今日の「花子とアン」は、実に様々な角度から楽しめる番組であった。デジタルとBSで二度も観てしまった。脳科学者で「赤毛のアンに学ぶ幸福になる方法」の著者でもある茂木健一郎さんも社長役で出演したのも素晴らしかった。
さて、恐らく今日のお話の主要なテーマの一つは、養子に出された美里さんが、アン・シャーリーのように社長に怒りをぶつけるが、母親(血がつながっていない)の愛に気付き社長に謝るということだと思う。これは「赤毛のアン」で孤児のアンがマッシューやマリラに受け入れられつつも、リンド婦人に怒りをぶつけ謝罪するストーリーとダブルようである。
ところで、「赤毛のアン」はもちろん世界的に有名な小説であるが、特に日本人に人気があるらしい。プリンス・エドワード島に行かれた方も身近にいるし、私の妻も愛読したという。日本人とアン・シャーリは心のどこで繋がっているのだろうか?茂木健一郎さんは先の著作で日本人のもつ「もののあはれ」的な生命哲学に言及され、次のような言葉をいわれている。
「それは脳科学でいうところの「偶有性」という概念とも関係してくることです。一言でいうと、「主人公の心理が揺れ動いて、成長していく」という主題です。これは日本人がとても好きな文学的テーマのひとつではないでしょうか。」(「赤毛のアンに学ぶ幸福になる方法」講談社文庫 207P)
私は氏のこの本のキリスト教にたいする見解は賛成できないが(日本人がキリスト教を受容できない理由など)、この偶有性については、U先生の生き甲斐の心理学でいうところの幸福曲線の辿り方に似て、そうかなと思った。
それは、魂(霊魂でもよいが)の成長という日本だけでなく世界的なテーマともいえる。
日本人の魂観。私は学者ではないので厳密な議論ができないが、日本人の縄文時代の死生観に結びつくように思えてならない。先にこのブログで述べたが、諏訪の有孔つば付土器に現れてくる、女神の誕生から死、再生(オオゲツヒメのイメージ)の物語が浮かぶからだ。しかも、これは世界の宗教の原形につながるようでもある。
ところで、生き甲斐の心理学の勉強会でときどき話題になるのは「あなたは橋の下から拾われてきた」ということを、多くの人が親から言われてきていることがある(様々なバリエーションがある)。それを聴いてショックを感じるものだが(アンが孤児で悩むように)、調べると、これは日本の精神文化の古層が引き継がれて伝わったようなのである。
世界では、こうした橋の下もあるが、コウノトリで運ばれてきたという文化もあるようなのだ。宗教学者のミルチャ・エリアーデもこの民話に興味をしめし著作もあるそうだ。ネットで検索すると、川の精霊が人間界に誕生したのが『橋の下で拾った』には込められているという説をいわれている方もいてうなってしまった。
しかし、この「あなたは孤独な魂だ。」というメッセージを含む「あなたは橋の下から拾われてきた。」が、何故長い間引き継がれてきたか(例えば数万年)は実に興味深い。U先生の生き甲斐の心理学で大切にされているカール・ロジャースの人格形成論の原形ともいえる命題1も実に同じようなことを言っているのだ。例によって、学術用語で判りにくいが味読の価値はある。
命題1:個人はすべて、自分が中心であるところの、絶え間なく変化している経験の世界に存在する。
そして、この個人を魂に置き換えると、とても素敵なアンの物語にも通じる魂の成長の話に通じると見ることもできる。「あなたは橋の下から拾ってこられたのよ!」は日本古来の宗教教育であると共に、かなり普遍的な心理学的教育かもしれない。
私とあなた ② 9/10