【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

タブーとされる「イオングループ」に言及 岡田克也副総理に片山さつきさん 消費税増税で

2012年03月21日 07時15分00秒 | 岡田克也、旅の途中

 まず「タブー」とは何かということですが、ポリネシア語で「聖なる」の意味の言葉が語源。広辞苑によると、超自然的な力をもつ事物に対して、社会的に厳しく禁止される特定の行為。触れたり口に出したりしてはならないとされる物・事柄。禁忌。そのポリネシアの風俗を世界に知らしめたのは、画家のゴーギャンでしたが、やはり「タブー」の多い社会だけに彼は自殺しています。

 日本社会もタブーは多いし、聖域も多いですが、語源とはだいぶ意味が違うように感じます。

 例えば、民主党内では、岡田克也さんの前で、「イオン」というのはタブーだとされていますが、果たしてどうでしょうか。

 これについては、私も正直分からなかったのですが、歯に衣着せぬ論客、自民党の片山さつきさんが平成24年2012年3月16日(金)の質問で、イオンに触れました。

 片山さんはパート従業員への厚生年金加入拡大について質問。雇用者負担の増大により、かえって、パート従業員の年収が減るとして次のように質問しました。

 「日本フランチャイズ協会、パートさんを雇っている業界は今回の拡大に反対をしています。パートさん自身の署名も集めています。私もそれに全部反対しているわけではないですよ。良い社会保障をいただければいいでしょうけれども。政治というのは、説得と納得のプロセスですよね。このチェーンストア協会のもっとも有力な企業というのはイオングループなんですよ」。

 このとき、うつむき加減だった石井一・予算委員長が顔を上げ、閣僚席の岡田さんを見ました。

 集中審議なのでNHK中継が入っていましたが、NHKカメラは野田佳彦総理を顔の表情を映しました。

 
[写真]「イオングループ」という言葉を聞いて、表情を曇らせる野田佳彦総理、2012年3月16日、「NHK国会中継」画面を撮影。

 野田さんは表情を曇らせました。野田さんは、2009年5月~9月にかけて、岡田幹事長(第2期)の定例記者会見の司会者を幹事長代理として務めていました。そのときの緊張感を思い出しのでしょう。

 
[写真]岡田民主党幹事長(左)の定例記者会見で気を遣う、司会者の野田佳彦幹事長代理(右)、2009年の6月ごろ撮影。

 ところが、「ケンカが強い」岡田副総理は余裕の表情を見せます。


[写真]片山さつきさんの「イオングループ」の挑発に余裕の表情を見せる岡田副総理(右)、NHK国会中継画面を撮影。

 片山さんは質問を続けます。雇用保険の話だったのに、なぜか消費税の話が渾然一体となっています。

 「この消費税の議論のときに私はまだ官僚で役所にいましてね。よく自民党の大臣がつっこまれて、「あなたは奥さんを家庭内で説得できているんですか」と。で、「説得できません」って(答弁して)土井たか子さんに追及されて、ウワーとなっていたんですが、あなたはまずご親族の企業を説得できているんですか。あなた方の発想というのはパートさんを助けるようでパートの年収を減らしているんですよ」

 これについて、まず小宮山洋子厚労相(凌雲会)が答弁を求めて挙手しました。この間に、岡田副総理は安住淳財務相になにやら話しかけて、安住さんが笑いをかみころしている表情が見られました。

 続いて答弁に立った岡田副総理は余裕の表情。


[画像]答弁に立つ岡田克也副総理、2012年3月16日(金)、参議院インターネット審議中継から。

 岡田さんは「私、この問題で私の親族と話したことはありませんので、あのちょっとコメントは差し控えたいと思います」。

 片山質問のなかに消費税の話がまざっていましたが、質問の本旨は雇用保険加入者の拡大です。雇用保険加入者の拡大について会話する親族ってあまりないでしょう。岡田さんは、イオン株式会社の株式は保有していますが年間配当は73万円ぐらいです。イオングループは28社ほど上場しているようです。一時のトヨタグループのように子会社を上場させることで、株式市場から直接、資金を調達しています。イオングループは公示地価が安いところに不動産を所有しており、銀行からの借り入れも利率が高いのでしょう。社債格付けもイトーヨーカ堂、ユニーより低く社債でも調達しづらい。だから、株式を上場するのでしょう。ただ、長いデフレ不況で、イオングループ全体の売上高は減少傾向にあります。カンボジアなど海外進出も減収に負けないための「攻撃は最大の防御」という段階のようです。岡田克也さんはイオン株式会社以外のグループ株式は保有していないとみられ、「相続対策」のため、イオン株式会社の株式を12万株持っているのだと考えます。12万株というと凄いように感じますが、年間配当は上でふれたとおり、73万円です。そのため、経営責任はまったく負っていません。また、通産省勤務時代に、大店法絡みで便宜を図ったという噂がネットにありますが、民事で勝訴していますし、通産省で流通関連の部署に行くキャリアはかなりの窓際です。それに大店法(大店立地法)の所管官庁は都道府県庁です。

 岡田さんへのイオン挑発は不発に終わりましたが、片山さんの度胸は立派です。

 過去の議事録からして、岡田さんの前で「イオングループ」の名前に触れたのはこれが初めてと見られます。

【追記 2015年9月23日 午後5時】

 国会議員資産等報告書(衆議院庶務部が公開、インターネット上ではそれを伝える新聞記事で概要)によると、岡田克也さんのイオン持ち株数はその後、まったく変わっていません。ただ、同社は増配を続けており、オープンデータどうしをかけあわせると、岡田さん個人が受け取る配当は年間300万円(税引き前)となっているようです。時価は2億円を超えました。ただ個人名義の持ち株は別として、アベノミクス株価官製つり上げで、イオン株の価値が高まり過ぎることは、「近い将来」を考えると、ハッピーなこととも言えなさそうです。

【追記おわり】
以上です。


小沢一郎さん「アンビリーバブルだ」「(岡田克也さんは)普通の政治家の感覚として考えられない」

2012年03月21日 06時13分09秒 | 岡田克也、旅の途中

 民主党元代表の小沢一郎さんが2012年3月21日付の読売新聞のインタビューに答えました。

 このなかで、「野田政権というよりは、民主党政権に対する厳しい国民の意識を謙虚に受け止めないと民主党はなくなってしまう。このままでは政権交代可能な仕組みが定着せず、カオスのような状況になることを非常に心配している」と語りました。

 その上で、岡田克也副総理が自民党衆院幹部に大連立を打診したとされる報道について、「報道が事実なら、党内で一生懸命しているときに、まとまりそうもないから他党と連立したいという話をするのは、普通の政治家の感覚としては考えられない。アンビリーバブルだ」と述べました。

 離党することについては「国民に約束したことを忘れた方が出ていくのが普通だ。大連立をしたいのであれば、それに賛同する人たちを引き連れてやればいい。民主党全部を引きずっていくのはかなわない」としました。

 野田佳彦総理との膝詰めでの会談については、「党大会への参加も認められていない。会う立場ではない」と話し、党員資格停止中であるので首相に会わないとしました。

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