16日付朝日新聞第2社会面に、鳩山代表の総務大臣届出政治資金管理団体「友愛政経懇話会」(芳賀大輔・会計責任者)の個人献金者の中に、「故人」の名前が含まれているとの報道がありました。私も初めて過去3年分(平成17年~19年)の「友愛政経懇話会」の収支報告書を見ましたが、ずさんな点がいくつか見受けられました。
これを受けての16日夕の定例記者会見を聞きました。
MSN産経が載せた記者会見詳報を引用させてもらいます。
「はい。本日の朝刊におきまして、私の政治資金管理団体、いわゆる『友愛政経懇話会』というのでありますが、その収支報告に関しまして、もう既に亡くなられておられた方のお名前が載っているということでございます。役員会でもこのことをお話申し上げて、今、
私としてもまったく寝耳に水のことでございましただけに、
秘書に命じてしっかりと調査をするようにということを申したところでございます。今しばし時間をいただければと思っておりますが、なぜこんなミスが起きたのか。私にも
まったくわからないわけでございますだけに、このようなことで、亡くなられた方には大変ご迷惑をおかけしたことは事実でありますので、
おわびを申し上げたいと思いますし、当然のことながら何らかのミスであったとすればそれはあってはならないことでありますだけに、調査結果に基づいて早急に修正などを行わなければならないと、そのように感じております」と述べました。
そして、「今、お話がありましたように、
企業・団体献金の禁止を民主党はうたっておりまして、そこから個人献金への移行ということを私どもはうたっておるのは事実であります。企業献金がすべて悪だということではなかったわけでありますが、これからはより個人献金というものを充実をさせていかなければならないと思っております。
そんな矢先にこのようなことが起きたことを申し訳なく思っておるところでありまして、個人献金というものの重要性というものが、このことによって少しでも傷がつかないように努力をしていかなければならない。胆に命じているところでございます」と続けました。
ここに私は懸念を感じます。
というのは、
西松事件に関して鳩山幹事長(当時)が設置した第3者委員会(飯尾潤委員長)の報告書で、「
小沢個人と党を一緒くたにしていた」「
政党としての危機管理能力が欠けていた」という宿題を民主党はちょうだいしたはずです。
鳩山会見では、鳩山個人の問題として、民主党の問題と分離すべきだった。なのに、「民主党は個人献金への移行を図っているのに、その矢先にこのようなことが起きて申し訳ない」との趣旨の発言をし、鳩山「故人」献金事件と民主党を結合させてしまいました。
これは大問題です。
鳩山さんは報告書を読んでいないのでしょうか? あるいは報告書の内容が気に入らないのでしょうか?
報告書を受け取った日の夕方のぶら下がりインタビューでは、自民党が速やかに第三者報告書を検証するプロジェクトチームを発足させたことについて、「どうぞご自由に」と話しました。これも大変気になっておりました。
まずは16日の時点では、鳩山と民主党を切り分けた上で、鳩山事務所に調査を命じている、とすべきだったのです。
鳩山由紀夫さんは「
代表としての定例会見だが、この場をお借りして、鳩山一個人としてお騒がせしていることをおわびしたい」「
調査中とはいえ、民主党の仲間や支持者のみなさんにご心配をおかけしているのは事実で、申し訳なく思っている」と言うべきだったのです。また、いかにも事務所任せという態度も感心しません。
そもそも十全ビルの事務所の家賃が高いから、お金がたくさん必要なんでしょう。十全ビルの個人事務所はいますぐ閉鎖して、党本部内役員室、国会内役員室、議員会館内議員事務所に機能を集約すべきです。そういう姿勢を見せることが、「社会」ではなく、「世間」を味方につけなければならない政権準備党の代表として必要なんです。
◇
小沢代表(当時)の辞任記者会見を扱った総支部長のブログを読んでいて、気がついたことがあります。
大阪16区総支部長の森山浩行さんが
ブログで小沢前代表の辞任表明について、「突然のことで驚きました。(今朝、小沢代表との2連ポスター増刷分が届いたところでした)」と書いた上で、「会見では『一致団結して政権交代を実現する』ため、との言葉と『何らやましいことはない』という宣言がありました。
前者は選挙に向けて、
後者は裁判に向けての意欲、ととれます。」と書いていたことに後から気付きました。これは「一致団結して政権交代を実現する」
民主党と「何らやましいことはない」と主張する
小沢一郎さんは別物であると示唆した表現です。
[写真]森山浩行・大阪16区総支部長
森山さんは38歳ですが、政治生活10周年を迎えました。堺市議、大阪府議は「完全無所属」でしたから、初めて民主党入りして第45回総選挙を迎えます。
“未来の代表”として、総支部長の中でも一目おかれる存在である森山さんは党内グループ(一新会倶楽部など)の所属を明らかにしていません。先月も凌雲会の仙谷由人会長が応援演説に訪れるなど、スカウト合戦が加熱しています。
[写真]森山浩行さんの講演会に登場した仙谷由人さん
それにしても、鳩山代表に一言言上する側近というのはいないのでしょうか。現在は野党である民主党の「政党としての危機管理」というのは、政権交代後の官邸の危機管理に直結します。
政治資金収支報告を読むと、この会計責任者の親子(?)が献金者に名を連ねているのも気になります。寄付者のうち、「鳩山由紀夫」さんの職業が、「衆議院議」となっていて、平成19年初めて、手書きで「員」が書き加えられているなど、ずさんさが見立ちます。
西松事件の場合、小沢代表(当時)が当事者であったので、飯尾さんらの言う「政党としての危機管理能力が問われた」のは鳩山幹事長(同)が最も重く受け止めるべき言葉だと私はとらえていました。
鳩山代表は、「朝日の取材を受けた」と鳩山事務所から報告を受けた時に誰の顔が浮かんだのでしょうか。地元ではいずり回る総支部長たちの顔が少しでも頭をかすめたのなら、いいのですが。
asahi.com(朝日新聞社):鳩山代表に「故人」献金? 少なくとも5人、120万円 - 政治
民主党の鳩山由紀夫代表の政治資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に、すでに亡くなった人が個人献金者として記載されていることが分かった。朝日新聞が03~07年分の報告書を調べたところ、少なくとも5人の故人が延べ10回、120万円分を献金したことになっていた。遺族のうち、1人は「よく分からない」と答えたが、4人は「死亡後に献金した事実はない」としている。
05年3月に亡くなった東京都内の旅行会社元社長は、生前から献金があり98~00年に年1万円、03年は25万円、04年は24万円が記載されていた。ところが死亡後もそれが24万円(05年)、10万円(06年)、15万円(07年)と続いている。
元社長の妻は05年以降の個人献金を否定したうえで「なぜそんなことになっているのか。死亡後の献金なんて不愉快」。旅行会社側も「経理担当者が確認したが、会社がかかわった献金はなかった」と困惑気味に語った。
04年12月に死亡した愛知県の建設会社元社長は生前、98年から6年連続で1万円を献金。死亡後は途絶えていたのに07年になって突然10万円が記載された。遺族は「変な話だ。何かの間違いではないか」と話した。
02年12月に死亡した都内の元国立大教授の場合は、生前の01年から献金が始まり死後の03~06年にかけても計46万円分の記載があった。元教授の遺族は「夫の死後、個人的なお礼で1度だけ夫人に10万円を渡したと思う」と話すが、その10万円が献金として処理されたのかどうか不明という。
鳩山氏は5月の代表就任会見で企業・団体献金の3年以内の禁止を打ち出した。さらに今春に配信した自身のメールマガジンでは、個人献金に対する税の優遇措置の拡大を訴えており、「企業献金から個人献金へ」の流れを唱える代表的存在だ。
鳩山事務所は朝日新聞の取材に「誤記載だとは思うが、全体を調べてみたいと思う。事実とすれば本人や遺族に申し訳なく、誠心誠意対応したい」としている。