[写真]前厚労大臣の細川律夫さん。
一体改革特(中野寛成委員長)の質疑が2012年5月17日(木)スタート。午前中与党の質問があり、NHKで中継されました。総理がG8サミット(今回はロシアが大統領欠席)に出席しますので、来週月曜日から再開し、現時点では木曜日まで連日開かれることになっています。
「議論から説得へ」ーー一体改革関連法案は、政治家やオピニオン・リーダーとして、プレゼンテーションの能力が問われています。
民主党は平成24年度予算の審査と同様に、政調会長の前原誠司さんからスタート。「総理は政治生命をかけると言っている」と共通の意気込みから説き起こし、税収や国債リスクをパネルを使って説明しました。税収構造のパネルで、細かい税目まで入っていたのは今後の「説得」の作業では見直しが必要のように思いますが、国債の金利変動リスクが、都銀より地銀の方が大きいという数字は初めて知り、驚きました。そして、景気弾力条項ともいえる「社会保障の安定財源を確保するための消費税改正法案(180閣法72号)」の附則18条を念頭に白川方明・日本銀行(日銀、BOJ)総裁を呼び、「4月(先月)は官邸に4回行った」と政府と日銀の協調を言い張りました。
附則18条は次の通りです。
(「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成二十三年度から平成三十二年度までの平均において名目の経済成長率で三パーセント程度かつ実質の経済成長率で二パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
2 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第二条及び第三条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
続いて、前厚生労働大臣の細川律夫さん(埼玉3区)が登場。
衆院本会議では長妻昭さんが質問に立っていますので、民主党政権の歴代厚労相(長妻、細川、小宮山洋子現大臣)は全員がすでに登場しました。
在任中は、恵まれないお子さんの施設にランドセルなどを送る「タイガーマスク現象」があった細川さん。私はいまだにタイガーマスクは細川さんだったのではないかと勘ぐっています。ベルリンの壁崩壊後の1990年初当選の土井チルドレン。社会党でありながら、労組出身でない弁護士で、仙谷由人さん、筒井信隆さん、松原脩雄さん、伊東秀子さん、宇都宮真由美さんらが話題になりましたが、きょうまでコツコツと衆院での議席を守り続けてきたのは、律夫さんなんですね。3年と1日前の代表選では「我ら同期生!」として、岡田克也さんの決起集会でマイクを持ち、仙谷由人さん、鉢呂吉雄さん、土肥隆一さん、岡崎トミ子さんらを呼び寄せました。まさにベルリンの壁崩壊もはやイデオロギーではない政治の1期生として岡田さんの背中を押しました。敗北後の残念会で、岡田さんは「きょうここにいらっしゃるみなさんには必ずお礼をしていきたい」と述べました。このとき私は「政権獲得後のポスト配分のことだな」と思いましたが、岡田筋は「そんなことできるようならとっくに総理になっていますよ」とのことでした。しかし、私の思ったとおり。スターの長妻昭さん4期生が厚生労働大臣になりましたが、7期生の細川律夫さんは副大臣に。そして、厚労大臣に昇格。このときのメンバーのうち、参院1期生を除くと、現在党を守るため自ら離党中の土肥隆一さん以外は全員政務三役になりました。岡田さんが幹事長退任時に「政治的資源を使い果たした」と民主党最高顧問に退いたのはこういう意味です。
その細川さんは、「我が国の社会保障制度は、国連のWHO(世界保健機関)などから高い評価を受けているが、少子高齢化で曲がり角に来ている」と指摘。
3年と1日前は選対本部長だった現総理の野田佳彦さんは「国民皆保険のおかげで日本は世界有数の長寿国となった」「国民皆年金のおかげで年金だけで生活している高齢者が多い」と日本の社会保障を絶賛。でも、それがほころんだら・・・?
一体改革担当大臣の岡田さんは「いろいろ問題はあるにしろ、社会保障の骨格は維持すべきだ。ただ、国債に頼ってきた財源を消費税にかえて、資産のある高齢者にもご負担いただき、(若い世代が)働くことと子育てが両立しない、子どもを産むことをあきらめることがないように、消費税というかたちでご負担頂く」と一体改革に理解を求めました。ところで、突然クイズです!児童手当の財源に消費税を充てることができるかどうか?答えは、「子育て支援法案(180閣法75号)」の中に書いてあるので、大マスコミもよく読んで、記事にしていただきたいですね。それから、今後の報道で「消費増税法案を審議する~~」と書いていくと修正協議の報道に対応できないので、「一体改革関連法案」に表記を変えるべきでしょう。
細川さんに戻ります。子ども子育て新システム(幼保一元化・幼保一体化)のための総合こども園法案(180閣法76号)について、文科大臣の平野博文さんが第一委員室に。平野さんは「核家族化により、都市部と地方部では子育てのしかたや働き方に違いがある」とし、「(幼稚園と保育園は)それぞれの課題があり、その解決策として、子ども子育て新システム法案を(内閣府と厚労省とともに文科省が)提出した」と答弁しました。歯切れが悪いように思える平野答弁ですが、自民党政権では不可能な答弁。パナソニック労組出身の平野さんを悪く言う人もいますが、逆に言えば、パナソニック労組という安定基盤がある衆院議員だから言える発言です。政治家は私たち国民の生活をよくするために利用する道具に過ぎません。
きょうの審議では1993年日本新党初当選仲間の樽床伸二さんと野田総理の漫才のようなやりとりがありました。樽床さんは「基礎年金という言葉を日常会話で使ったことがない」とし、安住淳財務大臣も「日々の生活の中で基礎年金という言葉を使ったことはない」としました。樽床さん「今の執行部でイチバン年金に詳しいと私が思っている、民主党国対委員長の城島光力さんも日常会話で基礎年金という言葉を使ったことがないと言っている」とすると、小宮山さんが「年金受給者は老齢基礎年金という言葉を知っている」と反論。ここで、樽床さんは「国民年金の受給者には基礎年金とは、国民年金のことですと言えばいいんですよ」。これはその通り、樽床さんの庶民目線のこの指摘、小宮山さんは今後こちらの説明で「説得」をしていただきたい。そして、樽床さんは「揮発油税のことをガソリン税と呼んでいる。消費税という言葉も年金医療税という言葉に代えたらいい」と総理に差し向けると、野田さんは「国民福祉税という言葉を使ったが、うまく行かなかった」とお互いに1期生で支えた細川内閣を振り返りました。当時を知る人にとっては、心が通い合うエピソードでした。自民党の鴨下一郎委員、自民党政調会長の茂木敏充さんらの心もつないだかもしれません。
国民新党幹事長の下地幹郎さんは「私はこの法案は国民の理解を得られると思う」としたうえで、会期の延長に言及することが熟議の国会ではないかと総理に水を向けましたが、総理は「きょうから議論が始まったばかり」としました。
テレビ画面で明らかだったのは、樽床幹事長代行(各党協議会座長)が冒頭に「定数削減はできるという前提でみんなに呼びかけている」とヌケヌケと言ったときには、同僚議員がしらけた顔で見ていました。樽床さんはこのとき、同僚がどういう顔をしていたかを確認しないと、どういう生き方をするにしろ、彼の人生のためにならないと考えます。
国民福祉税構想のときの大蔵大臣で、民主党政権初代財務大臣の藤井裕久さんは、5月11日付の党機関誌「プレス民主」の3ページで、「明日への安心対話集会を(実際に8%に引き上げる時点である2014年4月まで)2年間続けよう」と党員に呼びかけました。鬼気迫るものを感じます。
細川前厚労大臣は、「平成22年度から平成23年度にかけての(国民年金?)保険料納付率も下がったようだ」とし、「年金の法案はぜひ成立させてほしい」と呼びかけました。1990年社会党当選のニューウェーブ弁護士でイチバン地味な細川さんの仕事ぶりを側聞するに、この言葉がイチバン説得力があったように感じた初日の審議でした。手応えは十分であります。
なお、衆院・倫選特(政治倫理の確立および公職選挙法改正に関する特別委員会)が同日(2012年5月17日木曜日)開かれ、欠員があった理事に逢坂誠二さんと阿知波吉信さんが補充されました。こういうところでも人が見られているな、と感じます。参考人招致の人選も決まりました。
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[お知らせおわり]
[写真]3時間の討論が終わりホッとしたところをスタッフの方に撮っていただきました。
3時間の政治討論番組に参加しました。土曜日放映です。
合計8人での政治討論番組で、他の方とは全員初対面でしたが、話を切り出すと真摯に聞いてくださいました。
放送はCS放送「スカパー!217チャンネル」の「日本文化チャンネル桜」で、2012年5月19日(土)の午後8時から午後11時です。
その後、インターネット放送の「So-TV」や「チャンネル桜」のYouTubeやニコニコ動画で公開されるようです。
タイトルは「日本よ、今・・・闘論!倒論!討論!2012(第265回)」の「新潮流はあるのか?!どうなる日本の政局」です。