科学者は歳を取ったら、何をするか。これは何十年も昔に「自然」(中央公論社)の巻頭言に載っていた話であり、Weiskopf(物理学者)の言では
1. do nothing
2. do administration
3. do philosophy
であった。これを聞いた朝永振一郎は
4. do nonsense
を付け加えたというのがそれであった。これは前に書いたことだが、
5. do history
6. do education
とかいろいろバリエーションは考えられる。ここまでは前に書いた思う。do historyを行った学者としてはオランダ生まれの物理学者Paisがいるし、相対論的量子場理論のテクストの著者であったSchweberとか、かつてFeynmanとの論文の共著者でもあった、L.N. Brownなどもこの範疇に入るであろう。朝永自身も「スピンはめぐる」(みすず書房)を書いたので、この範疇に入るのかもしれない。
do educationの例はあまりないのではないかと思う。私自身はこのdo educationに入ると思っているが、もともと科学者であったかどうかが私自身は疑われるので、なんともいいようがない。
それはそれとして私自身の友人、知人には意外に定年後も物理を続けている人が多くて、彼らは名誉とか業績のためではなく本当に学問が好きなのだなと感心をしてしまう。その辺がある程度功なり、名遂げた後で科学行政(do administration)にしか関心がない人とは違った人種が育っているという感を強くする。
もっとも科学に強い関心をもっていながら、その人柄のために学部長や学長のような科学行政に携わっている人もいることを忘れてはならない。