いつも困難なことに対面したときに普通の優れた人なら、なんなく解決するようなことでもわたしには解決できないことが多い。そうすると当面の困難に対面できず困難の場面を拡げてしまう傾向にある。
それで困難を解決できればそれでいいのだが、結局困難の解決ができないで棚上げとなることが多いから困ったものである。
ともかく、困難の拡大がいい場合もあるだろうが、よくない場合が多い。困難についてその局面に収めることができる人はある種のタレントをお持ちなのだと思う。
物理学者は一般に困難の対処を局面に収めてなんとかすることが必要なのではないかと思う。もちろんこれはとても才能のある方であれば、根本的にすべてを変えるという気力と根気をもつような方もおられるのであろう。
本当はそういう方が構想とかの雄大さにおいてすばらしいのだが、そういう方々は少ないと思われる。そうだとすると適当に困難を押し留めてというか拡大せずに解決することが普通の物理屋の腕ということになる。
ところが数学者はすぐに一般化することを好む。もっとも物理学者でも益川敏英氏などは大抵一般化したほうが個別なレベルにいるよりは困難の解決がしやすいと言っていたと思う。
そういえば、いつもいろいろなことを私に教えてくださるNさんなども一般化したときにはということにも関心がおありのようである。ということは優れた物理学者は自在に、または臨機応変に、困難の局面を拡げないでいたり、または拡大してみたりすることができることが優れた素質となっているのであろう。