エルミート演算子とは何か。
いつだったかもう何十年も昔のことだが、応用数学の先生がソリトンの研究で有名な広田良吾先生を集中講義に呼ばれたことがあり、その講義に列席して講義を聴講していたときにある演算子を黒板に書かれたので、おもわずその演算子はエルミート演算子ですかと質問したことがある。
ところが広田先生くらいの権威になると「え、エルミート演算子って、なんですか」とつぶやかれたのち、悠々と講義を続けられた。
その「演算子の期待値をとれば、実数になるよう演算子です」とか答えねばならなかったのだろうが、即座にそんなに適切に答えられたかどうかわからない。
エルミート演算子の固有値は実数であるとか、実数を演算子に適用して拡張したようなものだとかいろいろ説明ができるのだろうが、なかなか的確には説明ができそうにない。
これは量子力学ではエルミート演算子の定義が元の意味から拡張されているためかもしれない。
いつか、きちんとその論をまとめておきたいと考えながらはたしていない。
ちなみに「その演算子の期待値をとれば、実数になるよう演算子です」という意味の説明があったのは、ボームの『量子論』(みすず書房)であったろう。