宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

新・児童手当法案が衆院通過 中小企業金融等円滑化法1年延長法案も成立確実

2012年03月24日 10時23分26秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

【2012年3月23日(金) 参院本会議 衆院本会議】

 さて今週は日切れ法案を中心にようやく法律・法案が成立、衆院通過し出しました。また直近の民意である「衆参ねじれ」によりねばり強く、税収と手当のバランスを修正合意した法案が衆院を通過しています。3党協議・与野党協議が順風満帆となってきました。まさに「消費税の前にやるべきことがあるだろう」を国会そのものが体現しだしています。

 参院本会議では、「東日本大震災の被災者のための法テラス特例法(180衆法4号)」の審査結果を西田実仁・法務委員長(公明党)が報告。付帯決議つきで全会一致で可決、成立。

 次に「特殊土壌地帯の災害防除と振興の臨時措置法(特土法)を5年間延長して65年間にする法律(180衆法3号)」と「鳥獣による農林水産業の被害防止の特措法(180参法11号)」の審査結果を小川勝也・農水委員長(民主党、1995年新進党公認で初当選)が報告。後者の法律には金子恵美さん(民主党羽田グループ)ら提出の付帯決議がついています。全会一致で可決、成立しました。

 このほか、議院運営委員長である自民党の鶴保庸介さんら提出の「北朝鮮のミサイル発射予告に抗議する決議」が採択されました。

 ◇

 衆院本会議では11議案が通過しました。

 警察庁が書いた「不正アクセス防止法改正案(180閣法37号)」が荒井聰内閣委員長(民主党)の報告通り、全会一致で原案通り可決され、参院に送られました。

 毎年出ている「関税定率法改正案(180閣法15号)」が全会一致で付帯決議付きで可決しました。このほか、金融庁マターでは、海江田万里財務金融委員長は3法案を報告。

 「中小企業金融等円滑化法(亀井・大塚法、零細企業と住宅ローンのリスケジュール法)を1年延長する法案(180閣法4号)」が可決。全会一致なので年度内成立は確実。けっこう使い勝手がいいようなので、興味がある人は現在の取引先金融機関からチラシをもらってはいかがでしょうか。このほか、「銀行の持株を買い取り支援する法律を5年延長する法案(180閣法5号)」が賛成多数で可決。なぜ亀井・大塚法が1年延長で、銀行の持株買い取り支援法が5年延長なのか。大企業優先の政治のように思えます。このほか、「株式会社企業再生支援機構法を当面2~3年延長する法案(180閣法47号)」は修正案が全会一致で可決しました。このように修正可決が今国会では増えています。

 沖縄本土復帰40周年を迎えます。このため、次の10年(50周年)に向けて、2つの法案の修正協議が行われました。「沖縄振興特別措置法を改正して10年延長する法案(180閣法24号)」と「沖縄の米軍用地の跡地の返還に伴う特別措置法を改正して10年延長する法案(180閣法25号)」です。

 
[写真]沖縄関係2法案修正の与野党実務者協議のようす、自民党参院議員・島尻安伊子さんのブログから。

 上の写真のように、民主党で元沖縄担当内閣府副大臣の大島敦さんや地元沖縄4区の瑞慶覧長敏(ずけらん・ちょうびん)さん、自民党の川口順子さん、公明党の遠山清彦さん、社民党の山内徳信さんら、衆参与野党の実務者が修正しました。そのため全会一致で可決しました。ただし、国民新党幹事長で沖縄1区の下地幹郎さんが沖縄・北方特別委員会(福井照委員長)が反対したいと受け取れる発言をする場面もありました。沖縄振興一括交付金を県庁が基金化して複数年度使えるようにした修正に反発したようです。地元の事情は分かりませんが、そもそも論としては、「基金化」はできる限り避けるべきだと考えますが、それも含めて飲み込むのが国会における与野党合意のあり方だと考えます。成熟した議論が必要です。

 本会議に戻ると、中山義活・経済産業委員長(民主党)が「ケイリンおよびオートレースの底上げ法案(180閣法21号)」を報告し、可決しました。こういうのは政治が対応するのが早いです。

 続いて、「児童手当法の改正案(180閣法10号)」がかかりました。池田元久厚生労働委員長(民主党)が政府原案と修正案を説明。修正案は「名称を児童手当に戻す」とし、民自公や社民党などの賛成多数で可決しました。参院で過半数を上回っているので、年度内に成立し、児童手当はすべての0歳児から中学生までに支給されることが恒久化しました。ここだけ、討論になり、民主党の長尾敬さんが「2009年マニフェストに沿った修正だ」と賛成。おなじく賛成の公明党の古屋範子さんは「1972年以来の児童手当に国費を上乗せしたものが子ども手当に過ぎなかった」と批判しながら、新法案に賛成しました。なかなか分かってもらえませんが、直近の民意とは2009年8月30日の衆院選マニフェストではなく、2010年7月11日の参院選で示された「衆参ねじれ」が直近の民意でした。これに伴い修正ができたわけです。このことについては、参院での段階などをみながら、追ってまたエントリーにしようという考えを持っています。

 同じく日切れ法案として、伴野豊・国土交通委員長(民主党)が「都市再生特別措置法の改正案(180閣法22号)」を報告。この法案は、震災対策を盛り込んだもので、対応の遅さを感じます。なお、委員会採決の直前に国交相が参院予算委員会に出かけて、1時間ほど休憩になるという手際の悪さがありました。こういうことはよくあることで、与野党議員とも少し我慢して勉強したりおしゃべりしたりする時間に充ててもらいたいものです。ただひと言。伴野さん、小泉俊明・筆頭理事ら筋の悪い民主党議員は消えていただきたく存じます。

 なお、この日は、小宮山洋子厚労相が参院本会議、衆院本会議に出席し、参院予算委員会に遅れて休憩する出来事もありました。ただ、こういうことは昔からよくあることなので、野党もなるべく融通を利かせた質問をしてほしいと考えます。昔の議事録でも、予算委員会と大蔵委員会が同時に開かれていて、池田勇人大蔵大臣が行ったり来たりする様が議事録に残っていて楽しく感じることもあります。大臣も「ちょっと予算委員会に行かないといけないので、私への質問は早めにまとめていただけますか」という融通があっていい。今国会の衆院憲法審査会で民主党の山尾志桜里さんが「私は質問通告をしていなかったので先に質問事項を言います。それから意見を述べます」としたところ、すぐに答弁をもらえたことがありました。大変ポイントを突いた質問で、その日十数人が質問したなかで、山尾さんの7分間がイチバン短かったのに、新聞記事になったのは山尾質問だけでした。山尾さんのことを悪く言う同期生が多いんですが、山尾さんは残る。

 本会議場に戻って、最後に原口一博・総務委員長が「放送法に基づく平成24年度NHK予算の承認の件(180承認2号)」を報告し、承認を得ました。この委員会審議の中で、民主党の杉本和巳さんが、英国留学時の話として、「大臣の話の後には、必ず影の大臣のインタビューがBBCでは付いていた」として、NHKにもそうするように迫っていました。NHK専務理事はいかにも政治が分かっていない風情でした。自民党政権中心の報道による国益の毀損の責任をNHKは負うべきです。ちなみに杉本さんは私がよく散歩している隣町の出身だと最近知りました。公募で愛知10区(一宮市など)にすべてを投げ打って落下傘で飛び込んだようです。2007年12月の長城計画・交流協議機構にも参加されていたと存じますが大所帯でしたから、今度ぜひお話をうかがってみたいです。

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 参院本会議では採決の前に、3月8日に衆院を通過済みの「労働者派遣法改正案(174閣法60号)の衆院修正案(岡本充功さん=民主党ら提出)」の趣旨説明と質疑がありました。議院運営委員会の判断で重要法案は本会議で趣旨説明を聞いてから委員会に付託します。このことを「つるし」て「おろす」と言います。3月8日に法案を受け取ってから23日まで参院議運委(与党12委員、野党13委員)がつるしていたことになります。この法案は、派遣業者のピンハネ率を公開するほか、これまで違法派遣だった人をみなし雇用にすることができる救済措置が盛り込まれたものです。衆院通過ですぐに成立するのかと思いましたが、政権交代しても、労働者は辛いものです。この答弁に小宮山厚労相がいて、それから衆院本会議場で児童手当法の審議に参加していたので、参院予算委に遅参しました。秘書官の連絡が悪かったのかもしれませんが、しかたありません。

 とはいえ、民自公をはじめ、与野党協議の体制が整いだして、法案の仕上がりが加速してきた感じがします。民主党の輿石東幹事長がだらしないですから、鬼のいぬ間に積極的に修正協議をして、どんどん修正案提出者、答弁者や付帯決議提出者、朗読者に名を連ねたらいいと考えます。議事録に名を残すのが現職の何よりの選挙運動です。政務三役になるより先に、参院にいって答弁者になるチャンスです。また、実務者協議といっても新聞記者はとても手が回らない状況でしょうから、「私が今回実務者になりました。公明党はだれだれ先生、自民党はだれだれ先生です」とどんどんブログなどで発表すればいいと思います。そのうえで、協議結果は委員会で発表すればいいのではないでしょうか。第180通常国会を召集前にマスコミは「消費税国会」と名付けましたが、中盤にさしかかっても法案が出ていませんから、消費税国会にはなっていません。消費税を錦の御旗に立てて関心を呼んでおいて、その間に、どんどん法案を衆参与野党で仕上げていくことが、どの党の現職にとってもメリットになるでしょう。

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