[写真]自民党衆院議員の吉野正芳さん。
〈平成24年度当初予算が衆院で可決 民主党結党以来続いた「年度内成立」の記録が途絶える〉
平成24年度総予算が2012年3月8日(木)の衆院本会議で可決し、参院に送りました。民主党、国民新党、新党大地・真民主の賛成多数で可決しました。ただし、この3党は参院ではわずか110議席(過半数は121)しかなく、新党改革などの協力があっても、参院での否決は確実。日本国憲法60条の「30日ルール」を使うにしても、4月6日(金)の衆院本会議後になります。同日は恩給支給日で、それに間に合わず、暫定予算編成に追い込まれることになります。
なお、自民党提出の組み替え動議(政府が予算案を撤回のうえ、政府に編成替えを求める動議)に対して、公明党が反対するというハプニングがありました。公明党の「明日につなぐ力」を感じました。
現行憲法により、国会が「審議」することになってから最長の13年連続だった民主党結党以来の当初予算の年度内成立の記録は消えました。結党以来フロントベンチ(野党第1党から与党のいずれか)に座り続けた民主党。「自民党」対「抵抗野党・社会主義政党」の55年体制から、健全野党・自由主義政党による二大政党政治をめざした民主党の歩み。第1次与党期の3度目の本予算で記録は途絶え、新しいステージを迎えました。でも、第1次与党期の3度目の本予算で栄光が途絶えたのは、大人になるにはいい時期かもしれません。
もう民主党は子供ではありません。もう若くありません。理想と弁舌だけの時代は終焉しました。これからは、震災後日本で、国会と内閣を連動させて結果を残していく。限られた有能な与党議員と有能な野党議員とともに、あっという間に歴史をつくっていくでしょう。すべての議員は結果を出すか。さもなくば「卒業」するか。それのみ。
〈6党修正の福島復興再生法案、いわば「吉野法」で、吉野正芳代議士の精神を見習うべきだ〉
衆院本会議では、東日本大震災復興特別委員会(古賀一成委員長)で進んできた修正協議を反映した「福島復興再生特別措置法案」(180閣法23号)が全会一致で修正可決。これは6会派(民主党、自民党、公明党、きづな、国民新党、新党日本、たちあがれ日本の7党6会派)が修正案を提出し、付帯決議を10党が提出し、政府原案、議員修正案とも全会一致で可決しました。いわば自民党議員である吉野正芳さんの名前をとって、「吉野法」と呼ぶべきではないでしょうか。福島県民の苦難は続きますが、国の苦難、国難も続きます。吉野法が6党修正、9党賛成です。福島にできて日本全体ではできないというのはおかしな話です。他の法案が同様にできないわけがありません。ドンドン法律をつくっていっても、第46回衆院選の定数は480で変わりありません。仮に法律工場が滞れば、維新の会が100議席をとって、事実上の定数100減になるかもしれません。
自民党の三ツ矢憲夫さんは衆院本会議での予算の討論演説で、「最近の世論調査のトレンドは『支持政党なし』だ。それは普天間、一票の格差の問題だけを見ても明らかなように、決められない、前に進まない政治全体への批判だ」として、「早く党内をまとめて一体改革の法案を出して欲しい。ならば議論する」としました。三ツ矢さんは「「ローマは一日にしてならずと言うが、一日にして崩壊してしまった。勢力のある頃にドンドン版図を広げたからだ」「どこかの国の今の姿に似ているではありませんか」とし、「私たちは正直に語り、一人一人の自立を促すべきだ」とし、「政治の信頼は地に墜ちている。(民主党政権は)言うこととやることが違うからだ」と語りました。
〈衆院に残った特例公債法案と年金交付国債法案をテコに衆参ねじれで歳入歳出パッケージ成立をめざすべし〉
中盤国会は、44兆円の歳入を確保する特例公債法案(180閣法2号)、2・6兆円の年金交付国債を裏付ける国民年金法改正案(180閣法26号)の衆院での修正審議などを通じて、衆参ねじれを力に変えるチャンスとなります。
きょうの衆院予算委の討論でもヒントがありました。公明党理事の高木陽介さんは反対討論で次の4つの理由を示しました。①マニフェスト総崩れ、②年金交付国債など「粉飾的な手法」、③3党合意の政策効果の検証ができていない④デフレ円高脱却への戦略がないーーの4点です。これを逆に考えれば、年金交付国債を赤字国債に変え、特例公債法案の総額を修正し、国民年金法改正案を撤回する。デフレ円高脱却に向けて公明党の支持者に多い零細・個人事業者への金融支援策などを本予算で増額したり、1次補正での追加を約束したりする。子どものための手当の名称を「児童手当」にする。こういった修正のパッケージにより、本予算を参院で修正したうえで両院協議会の協議案を全会一致で可決したり、平成24年度特例公債法、改正児童手当法を修正可決する。まるごとパッケージで歳入歳出を国会で見直し、国会支持率を回復する。そのためには、暫定予算は50日間くらい組んで、本予算成立が5月にずれ込んでもかまわないと考えます。
8日の衆院財務金融委員会では公明党の竹内譲さんが安住淳・財務大臣との質疑を「最後に国債が跳ね上がるとか、長期金利が暴落するということは慎んだ方がいいんだろうと申し上げて終わります」と財務大臣の答弁をたしなめました。この後、野田佳彦首相が衆院総務委員会から移動してきて、再開。竹内さんは「自民党の谷垣総裁に限らず、我が党の山口代表とも会ったらいいんですよ」と民主党と公明党の党首会談を呼びかけました。これについては、野田さんは「谷垣さんとは会っていません」と言わざるをえませんでした。
野田さんは緊張の連続だったためか、ユーモアを交えて答弁しまい、自民党シャドウ財務大臣の西村康稔さんから「冗談交じりで不快な思いをしました」と叱られました。これは昨年6月15日に野田財務大臣が自分のクビと引き換えに平成23年度の特例公債法案を通して欲しいという趣旨の発言をしていることから、「総理の覚悟を問う」との質問でしたから、総理はいけません。
〈地球温暖化対策税が国税改正法で年度内成立確定、「福山・岡田条項」、野党時代の地球温暖化対策本部の議員立法が一部実現へ〉
衆院本会議では、平成24年度の国税改正法案(租税特別措置法など改正案)と平成24年度の地方税改正法案が民自公などの賛成で通りました。このなかで、地球温暖化対策税が通りました。石油石炭税に上乗せするもので、石油1キロリットル2800円、液化天然ガスなどが1トン1860円、石炭が1トン1370円、ことし10月から段階的に上乗せされます。最終的には2500億円の税収になります。曹達業の発電用は除外になります。これは第169通常国会に民主党が提出した「地球温暖化対策基本法案」(169参法25号)に盛り込まれていたもの。野党時代の民主党には、幹事長の下、政調会の上にある「本部」という政策・国民運動の組織があり、地球温暖化対策本部は発案者の岡田克也本部長・福山哲郎事務局長が運営していました。
この2人は政権交代後に外務省の大臣、副大臣として、国連に行き、鳩山由紀夫首相の気候変動枠組み条約締結国会議での「1990年比で2025年の二酸化炭素排出量を25%削減する」などとした鳩山イニシアティブ演説の草稿を書きました。法案は閣法として、小沢鋭仁・環境大臣が答弁にあたり、第174通常国会で、衆院を通過しましたが、参院環境委員会の審議中に、鳩山首相・小沢一郎幹事長の「抱き合い心中」の混乱で廃案になってしまいました。その後、原発爆発で前提条件が大きく変わりました。小沢環境相は地球温暖化対策税について、税制改正法案に移してもいいという趣旨の答弁をしていました。こういった形で実現しました。民自公賛成ですし、日切れ法案なので、年度内の成立は確実です。「二酸化炭素に色を付ける」ことで、排出量抑制へのインセンティブをつくるとともに、税収は目的税として使われます。いわば平成24年度国税改正法の「福山・岡田条項」に関しては、衆院財務金融委員会で付帯決議がつきました。民自公を代表して岸本周平さんが提出し、「地球温暖化対策税については現下の厳しい電力需給に配慮し、森林の涵養などの諸施策も推進すべきだ」としました。国税改正法案は、共産党が「研究開発(R&D)減税は大企業優先の政治であり認められない」として反対した共産党も付帯決議に賛成。全会一致で付帯決議がつきました。
国税改正法案と地方税改正法案が自公の賛成を得られたのは、初めから賛同を得られる内容だけを法案化していたからです。一方、国民年金法改正案について小宮山洋子厚労大臣は「国会で協議して修正して欲しい」という趣旨の答弁をしています。ヒラバの国会で修正するというのもあってしかるべきです。ただ震災後国会は時間に余裕がありませんから、日切れ法案は財務省や総務省がうまくつくったという面もあるでしょう。公明党の坂口力初代厚労相は6日の予算委で「それぞれの党がつくった案だから、かわいいのは分かる」としながら、最低保障年金案を取り下げるよう求めました。これも公明党の100年安心プランをもとにして、マクロ経済スライドがあるうえで最低保障機能を高めるようにすれば、それと引き換えに公明党が「消費増税法案」に賛成してくれるかもしれません。税制改正は年度内に済みそうですから、暫定予算で防御ネットを張って、特例公債、基礎年金の2分の1、年金制度の抜本改革案で合意し、消費増税準備法案を通す。そして、予算も修正して可決成立させ、衆議院を解散するというのがベストに思えます。だから、定数是正は今すぐやらないといけないと私は考えています。
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