審船の監視などを任務とする海自の主力機。全国に約95機が配備され、厚木には約20機が常駐している。耐用年数がすぎていることなどから、防衛省は国産のP1への切り替えを決めている。]2010/02/16 09:00 【神奈川新聞】引用は以上です。http://www.47news.jp/localnews/kanagawa/2010/02/post_20100216104936.html

Img_9614  今回配備される機体は、試作機とともに配備されるということで、航空集団隷下の航空隊に配備されるのではなく、第51航空隊において性能調査を行うか、教育訓練用、という印象が強いです。しかし、評価試験の目的で既に厚木航空基地において試作機二機が配属されているのですから、正しくは第一線配備に向け第51航空隊で部隊運用を行う、という意味のようですね。第51航空隊は試験評価部隊なのですが、第51航空隊での運用が終了したのちにP-3C哨戒機を運用する航空群の後継に配備が始まると考えられるのですが、この場合、まず要員を養成するために航空教育集団司令部が置かれている下総航空基地に厚木航空基地に続いて配備されるとかんがえるべきでしょうか。

Img_8224  P-1哨戒機は四発のジェット機であることから、これまで運用されていたP-3C哨戒機よりも騒音が大きいのでは、という危惧は繰り返し為されていたのですが、岐阜基地で幾度か発着を文字通り真下から見上げたという個人的経験から、騒音はP-3Cよりも小さいです。防衛省が発表した騒音数値でも小さいというデータが示されていますが、いわゆる耳障りな低周波音や空気微振動のような騒音もありませんでした。なにぶんジェット機の方がプロペラの航空機よりも大きい音が、という発想も、もともとP-3Cの原型機が非常に古い事を考えれば、騒音の低減が実現した、ということにも納得がいきます。

Img_0018  P-1哨戒機は、総重量79.7㌧、全長38.0㍍、全幅35.4㍍、ターボファンエンジン四基により21.6㌧の推力を発し速度は450ノットに達します。飛行高度や速度はP-3Cよりも大きくなっていますので、より高い高度から各種電子機器を用いて広範囲の潜水艦や水上目標を索敵警戒することが出来ますし、進出速度が速いという事は、現場海域までの展開に要する時間も短縮することが出来ます。P-1哨戒機はこの通り高性能な機体で、任務達成能力も向上します。また、P-3Cは素晴らしい航空機と言う事ですが、旧式化が進めば事故のリスクも増大するのですし、P-1哨戒機の迅速な装備化が期待されるということができるでしょう。

HARUNA

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インド洋海上祖吸行動給油支援派遣の海自連絡官がバーレーンから帰国

2010-02-15 23:22:21 | 国際・政治

◆対テロ情報の連環から離脱する日本

 テロ対策特別措置法の失効にともない、1月15日に終了したインド洋海上阻止行動給油支援ですが、先日補給艦ましゅう、とともに東京港晴海埠頭で帰国行事が行われましたことは周知の通り。そして連絡官として派遣されていた自衛官が25日に帰国したとのことです。

Img_5904  やや情報としては古いですが、本日はこのお話をもう少し考えてみましょう。これは11日付朝雲新聞に掲載されていたとのことで、本文を朝雲新聞HPから引用します。補給支援活動終了で連絡官が帰国:海自のインド洋補給支援活動のため中東・バーレーンに派遣されていた連絡官の尾崎拓彦2佐(48)が任務を終え、同25日に帰国した。尾崎2佐はバーレーンで米軍などとの連絡調整業務に当たっていたが、補給支援特措法が15日で失効、インド洋に派遣されていた海自部隊が撤収したことを受け、帰国したhttp://www.asagumo-news.com/news.html

Img_9870  こうして、完全に日本はテロとの戦いから離脱したのだなあ、と感じるとともに、この離脱ということは、テロ関係のアメリカやテロとの戦いに参加する当事国から、テロの動向に関する一次情報、つまりナマの情報が入りにくくなるのだなあ、ということも感じました。こうしたテロ関係の情報はバーターで入るものですし、もちろん、インターポールを通じての情報もはいるのですけれども、本来はこうしたルートで入らないような一次情報が、司令部に日本が自衛官を派遣していることで得られる、というものもあったわけですから、情報のつながりという連関から外れてしまうのは、少なくない不安がありますね。

Img_5270  テロとの戦いから日本は離脱したのだから、もう日本がアルカイーダのようなテロ組織から狙われたりすることはないのでは?、テロとの戦いで主導権を握っているアメリカとの関係から、日本国内の米軍基地だけを厳重に警備しておけば大丈夫でしょう!、と思いたいところですけれども、日本とアメリカは軍事面以外でも結びつきは強いですし、日本国内には多くのアメリカ人やアメリカの企業が活動していて、この関係の、つまり日本全国が全般的に狙われる可能性を抱えているのですよね。しかも、アルカイーダの掲げる目的、ムハンマド師の時代を理想とするイスラム原理主義の価値観と、八百万の神々とともに倫理感に依拠して自由と繁栄を謳歌する日本の価値観は一致しないわけですから、万全の安全ということはいえないわけで、テロ対策関連の情報は非常に重要なわけです。それに、日本人は世界中で活躍していますから、テロに巻き込まれないようにするという目的からも情報は重要です。

Img_5989  テロとの戦いに、インド洋に補給艦と護衛艦を派遣して海上阻止行動の給油支援を行う、というかたちで参加していたのが、民主党にとっては野党時代から問題だ、としていたわけですし、これにかわって今度はアフガニスタンに陸上自衛隊を派遣する、とか、テロとの戦いに民間人を指揮下に組み込む形での協同という参加の形を模索していた民主党ですが、いざ、政権に就いてみると、本当に派遣すれば高い確率で犠牲者が出るというアフガニスタン、そんな場所に派遣して犠牲者が出れば時の与党が責任をかぶる形になるので、与党になった民主党は一転して慎重になったわけです。こうして、テロ対策特別措置法が執行するまでの期間、代わりにアフガニスタンに派遣するという計画は水泡に帰して、いっそのこと治安状況が落ち着いてきたイラクにもう一回復興人道支援で自衛隊か民間人を派遣する、という議論もなく、補給支援は終了、代案なしで今回の連絡官帰国、ということになったわけです。

Img_3678  海賊対策やハイチPKO,それに最長期間のPKOとなってるゴラン高原派遣という任務はあるのですけれども、どれもテロとの戦いではなく、海賊対策任務に派遣していることでソマリア沖での海賊に関する情報は入ってくるのですけれども、テロ関連は別の指揮系統なので入ってきませんし、ハイチPKOでもハイチや中南米での情勢は判るのでしょうけれども、テロ関係の情報は入ってきません。日本には、テロは友愛精神で起きないという漠とした自信があるのか、現在の民主党鳩山政権の意図は分からないのですけれども、リスクは増えている、ということがいえるのではないでしょうか。もう一度、海上自衛隊の方々には大変なのは判るのですけれども、補給艦を、対テロ海上阻止行動給油支援で護衛艦とともにインド洋に派遣する、という選択肢は、政府部内で検討されてもいいのではないでしょうか。

HARUNA

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ハイチ緊急人道支援任務終了2675名を治療、ハイチ地震救援はPKOへ転換

2010-02-14 23:43:37 | 国際・政治

◆テロとの戦いに代えての政府迷走か、ハイチPKO

 防衛省によれば陸上自衛隊によるハイチでの国際緊急人道支援任務が終了したとのことです。

Img_0279_1  国際緊急人道支援任務は輸送支援、医療支援という二つの任務が行われていたのですが、この中で医療支援が終了し、隊員は帰国の途につくようです。国際人道支援任務は終了するのですが、一方でPKO任務というかたちで国連ハイチ安定化任務へ陸上自衛隊が参加することとなっていて、先遣隊が現地入り、アントノフAn-225輸送機で最初の車両が派遣されまして、PKO任務に不可欠な宿営地建設の準備が進められています。

Img_3831  ハイチ大地震、緊急援助隊の活動終了へ 防衛省 ・・・ 防衛省は12日午前、ハイチ大地震を受けて現地で医療支援にあたっていた国際緊急援助隊の活動を終了すると発表した。派遣していた160人のうち130人が18日に帰国する予定で、残りは米・マイアミで物資輸送などの任務に引き続きあたる。国際緊急援助隊は1月23日からハイチのレオガン市内で活動を開始し、これまでに延べ2675人を診療していた。(12:30) http://<wbr></wbr>www.nik<wbr></wbr>kei.co.<wbr></wbr>jp/news<wbr></wbr>/seiji/<wbr></wbr>2010021<wbr></wbr>2ATFS12<wbr></wbr>00E1202<wbr></wbr>2010.ht<wbr></wbr>ml

Img_9076  PKOの派遣期間は六ヶ月、本隊はまだ現地に到着していませんから、先遣隊の派遣と併せて八ヶ月間、ハイチでの任務がはじまったわけです。日本国内では、政府部内を含め、一種の災害派遣のように受け取られているようですが、安定化任務ということで、報道された映像に、宿営地建設のために空輸された車両には、軽装甲機動車も含まれていました。

Img_1240  日本国内では、三重県の火災事故への災害派遣の際に軽装甲機動車が派遣されたことはあるのですけれども、今回派遣された軽装甲機動車は、イラク派遣時のような防盾を装備した車両でした。災害派遣で装甲車が派遣される、ということも希有な事例ですから、本質的に災害派遣ではないのだ、という認識は必要でしょうね。

Img_2228  自衛隊は、悲しいことですが日本国土が何度も噴火、地震、津波、台風というもの凄い災害に見舞われています。その都度災害派遣要請に応じて出動していますから、災害派遣では豊富な経験があるのです。けれども、物資や物量、人員の規模では決して恵まれているとはいえません。

Img_4842  近年では、人数でこそ、ドイツ連邦軍やイギリス陸軍よりも規模は大きくなっているのですけれども専守防衛という国内政策の関係から、外国で長期間活動できるような後方支援能力などでは限界があります。国土で、陣地を構築して、上陸する敵を、海岸や山岳部、都市部や隘路で撃滅するのが任務ですからね。

Img_2221  その点、PKOで何ヶ月も離れた場所で活動するよりは、初動に必要な救助装備品が詰め込まれた人命救助システムとともに、被災地にいち早く駆けつけて、一ヶ月程度で後続の各国に任せ、撤収する、というのが理想であった訳なのですけれども、ね。今回は理想とする任務のありかたの逆をおこなってしまった、ということでしょうか。

Img_1367  一方で、自衛隊を派遣するかで一時話題となったアフガニスタンでは、ヘルマンド州において米軍が今年最大規模の攻勢に出た、とのことです。昨今、米軍が”最大規模の攻勢”に出ることが多くなっていますけれども、これは来年七月に米軍の撤退!と発表したオバマ大統領の焦りの現れ、ともいえます。

Img_6178  現状のままタリバーンの武装解除とアフガニスタンの安定化ができないままに米軍を撤退させてしまえば、日本が復興支援を行う土台はもちろん、2001年から行われている米軍のアフガニスタン介入が無意味になってしまいます。タリバーンは追いつめられたようで、市民に向けての無差別テロで応戦していて、あのままでは確実にアフガニスタン国内での支持は得られないでしょうから、アフガニスタン国民の支持を得られなくなれば、それがタリバーンの敗北を意味します。

Img_5398  タリバーンのイスラム原理主義がアフガニスタンで支持された背景には、タリバーン以外の軍閥が、極めて無責任で国民に不当な圧力を掛けていたからこそ支持されていたので、どのような政治形態でもそうであるように、アフガニスタン国民の支持がなければタリバーンは復権できません。

Img_6164  しかし、オバマ大統領が来年七月に撤退、という発言を行ったことで、これは言い換えれば来年七月まで山間部にてタリバーンが粘れば、米軍が撤退する、という表現となってしまったわけです。アフガニスタンでは、現政権の汚職が問題になっていて、そこに日本の民主党のように、それ支援だ資金だと大量の投入をおこなうのだから、更にその状況は顕著になっています。かつて民主党が提案していたように、自衛隊を派遣するか、自民党政権時代のように補給艦を派遣したほうが、余程効果があると言えるでしょう。

Img_3231  この状況を打破できなければ、米軍が撤退して、もちろん欧州各国がISAFに派遣しているのですけれども、彼らがアフガニスタンの汚職などの問題を解決することができず、撤収すれば、その後は徐々にタリバーンが勢力を取り戻す機会を与えます。しかも、米軍撤退後はISAFに米軍三万の空虚を支えることは難しいでしょう。自衛隊の戦闘部隊を大規模に派遣しても不可能です、前述のように外征を考えていない編成ですからね。撤退後ならばタリバーンにとって時間はいくらでもあるのですからね。そうした状況を避けるために、今後もアフガニスタン情勢は緊迫度を増してゆくでしょう。オバマ大統領の明らかな失策です。

Img_1309  さて、鳩山政権は、今回のハイチPKO派遣で、アフガニスタン派遣やインド洋給油の代替にできないか、と考えているようです。民主党が常々派遣する派遣する、といっていたアフガニスタン派遣が、自衛隊の派遣でも非常に危険、民間人の場合は、殉死する覚悟を固めるか民間軍事会社の精鋭でも選りすぐって派遣しなくては危険の度合いが示せないほどの状況です。

Img_0002  だから代わりにPKO!、という意気込みなのでしょうが、これも普天間移設案の迷走と同じくらい的外れで、アメリカはテロとの戦いで、欧米対イスラムという構図を避けるために日本の参加を求めて、既存の秩序対反秩序、という構図を導き出していたわけです。ですからPKOに派遣しても、国連にアピールすることはできても、アメリカにアピールすることはできないでしょう。問題ばかりが山積している状況ではありますが、他方、政治の失策により遅ればせながら派遣された緊急人道支援任務自衛隊派遣ではありますが、多くの方の治療を行い、無事任務を完遂できたことは、厳しい中でのせめてもの朗報といっていいのでしょうか。

HARUNA

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平成二十一年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報 2

2010-02-13 15:17:59 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 Weblog北大路機関ですが、最近、北王子機関という名前で入られる方が多いようです。北王子ではなく、北大路、お間違えの無いように。

Img_6147_1  さて、二月と言う事で油断していたのですが、九州の方で艦艇一般公開が行われていました。一つは木曜日と金曜日と言う事で過ぎてしまったのですが佐世保基地と呉基地から掃海艇が、志布志、屋久島、種子島に一般公開の為に巡回を行っています。掃海艇の艦名は島々の名前が充てられるのですが、なんと今日と明日に行われる屋久島での一般公開では、掃海艇やくしま、が、ひらしま、とともに一般公開されます。

Img_0341  掃海艇というのは、読んで名の通り、海中に敷設された機雷を、掃海器具で除去する艦船です。機雷というのは、機雷敷設艦で敷設するほか、潜水艦でこっそり運んだり、航空機で投下したりして危険物をばら撒くことが出来て、しかも、自動車運搬船でスエズ運河に敷設するというテロ事件も過去に起こっています、仕掛ける側には危険は少なく、仕掛けられた側には大きな危険が及ぶ脅威です。

Img_1609  その脅威に対処するのが掃海艇ですから、前甲板には機雷を射撃して処分する機関砲、そして艦橋には多くの機材が並び、後部甲板には機雷掃海のための様々な装備品が配置されています。船に触れて爆発、船の音に反応して爆発、船の磁気に感応して爆発、船に向かって進み爆発、機雷にもいろいろありますから、いろいろな機雷に対処するために様々な処分器具が装備されています。艦内も食堂などが一般公開され、艇長室が公開されることもあります。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

  1. 2月13日・14日:掃海艇ひらしま・やくしま一般公開(屋久島安房港)・・・http://www.mod.go.jp/pco/kagoshima/index.html
  2. 2月17日・18日:掃海艇みやじま一般公開(種子島西之表港)・・・http://www.mod.go.jp/pco/kagoshima/index.html

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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普天間移設問題 移転先の案に北マリアナ諸島テニアンを追加

2010-02-12 23:14:14 | 国際・政治

◆アメリカ国務省・国防総省不在のアメリカ移転論議

 普天間飛行場移設先に、グアムに移転することが無理ならば、隣のサイパン島やテニアン島に移転すればいいのではないか、こうした超論理が出てしまいました。もちろん、北朝鮮や中国本土、月面に移転する案よりはまだ現実的なのかもしれませんが、非現実的に限りなく近い案、ということができるでしょう。

Img_1_769  普天間:米自治領テニアン市長 受け入れに前向き姿勢表明 :米自治領・北マリアナ諸島のテニアン島 米自治領・北マリアナ諸島テニアンのデラクルス市長は10日、共同通信の電話取材に対し、在日米軍再編に伴いテニアンに米軍部隊を受け入れたいとの意向を示した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)についても「移設先になりうる」とし、受け入れに前向きな姿勢を表明した。  日本政府の沖縄基地問題検討委員会は10日、在沖縄海兵隊が移転を予定している米領グアムを視察。一部議員はテニアンに立ち寄り、北マリアナ諸島のフィティアル知事とも会合。米軍受け入れに積極的なテニアンが、普天間の移設先候補になるか、検討するとみられる。  テニアンは観光地サイパンの南5キロにある島で、現行の再編計画では海兵隊の訓練地となる。デラクルス市長は取材に「島の土地を米軍に貸しているが、有効利用されていない。受け入れ能力は十分にある」と説明。軍部隊や施設がテニアンに移転すれば、経済効果を期待できると語った。  米軍側にも受け入れの意向を既に伝えたという。テニアンは太平洋戦争で激戦地となり、米軍による占領後は広島と長崎に原爆を投下した爆撃機が出撃した。(共同) http://<wbr></wbr>mainich<wbr></wbr>i.jp/se<wbr></wbr>lect/wo<wbr></wbr>rld/new<wbr></wbr>s/20100<wbr></wbr>210k000<wbr></wbr>0e01008<wbr></wbr>1000c.h<wbr></wbr>tml

Img_0190  まず、この移転案が誰により出されたのか、ということは興味深いことなのですが、共同通信が一方的に打診しているだけなのか、政府部内にもこうした意見があるのか、という問題があります。さて、グアムに移転できない大きな二つの理由、海兵隊の陸上戦闘部隊や揚陸艦の母港である長崎県の佐世保基地から距離がありすぎる、という”距離”の一点、そして、グアム島自体が人口18万という小さな島であるから、これ以上海兵隊を物理的に収容することはできない、という”容積”の一点。この二つの問題を解決できないことからグアム島への移転は非現実的だ、という結論に至ったということです。

Img_2536  少なくとも新しい移転案は、”容積”の面では、受け入れることができる余地はあるのですが、”距離”の面では移転となる当事者、アメリカ合衆国海兵隊として、受け入れる余地が無いわけです。沖縄の海兵隊は、台湾危機という状況に際して台湾近海に揚陸艦とともに展開して危機が台湾有事へ発展することを未然に防ぐ、という任務があります。朝鮮半島有事でも危機が予見できる状況ならば日本海や黄海に展開して危機が有事になることを防ぐ任務がありますし、東南アジア地域で国境線を武力で引き直そうという危機に対処する目的があります。この為の譲れない条件が”距離”であるわけです。

Img_8312  しかし、今回、見ていて笑えないのは、相手の自治体の合意を国家間の合意とはき違えている点でしょうか。これも、共同通信が一方的に取材しただけなのですから、大した意義は無いのだろうということもできるのですけれども、自治領にたいして受け入れ能力があるのか、と聞いた上で受け入れ能力があり、経済的な恩恵を期待したい、という答えを導き出して、これだ!、と意気込むのには少し無理があるでしょう。つまり、外交を担うアメリカ国務省や実際に移転を受ける合衆国海兵隊をいっさい交えずに出した結論なのですよね。外交というものは、国家間の合意と履行で行われる国際関係なのですから、国家と他国の自治体との間での合意は認められるものではないのです。たとえば90年代にロシア沿海州の議決で日本との北方領土問題を前進させよう!、という議決があったのですが、これは自治体の決議であり、モスクワの議会決議では無かったので、当然外交関係に反映はされることがありませんでした、これと同じことです。

Img_8541  さて、もう一つ、これは余談になるのですが、合衆国海兵隊が国際情勢の激変、例えば中国が民主化しアメリカや日本と安全保障条約を締結したり、北朝鮮が韓国と連邦国家の樹立を実現させて南北統一を果たし核兵器の放棄を行った、そしてサイパンとテニアンに海兵隊が移転することが可能になった、というあり得ない状況を想定します。恐らく、今回の移転案を提示した方々は、日本側が費用の少なくない部分を負担するという大前提を忘れているように思えるわけです、何故ならば、テニアンには航空基地建設の土地はあっても、航空基地を建設するインフラがありませんし、佐世保の揚陸艦母港機能と艦船整備機能を受け入れる余地はあっても、全く新しい基地を零から創生する必要があるわけです。厚木航空基地から岩国航空基地へ空母航空団移転のための埋め立て工事ではかなりの費用を出すことになりましたが、航空基地、海兵隊駐屯地、軍港、演習場、これだけのものを南の島に一つ丸ごと、資材を運び、建設しなくてはならないわけです。子供手満額支給当ほど大きな費用負担とはならないでしょうが、それでも莫大な費用が必要になるわけです。そして、普天間の代替基地建設に関わる諸負担は、日本政府が担うという日米合意がありますので、果たして我が国の台所事情は、そこまで潤沢だっただろうか、と発案者は一考する必要もあるのではないでしょうか。テニアンの一案は、一種の思いつきなのでしょうが、現実的な合意を求められる期限は五月です。

HARUNA

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陸上自衛隊新練習ヘリコプターにエンストロム480b決定 防衛省が発表

2010-02-11 12:42:45 | 先端軍事テクノロジー

◆MD-500Eを抑え、エンストロム480bが採用

 陸上自衛隊の新練習ヘリコプターが決定したそうですが、まず最初に訂正。昨日、XC-2が二回目の飛行試験に成功、と記載しましたが、三回目、というのが正しいようです。御指摘ありがとうございました。

Img_0521  さて、海上自衛隊が新練習ヘリコプターとしてユーロコプター社製のTH-135を導入することが決定して、昨年12月2日に東京へリポートにおいて、ユーロコプター社からステファンジヌー社長、海上自衛隊からは前舞鶴地方総監で教育航空集団司令官の方志春亀海将が並んで納入記念式典が行われました。海上自衛隊は、鹿屋航空基地で練習ヘリコプターOH-6D/DAを運用していて、この後継機としてTH-135を導入したかたちとなりました。二号機も今月中に納入される予定なのですが、陸上自衛隊の次期練習ヘリコプターも海上自衛隊と同じOH-6Dを使っていますから、TH-135か、もしくは同じではないかもしれないけれども、ユーロコプター社のヘリコプターが導入されるのでは、と考えられていました。実は、一機当たりの調達価格は、海上自衛隊の練習ヘリコプターよりも陸上自衛隊の練習ヘリコプターは安く見積もられていたのですが、無難に欧州機を導入するのではないかな、と思われていた訳です。

Img_7252_1  防衛省では、陸上自衛隊の新練習ヘリコプターの機種選定について、総合評価落札方式により進めてきたところです。本日の開札の結果、以下のとおり機種が決定しましたので、お知らせします。落札者及び機種:エアロファシリティー株式会社、エンストロム480B 、数量:1機 、落札価格:208,823,793(円)(税抜) なお、評価基準に基づき、入札価格、維持経費、基礎点及び付加点から評価値を算出の上、機種を決定しました。入札者及びそれぞれの評価値は以下のとおりです。 エアロファシリティー株式会社  エンストロム480B 23.19704063 。株式会社エアージャパン  シュワイザー333M --- 必須項目を満たさない項目があったため、評価の対象外となった。川崎重工業株式会社   MD500E ---入札価格が予定価格を超過していたため、評価の対象外となった

Img_7260_1  総合評価落札方式とは、機体本体の価格のみではなく、各種の機能、性能、維持経費等を含めて、国にとって有利な提案を行った者を落札者とする方式です。機種の決定は、評価基準に基づき、必須項目(単発タービンエンジン、騒音基準値以下等)を評価する「基礎点」(全ての項目を満足する場合は100点、満たさない場合は評価の対象外とする)及び必須項目以外の項目(最大巡航速度、運行実績等)を評価する「付加点」(10点満点)の合計値を、入札価格及び維持経費の合計金額で除して得られる評価値に基づき行いました。評価基準の作成にあたっては、企業から提出された資料等を参考にして案を作成した上で、官報により意見招請を行いました。さらに平成21年11月25日(水)に入札公告を行うとともに、12月3日(木)に入札説明会を行いました。入札説明会では、評価基準等を入札参加希望会社に配布しておりますhttp://www.mod.go.jp/j/news/2010/02/10b.html

Img_0219  以上の通り、陸上自衛隊の次期練習ヘリコプターにはエンストロム480bが決定した訳です。エンストロム、とは聞きなれない名前でしたので、ジェーン航空年鑑を引き出してみたのですが、ちょっと古いものでしたので480bは掲載されていませんでした。エンストロム社そのものは、ミシガン州に本社を置くヘリコプターメーカーで、従業員180名、1959年の創業以来1100機以上のヘリコプター製造実績のあるメーカーです。掲載されていましたエンストロムF-28はもともと米陸軍の練習ヘリコプター候補として提示された機体ですし、警察用ヘリコプターとして一定以上の需要があるようです。480bについても、エストニア国境警備隊やインドネシア国家警察、カナダ警察などで運用されている事例があるとのことで、法執行機関の間では高く評価されているとのことした。

Img_0786  機体は、防衛省HPの報道発表添付PDFに示された写真を見る限り、やや軽ヘリコプターという印象が強く表に出ていまして、心もとない印象を受けてしまうのですが、実際にOH-6Dを比較した場合、スペックは一段落ちてしまうようです。搭載しているエンジンはロールスロイスモデル250-C-20Wで出力は285馬力、重量が空虚重量で760kg。OH-6Dは搭載しているアリソン250-C-20Bが出力375馬力、空虚重量が538kgです。乗員は、最大五席ということなので、OH-6Dの四席よりも収容できるのですけれども、重い機体を馬力の少ないエンジンで飛行させるのですから、ちょっとOH-6Dよりも見劣りするかもしれません。しかし、基本練習機として考えるのであれば、許容できるものなのでしょう。

Img_0604  AH-64DやUH-60JA,CH-47JAを運用する陸上自衛隊が、こうした機体を導入した背景には、どういったものがあるのでしょうか。エンストロム480bを提示したのは、エアロファシリティーという会社です。東京都に本社があり、HPには、“米国メーカーで作った特殊装備品を国内のヘリコプターに装備します。米国の機体改修会社、装備品メーカーと業務提携をし、米国連邦航空局(FAA)や国土交通省航空局(JCAB)と何度も協議を重ね、オリジナルのフローチャートを完成しました。当社が仲介することにより、これまではあきらめていた「スマートな装備品を安価にて米国で製造してもらうこと」が実現しました。欲しい装備品を米国で作らせ、確実に日本の空を飛ばす。(http://www.aero.co.jp/kaisya/kaisya.html)”と書かれています。

Img_0778  今回は、川崎重工はMD-500、これはOH-6Dの事なのですが、提示していたものの、防衛省の要求金額に収まらなかった、という事により選外となっています。最も無難なのはMD-500なのでしょうが、この機体ですら高かった、という理由がつけられている以上、コストだけでは決まらないとしている総合評価方式でも、低コストの取得性が重視された、ということなのでしょうか。ちなみに、このエアロファシリティーという会社は、2000年からヘリポートの設置、建設工事を得意とする会社ということで、病院や消防署関係のヘリポート建設が実績としてあるほか、南極の昭和基地でのヘリポート建設も行っているとのことです。しかし、このほかに、ヘリコプターに関しては操縦訓練、機体整備というようなサービスを実施しているという事ですから、総合的なコストでは、かなり小回りの利く会社、という事が出来るかもしれません。本日正午の時点で、エアロファシリティーHPのアクセス数は24884、しかし、こうした会社があるという事が知られれば急激に伸びるのかもしれませんね。

Img_0794  一方で、重要な問題が置き去りにされています。安価なエンストロム480bは、OH-6以前に使われていた二人乗りの可愛らしいTH-55Jよりは高性能ではあり、満足する、という選択肢はあるのでしょうけれども、陸上自衛隊には、生産終了が見込まれているUH-1Jに続いてUH-1H多用途ヘリコプターを置き換える新多用途ヘリコプター、そして、高コストという理由で、当初考えられていた250機の配備に届かなかったOH-1観測ヘリコプターに代わり、師団や旅団、方面隊に多数が配備されているOH-6Dの後継機を、そろそろ選定しなくてはならない、ということです。海上自衛隊と同じくTH-135を採用していれば、機体の性能からしてOH-6Dの後継機として充てることも出来たかもしれませんし、初飛行に成功したユーロコプターEC-175を多用途ヘリコプターとして導入することも出来たことでしょう。

Img_1996  しかし、エンストロム社製の機体では、他にOH-6Dの後継機やUH-1Jの後継機とすることができるような中型機やエンジン出力を高めたファミリー機が無く、部品の相互互換性などの利点が生まれません。もっとも、観測ヘリなんて、飛べばいいのさ、とエンストロム480bが採用される可能性も0ではないのですが、そうなりますとざっと所要180機、果たしてエアロファシリティー社が整備支援を行う事が出来る機数なのか、という問題が生じます。すると、陸上自衛隊としては、多用途ヘリコプターや観測ヘリコプターに別の本命がある、ということになるのでしょうか。そう考えれば、練習ヘリコプターで従業員180名というエンストロム社製のヘリコプターを導入して、整備や補給、教育の面で支援を行ってくれるエアロファシリティー社に協力を求めた、ということには納得が出来ます。機種が増えれば、関係する整備や補給、教育のコストが増大するという難点が生まれるのですが、この難点をエアロファシリティー社が請け負ってくれることになるのですし、何よりもヘリコプターそのものの導入コストを低く収めることができます。

Img_1587  それでは、陸上自衛隊は、今後どのようなヘリコプターを多用途ヘリコプターとして、観測ヘリコプターとして導入するのでしょうか。現在、法廷にて争われているAH-64Dの調達中断に伴う富士重工と防衛省の問題も解決策が模索されている最中ではありますが、同時にAH-1S対戦車ヘリコプターの後継機もしっかりと考えてゆかなくてはなりません。練習ヘリコプターの選定が、これに一つの方向性を示してくれるのではないか、と期待していたのですが、この方向性が示されるのは、もう少し先の話になりそうです。

HARUNA

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XC-2第二回飛行試験を実施(2010年2月10日0930) 飛行試験は順調!

2010-02-10 23:03:27 | 先端軍事テクノロジー

◆XC-2は離陸後脚部を収容、T-4が随伴

 岐阜基地からのXC-2離陸の画像が入手出来たので、掲載したい。XC-2は二度目の飛行試験に成功である。

Img_6518  離陸し順調に飛行を続ける航空自衛隊次期輸送機XC-2.前回のXC-2初飛行を報じた際には、勢い余って2010年1月26日初飛行、と記載するべきところを2009年1月26日、と記載してしまったが、今回改めて2010年2月10日に第二回の飛行試験を無事終了、と一報をお届けしたい。

Img_6526  今回の飛行試験では、離陸後、脚を収容し飛行した。初飛行に際しては、脚部収容した際の可動部分におけるトラブルを避けるために、離陸後、一時間にわたる飛行では脚部を出したまま飛行を果たしたが、今回は離陸後に脚部を収容、通常飛行と同じ状態にて飛行試験を行った。

Img_6539  飛行試験は、T-4練習機が随伴機として実施された。初飛行は、機長に川崎重工飛行課の長谷部聡氏、副操縦士に石田進氏があたったと発表されているが、このまま飛行試験が順調に進めば川崎重工から防衛省に納入され、航空自衛隊の飛行開発実験団により飛行試験から運用試験へと移行することとなる。

Img_6541  12㌧を搭載し航続距離8900km、最大搭載量とされる37㌧を搭載した場合でも5600km、巡航速度マッハ0.8というこの新型機は、C-1輸送機の後継として配備が進めば航空自衛隊の空輸能力は飛躍的に上昇し、緊急展開のほか、国際貢献任務へも活躍が期待される輸送機だ。

HARUNA

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無人偵察機墜落 硫黄島沖でエンジン停止、遠隔操作で墜落処分

2010-02-09 23:29:47 | 先端軍事テクノロジー

◆9日0945時、事故発生

 An-225輸送機が成田へハイチPKO輸送支援のチャーター機として飛来したそうです。関空でAn-125は見たことがあるのですがAn-225は世界最大という未知の機体、愛称のムリアはロシア語で夢を示すそうですが、夢でもいいから見てみたいですね。

Img_9779  さて、夢といえば、日本では念願のXC-2が初飛行を果たしましたが、同時に開発試験中の無人偵察機が海上に墜落したそうです。本日はこの話題を扱いましょう。毎日新聞からの引用です。無人偵察機:飛行試験中に墜落、海へ落下 防衛省: 防衛省技術研究本部によると、9日午前、硫黄島基地(東京都小笠原村)周辺で飛行試験をしていた開発中の無人偵察機(全長5.2メートル、全幅2.5メートル、高さ1.6メートル)のエンジンが停止し、安全確保のためF15のパイロットが遠隔操作して機体を海に落下させた。

Img_9852  同本部によると、無人偵察機はF15戦闘機の翼の下に搭載され、空中で切り離されて自律飛行する仕組み。午前9時45分ごろ切り離されたが、直後にエンジンが停止。同50分ごろ、パイロットが付近に船舶がいないことを確認して硫黄島北北西約155キロの海面に落下させた。機体は水没した。同本部で原因を調べている。無人偵察機は04年度から開発に着手。09年度までの開発経費は約103億円(4機分)。機体は1機約8億円。【樋岡徹也http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100210k0000m040086000c.html

Img_3338  引用は以上です。この無人偵察機は、昨年から硫黄島での飛行試験が行われていたもので、F-15から空中で発進し、偵察飛行を行った後に基地に戻り着陸するというものです。偵察飛行を行った後で自分で基地に戻って自動で着陸する、というのがこの無人偵察機の利点です。“この”、と表現したのは、同じ無人偵察機の機体を使って、自動着陸を行わない無人機が過去に開発されていたから、という背景があります。自動着陸装置の搭載されていない昔の無人機は、任務終了後海上に着水して艦船により回収されるという方式で運用されていたのですが、今回の無人機は水没したということですから、浮揚装置は現在の無人機に搭載はされていないようです。

Img_9000  今回の墜落は、問題ではあるのですが、エンジンの空中停止という問題と発表されていますし、空中でエンジンが停止したのちにF-15から危険防止のために海上に不時着するよう操作して、海没処分としたのが実態のようです。つまり、自律操縦装置や遠隔操縦装置には重大な問題が無かった、ということにもなりますから、墜落という不幸の中のせめてもの幸いというべきでしょうか。そして、無人機ですから、操縦者はいませんですし、海上に墜落したことにより人的な損害が無かったことも幸い、と言えるでしょう。

Img_8822  無人偵察機によって、F-15は“偵察番長”となることができる、とその昔Weblog北大路機関には掲載しました。といいますのも、現在、航空自衛隊は偵察機としてRF-4E,RF-4EJを運用しています。しかし、RF-4は、後継機を探しているF-4ファントムの派生型ですから、こちらも後継機が求められている訳です。そこで、F-15のなかで近代化改修が出来ない初期型のアナログ配線で設計されている機体を偵察機として改修することが決定しています。F-15は機体寿命がまだ残っているので、現代の航空戦に対応できるようなバージョンアップは難しいから、戦闘機として用いるのは難しいので、偵察機に転職させてみよう、ということです。愛称はRF-15、となるのでしょうか。

Img_2703  最近の各国が運用する偵察機の趨勢は、偵察専用機ではなくて、普通の戦闘機に偵察の為の機材を機外に搭載して偵察任務を行う、というのが潮流です。その背景には、戦闘機が高性能化して、偵察を兼務しても充分な能力を持っているくらいに技術が進んだ、ということもいえるのですけれども、航空自衛隊のF-15偵察型は無人機を搭載することで、偵察機本隊とは分離して無人機が偵察を行う事が出来ますし、最悪の場合は無人偵察機が囮になることもできますので、偵察機としての能力が大きく向上します。無人機二機を搭載することができますから、“偵察番長”ということが出来るようになります。

Img_7536  最近の無人機は、写真のU-2偵察機のように、高高度を長時間飛行して、戦域監視のような任務に充てることができるものが主流となっています。見た目では翼が大きいものがそれにあたるのですが、航空自衛隊の無人偵察機はミサイルのような翼が小さい形状を採用しています。この形状ですと高速飛行することは出来るのですが、滞空時間は短くなってしまいます。逆にいえば、航空自衛隊の無人偵察機は、高高度をゆったりと長時間滞空出来るような機体では、撃墜されてしまうような、戦闘機の脅威があるような状況で運用することができるわけです。

Img_7863  高速で飛行できる無人機は、普通に危険な、有人機が入ることのできない空域へ偵察飛行することができますし、そして例えば、対艦攻撃を行う支援戦闘機が索敵を行う強行偵察任務にあたることもできます。つまり、日本が必要としている任務に合致する機体だけに、完成には期待が集まる訳です。墜落、という状況は好ましい状況ではありませんが、試作機はまだまだ残っていて、エンジン停止の原因を早急に究明して、次の段階へ進んでほしいと願うばかりです。

HARUNA

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