「食物連鎖」は私が「生物濃縮」といつか表したものと同じである。これは一昨日にKさんの山の家にテニス仲間と訪ねたときに、I さんが U さんに原発事故で放出された放射性元素が一般には薄まるはずだが、そうではなくて濃縮されるという事実のキーワードとして「食物連鎖」があると言われていた。
それを聞いた U さんが十分に理解されたかどうかはわからないが、さすがに I さんは弁護士さんだけあってそれについての十分な理解があるのだと思われた。
ビキニ環礁で水爆実験を行ったときに日本人のマグロ漁の漁師さんたちが被曝して、その中の一人、久保山愛吉さんが亡くなった。そして、そのときに漁獲されたマグロは放射能に汚染されているとして地下深くに穴を掘って埋められ、廃棄処分をされた。
普通に物理学での熱力学第2法則によれば、安定な化学物質のPCBでも放射能でも自然界に拡散して薄まることが予想される。
ところが、実際にはさにあらずでマグロに放射能が濃縮されたり、ほうれん草にPCBが濃縮されたりということが起こる。これは熱力学第2法則に反しているようだが、実は理由がある。
マグロの放射性はまずプランクトンが汚染されており、そのプランクトンをマグロが食べるとことによってマグロに放射能が蓄積したのであった。だから動物とか植物とかは負のエントロピー(ネゲントロピー=負のエントロピー)を持つといわれる。
それらの生物濃縮という作用を使って、逆にひまわりを植えたり、ひまを植えたりして、放射性物質を集めてもらい、除染を進めるということを最近新聞で読んだことでもある。このように生物には濃縮作用があるから、極端に食物には神経質と思われるくらいでなければならない。
特に、放射性を帯びた食物として人間の体内に摂取されたものは、その一部は体外に排出されるとしても、一部は体内に留まり、内部被曝を起こすので、放射線量が低線量でもそれが持続する。それで内部被曝の方が体への影響が大きいというのはいまでは一般によく知られたことである。外部被曝の場合は高線量でも時間的には一時的なのでその影響はあまり大きくはないといわれる。
もちろん、自然界にも放射線は存在するが、それでも不必要な放射線は受けないに越したことはないと現在では言われている。一般に閾値があって一定以上の放射線量でないと人体には影響がないという説もあるが、それでも一般には放射線量は少ない方がいい。
しかし、自然界には地球外から常時やってくる宇宙線のように私たちにはどうしようにもできないものもある。だから、不必要な放射線は受けない方がいい。
武谷三男の主張では「許容量」とは他の利益のために放射線等を「我慢する量」であって、ここまでは人体に大丈夫という量ではない。