宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

岡田克也さんは学習する 昨年より3ヶ月早く大連立をお願い

2012年03月18日 15時59分44秒 | 岡田克也、旅の途中

[写真]野田佳彦首相、岡田克也副総理、藤村修内閣官房長官(左上)の“官邸新進党三羽烏”

 岡田克也さんは学習します。

 岡田さんは昨年の6月5日(日)、不信任政局(同月2日採決)終局の願いも込めて、ダメもとで、フジ「新報道2001」で二大政党幹事長対談で、石原伸晃さんに「大連立」に言及したところ、「テーマ付き、期限付きならいい」という思わぬ答えに遭遇し、この後のNHK日曜討論の各党幹事長談義で、二大政党幹事長がアクセル全開で一気に3党協議(民主党、国民新党、自民党、公明党)の枠組みをつくり、6月22日(水)の「辞任3条件」、8月9日(火)の「3党合意」を実現し、「スピードが遅い」との衆参与野党全体への批判の中、会期末(8月31日)まである程度の成果を上げました。それは第1次~2次補正予算および、復興債・復興特区・復興庁の3点セット、原子力賠償機構法、再生可能エネルギー特別措置法、そしてもちろん平成23年度の特例公債法などです。

[3党合意は今年度も有効、「自民党へのあいさつ」3ヶ月前倒しで通常国会活性化へ]

 岡田さんは、義経(菅直人首相)の尊厳(dignity)を守って花道を渡らせ弁慶としての役割を終え、飛び六方を踏んで、4ヶ月遅れで野田内閣に馳せ参じました。もちろん携えた勧進帳である3党合意は「高校無償化と農業の所得補償の政策効果の検証は平成24年度以降の予算に反映」し、「(年度に限らず)特例公債を発行可能とするための法案について速やかに成立させることとする。以上、確認する。」と書いてあるので、少なくとも第45期衆議院の任期中は有効だということになります(岡田見解)。

 岡田さんは学習する。去年の通常国会より3ヶ月早く、自民党に大連立を打診しました。もちろん、昨年のようにテレビ対談中というのは、これは、岡田さんと伸晃さんが同期で、政治改革仲間で、非自民でずっと貫いた岡田さんと、自民党内でサンドバックになりながら改革を貫いた仲だから許されたもの。ことしは失礼がないように、3月上旬から自民党幹部をあいさつ回りに出向いています。では、岡田さんは昨年同時期は何をしていたかというと、震災前だからのんびり。というわけではありません。大統領(民主党クリントンさん)と議会(共和党ギングリッチさん)がねじれた米国会をお手本に、シャットダウン(予算関連法未成立時の国の行政機関の一部閉鎖)を調べたりしていました。さらに社民党幹事長の重野安正衆院議員と「衆院での3分の2ルール」を模索していましたが、2月17日(木)に新会派を自称する小沢グループ比例単独17人による会派離脱という憲政史に残る蛮行で、国会中が茫然自失としていた時期です。リーダー格の渡辺浩一郎さんは「これから予算書を精査して予算の賛成、反対を決める」と言っていましたが、その後「まさか大震災が起きるとは」と記者団に述べたそうです。渡辺議員は天の戒めで事実上政治生命を終えました。

[野田毅さんが「自民税調会長の手順書」で小沢切りを要求]

 
[画像]質問する自民党税調会長の野田毅さん、2012年3月6日(火)、衆議院インターネット審議中継。

 元新進党税調会長で現在は自民党税調会長の野田毅さん(熊本2区総支部長)は、3月6日(火)の衆院予算委で、野田総理に「固有名詞を出すと何ですが、小沢グループがいるじゃないですか。民主党からたもとを分かつ腹構えが総理にあるのですか」と迫りました。そして、パネルを使って、

1 マニフェスト(2009年小沢詐欺フェスト)を撤回・謝罪する
2 与党内をまとめる(まとめられない場合の対応を明示する)
3 野党に要請する

 という「物事の順番」(自民税調の手順表)を新進党の後輩である総理に諭しました。

[1996年衆院選での荒唐無稽な「小沢詐欺フェスト」]

 野田毅さんは第41回衆院選では新進党政審会長でした。この選挙で野田佳彦さんは落選しました。

 このとき、小沢一郎党首、野田政審会長、坂口力政審会長代理、岡田克也副幹事長ら執行部の96マニフェスト(小沢詐欺フェスト)は次のようなものでした。

1 消費税の5%への引き上げ準備法は凍結し、3%に据え置く。
2 所得税と住民税は半分にし、法人税も安くする。
3 赤字国債を大量に発行する。
4 公共事業を10年間、毎年度5兆円ずつ増額する。
5 名目5%成長を実現する。
6 10年後(2006年)に消費税を10%にする。
7 10年間に発行した赤字国債を全額償還する。

 この選挙の自民党(橋本龍太郎総裁)の総括として、山崎拓政調会長は選挙の総括として「新進党がばかげた非現実的な案を出したから自ら負けてくれた」、与謝野馨政調会長代理は「小沢プランをやったら10年間で300兆円の赤字国債を発行することになっただろう」と当時の報道などで語っています。

 新進党副幹事長だった岡田克也さんは6日の記者会見で「記憶は定かではありませんが、私にとって3回目の選挙、新進党での選挙は、経済政策が問われたんですね。ですから、消費税というよりは、かなり大型の予算を組んでやると、そういう政策で我々は戦った記憶がございます」と敗因を振り返っています。そのうえで上の方にも書いた、「自民税調の手順表」については「特にコメントはございません」と述べました。

[昨年はゴールデンウィーク明けに小沢さんが森さんら自民党と密通]

 昨年の5月20日(金)から6月1日(水)の2週間、菅内閣不信任案(自民党、公明党、たちあがれ日本3党協同提出)に関して民主党の小沢一郎さんと小沢グループが同期の自民党の森喜朗さんと密通し、造反予定者の人数を連日自民党に流していたことが、「NHKスペシャル|証言ドキュメント 永田町 権力の漂流」で、森さんや、第177通常国会の自民党国対委員長だった逢沢一郎さんの証言(森・逢沢証言)で明らかになっています。具体的に、どういう文書に誰が署名したかという情報まで流れていました。民主党にとっては、許し難い反党行為です。一方、自民党と公明党も小沢グループと付き合って損をしたということでしょう。谷垣禎一総裁はこれにより求心力を失い、ことし9月の再選が絶望的になっています。また公明党幹部も1週間ほどは、地方議員・支持者に平謝りでした。

 さあいよいよ小沢一郎さんの息の根を止めるときが来ました。4月26日の司法による判断の前に、私たち国民有権者が新進党を解党した小沢一郎さんを裁かねばなりません。

[首相官邸に新進党三羽烏がそろったのは初めて]

 現在首相官邸には、野田総理、藤村官房長官、岡田副総理の「官邸新進党三羽烏」がいます。総理と官房長官がともに新進党出身者なのはこれが初めて。また政府・民主党三役会議メンバーで元自民党衆院議員なのは岡田克也さんだけですから、岡田さんが自民党を回るのは当然です。岡田さんは、1993年に自民党党紀委員会から除名処分になっていると思いますので、自民党本部を訪ねることができませんので、議員会館を回っています。その後、面談者が自民党本部に行き、谷垣総裁らに報告するというケースもあるようです。

 新進党官邸三羽烏は当選5・6・7回生で、54歳・58歳・61歳です。政界では若い。

 三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)。

 震災前に私は歌舞伎座でこの三人吉三(さんにんきっさ、と発音する方が多いようです)を見たことがあります。これは、超大物歌舞伎俳優の後継者(息子)の仲でも人気のある人を選んで、「あの3人が異色の共演」というようなプロデュースの公演で使われることが多い演目。このため、アフターファイブになる最後の演目になる傾向があり、おそらく銀座周辺勤務も含めた若い女性客が目立つように思います。私が見たときは、片岡孝太郎、尾上松緑(おのえしょうろく)、市川染五郎の「三人吉三」でした。

 「三人吉三」は幕末に書かれたときは当初不評で長く日の目を見ることがありませんでした。国難の退廃的な雰囲気が、明治維新の熱気に押されたようです。財源を求めて思案に暮れる田舎芝居の女役崩れの「お嬢吉三」は野田さんが適役です。野田さんは「無税国家論」を提唱する松下政経塾出身なのに国益のために消費税増税準備法の成立をめざしています。それは「お嬢に転身」に比べればたいした「転身」でもありません。

 苦労した「お嬢吉三」野田さんを駕篭からうかがっていたのは「お坊吉三」。それは早くから野田さんの能力を見抜き、幹事長代理に起用したり、本会議演説を譲ったりしていた岡田さん。「お坊吉三」は御家人崩れのお坊ちゃんなので、イオン崩れのお坊ちゃんの岡田さんがはまり役です。

 そしてその2人をまとめるのは、人生経験が長い、住職崩れの「和尚吉三」。これは藤村さん。

 「ここで出会い、同じ名前なのも何かの縁」と義兄弟の契りをかわした3人は、追っ手を逃れて3人揃って舞台から去り、幕を閉じます。とにもかくにも消費増税準備法を成立させる。もちろん、有権者全員が支持することはありませんから、必ず辛い目に3人はいずれ遭います。ひとまず義兄弟として、逃げ切るのみです。いずれ、衣装と化粧を直して、「二人のドラえもんと一人のフランケン」という芝居でもやればまた人気が出るかもしれません。

 藤井裕久さん、野田毅さん、斉藤鉄夫さんの民自公政調会長も、3人とも結党から解党まで新進党員でした。これも何かの縁です。

 私が激動の新進党史で得た教訓は、政治家同士は親友になれない(羽田vs小沢の望まぬ一騎打ち)、それと苦しいときに党を離れた人は大成しないと言うことです。とくに小選挙区というシステムの変化に対する基礎的知識と想像力、対応力、選挙区をめぐる行きすぎた執着心があった人はだいたい消えていきました。そのときに似た歴史的局面を感じています。とにかく、「離党」というのはこれはまず後々に評価されることはないでしょうね。比例単独の人が離党して選挙区を得て第46回総選挙で当選しても、その次で大敗すると思いますよ。

 それにしても基本的な経済学を学んでいない政治家は当選回数にかかわらず悲惨の一言。まあもう答えは見えている感じがしますが、しっかり緊張感と日程感と時代認識と国家観をもって、前に進みましょう。情熱ダッシュです!


岡田氏、大連立を打診 自民幹部は断る(朝日新聞) - goo ニュース

 岡田克也副総理が今月上旬、自民党幹部と会談した際、民主党との大連立を持ちかけていたことがわかった。自民党幹部は衆院解散を求めてこれに応じず、物別れに終わったという。
 岡田氏は会談の際、自民党側に消費増税法案や赤字国債発行を可能にする特例公債法案への賛成を求める中で、大連立に参加できないかも打診した。だが、この幹部は「解散が先だ」などと取り合わなかったという。岡田氏は今月に入り、複数の自民党幹部を回り、消費増税法案などの成立に協力を呼びかけていた。

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