北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

海上自衛隊によるソマリア沖海賊対処任務、第150回の護衛任務を完了

2010-07-02 22:59:01 | 海上自衛隊 催事

◆海賊対処法に基づく護衛では109回

 紅の豚が地上波で放送していました。何度観ても細かいところまでの配慮と描写、凄いですね。

Img_2225  この作品には空賊が出てきますが、時代としては義賊の延長線上にあるような海賊というのは中世末期に海軍か探検家に入ってしまって、現在の海賊は洋上強盗、というところでしょうか。マラッカ海峡では通峡待ちで停泊中の船舶に蛮刀を手に海賊が乗り込んできて、ソマリア沖では突撃銃にロケット弾まで持った海賊が沖合の船舶へ小型ボートで乗り付けて不法占拠して身代金を要求します。蛮刀の方は海上保安庁の巡視船が派遣されて取締の支援を行っているのですが、広い海域で漁船に紛れて跋扈するソマリア沖の海賊には洋上哨戒と協同交戦能力を有する海軍でなければ対処できない、ということで海上自衛隊を始め各国海軍がソマリア沖に展開して任務に当たっています。

Img_7136  海上自衛隊のソマリア沖海賊対処任務ですが、6月30日より開始された護衛任務が本日終了しました。12隻の船舶を護衛したのですが、この護衛を以てアデン湾における海上自衛隊の護衛任務は150回を迎えました。アデン湾海上護衛任務第150回の達成です。この任務は、護衛艦むらさめ、ゆうぎり、があたり日本の船舶運航事業者が運行する外国船籍船で自動車専用船2隻、タンカー1隻、外国船では一般貨物船5隻とタンカー4隻を護衛しました。船団護衛方式での海上自衛隊による海賊対処任務は警護対象船への被害が0、という記録を維持しています。

Img_9720  海賊対処任務では、水上部隊は現在第五次派遣部隊が任務に当たっていて、海賊対処行動航空隊として派遣されている航空隊も第四次派遣部隊が任務に当たっています。第一次海賊対処水上部隊では、護衛艦さざなみ、さみだれ、が派遣。第二次派遣部隊では、はるさめ、あまりぎ、が派遣。第三次派遣隊では、たかなみ、はまぎり、が派遣。第四次派遣では、おおなみ、さわぎり、が派遣、そして現在の第五次派遣では、護衛艦むらさめ、ゆうぎり、が派遣されています。派遣航空部隊では、P-3C哨戒機が派遣、上空から現在世界最高の性能を誇る哨戒機、間もなく日本のP-1が世界最高になるのですが、上空から監視の目を光らせています。

Img_0790  しかし、護衛任務への完璧な対応とともにジプチ大統領から派遣部隊指揮官が激励を受けるなど世界的にも高い評価を受けている一方で、非常に残念ながら殉職者が出てしまいました。6月9日、護衛艦ゆうぎり艦内において隊員の死亡事案が発生してしまいました。1936時、艦内でタンクから発生したガスにより隊員1名が意識不明となっているところが発見され、ただちに応急措置をとるとともに、艦載ヘリコプターによってジプチのフランス軍病院へ緊急搬送を行ったのですが、残念ながら殉職、海賊対処任務において初めての殉職者、となってしまいました。ゆうぎり、は23日から護衛任務に復帰しています。

Img_0930_1  アデン湾、というのは欧州からインド洋と太平洋を結ぶ重要な航路で、大西洋から地中海を経てアジアへ向かう掛け替えの無い重要航路です。そして中東地域に隣接しているこの地域は石油輸送でも日本の死活的利益に関わる海域です。日本の海上自衛隊は、欧州各国のNATO加盟国の海軍が決して余裕がある訳でもないほどに縮小されていて、米海軍にもかつてほど、艦船の数に余裕はありません。中国海軍やインド海軍、韓国海軍も艦船を派遣しているのですが、艦船の数はやはり充分では無く、ここに恒常的に必ず2隻の護衛艦を継続して派遣できる、という一点は非常に大きなポテンシャルを発揮していて、同じく洋上哨戒機を各国海軍は自国の周辺海域を警戒する程度の数しか保有していない中、海上自衛隊には80機のP-3C哨戒機がありますので、この中の数機が派遣されている、というのは大きな意義があります。先進国のマスメディアで海賊問題をあまり報じていないのは日本ぐらいなのでしょうが、被害は深刻である分、日本の貢献は高く評価されていて、この日本が第150回の護衛任務を達成した、というのは少なくない意義を持っていると言えるのではないでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報1

2010-07-01 22:28:41 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 いよいよ初夏を迎える日本列島ですが、今週末の自衛隊関連行事は北部方面隊管区の滝川駐屯地、そして戦車部隊の駐屯する鹿追駐屯地の二つとなっています。

Img_0773  滝川駐屯地祭、滝川駐屯地には第11旅団隷下の第10普通科連隊が駐屯しています。第11旅団は第11師団から縮小改編を受け誕生した部隊ですから、かつての強力な普通科連隊は三個普通科中隊を基幹とする編成に縮小されました。一方でこれまで、北部方面隊の普通科連隊は装甲化された編成と高機動車主体の編成が多かったのですが、こちらは改善されたようです。

Img_7258  第11師団は真駒内の第18普通科連隊が装甲化されていたのですが、ここに装備されていた96式装輪装甲車が分配されるかたちで第10普通科連隊にも配備されたとのことで、伝え聞くところでは更に増強された、という話も聞きました。依然として北部方面隊は陸上自衛隊の打撃力を担う部隊のようですね。

Img_2113  一方で北部方面隊には、107㍉重迫撃砲こそ引退したようですが、106㍉無反動砲が現役の対戦車小隊が編成されていたり、本土部隊では徐々に消えつつある旧型の73式小型トラックが元気に走り回っていたりと、興味深い駐屯地祭となりそうです。もっとも滝川は11旅団管区なのですが、かなり札幌から北上しなくてはならず、遠いのですけれどもね。

Img_99395  第5戦車隊、三個戦車中隊基幹、本部管理中隊も大型で戦車隊長に1佐職が就いていますので、戦車大隊と同格か格上、という事が出来る部隊です。戦車中隊には90式戦車が装備され、帯広駐屯地の第5旅団隷下での機動打撃部隊を担当している部隊です。写真は第5戦車隊のものがなかったので戦車教導隊第五中隊の写真。数年前の総合火力演習に第5戦車隊の戦車が参加したのですが、その年には当方行けませんでしたので、富士教導団の写真で代用です。

Img_0212  第5旅団も第11旅団と同じく、かつては第5師団として道東地区の防衛警備及び災害派遣を担当していた部隊なのですが、冷戦後の北方脅威縮小を背景に師団から旅団に縮小改編されました。ただし、軽装甲機動車や90式戦車の受領、自走化された特科部隊等装備では強力で、編成は小型化されましたが、装備密度は向上しています。

Img_6063  鹿追駐屯地は帯広駐屯地から32km、駐屯地は然別演習場に程近く、付近の展望台からは平日に戦車射撃が見えると聞いたことがありますが、北に大雪山を望み、十勝の大自然に囲まれた駐屯地です、90式戦車の機動力が最大限に生かせそうな立地、というところなのでしょうね。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

7月4日:滝川駐屯地創立記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/11d/
7月4日:鹿追駐屯地創設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/index.html

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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