2012年5月30日(水)の衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(中野寛成委員長)の散会後に、野党理事席にあいさつに訪れた岡田克也副総理を、自民党の伊吹文明筆頭理事が呼びとめ、岡田さんを質問者席(パネラー席)に座らせて、密談する光景がありました。
以下、衆議院インターネット審議中継からです。オレンジも丸囲みが伊吹さんと岡田さんです。
自民党理事と民主党理事、あるいは自民党執行部と民主党執行部の法案可決・成立に向けた修正協議が遅々として進まないことに業を煮やした伊吹さんが、政府側で修正に立ち会えない、岡田さんと法案成立にむけた話し合いをした可能性があります。
伊吹・岡田密談の効果が出てくるか、あす以降の審議で明らかになりそうです。
この委員会では、民主党1期生が続々と質問に立っています。よく勉強し、自分の子育て体験を話すなど好感が持てますし、経済観は同党ベテランを凌いでいるように思います。しかし、いかんせん政局観に乏しく、給付つき税額控除を繰り返し質問した民主党1期生に岡田副総理が終了間際に「簡素な給付措置もよろしくお願いします」と答弁するなど、落としどころが見えない状態が続いています。参議院自民党の問責政局も含めて、伊吹さんが岡田さんに直接働きかけた可能性があり、注目されます。
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[画像]自民党の松浪健太さん、2012年5月30日、衆議院インターネット審議中継から。
【衆議院社会保障と税の一体改革特別委員会 2012年5月30日(水)】
「年金など社会保障と税制」をテーマにした審議。「年金の最低機能強化法案」(180閣法74号)の中味の話がようやく進展しました。
無年金者対策の「保険料納付期間の25年から10年への引き下げ」については、与党・国民新党の中島正純さんが「10年だけ納めればいい、というモラルハザードになりはしないか」との懸念を表明。ところが、野党・公明党で元厚労副大臣の石田祝稔(いしだ・のりとし、いしだ・シュクネン)さんが「我が党は10年間を言ってきた。25年から10年への短縮を評価する」と述べました。社会保障と税の一体改革担当相で副総理の岡田克也さんは「自営業者が自分の判断で、国民年金に入らない、という考えもあった時代がある」と無年金者対策への理解の深さと内に秘めたやさしさを感じさせました。
その一方で、自民党は「自助→公助→共助」の新綱領をハッキリ打ち出しました。
大阪10区(高槻市など)比例の自民党の松浪健太さんは「生活保護は必ず受給者と自治体のせめぎ合いがある」として、「九州の自治体で、自民党政権時代は厳しかった」と述べました。北九州市の前市長で麻生内閣参与だった末吉興一さんの「生活保護北九州方式」。市役所の行政区域ごとに相談に来た人を窓口で追い返す人数を競わせたことを評価したと思われます。そして、「私たちも仲間内で、ジェネリック(後発医薬品)を使いたいと話している」としたうえで、医療費が無料の生活保護者と不公平感があるとし、「生活保護受給者はすべてジェネリック(後発医薬品)に強制すべきだ」と厚労相の小宮山洋子さんに提案しました。医療保険のように、年齢で「前期生活保護者と後期生活保護者、稼働できる方とそうでない方に分ける」ことも提案し、小宮山さんは「稼働できる方にはなるべく働いて欲しいという点は共有している」と答弁しました。そのうえで松浪さんは「次に政権をとらないみなさんが消費税を上げてもしかたない」と吐き捨てました。
このように松浪さんは「自助」という新綱領を全面に打ち出しました。松浪さんは冒頭、「政治の世界に入って10年。今ほど倦怠感を感じるときはない」と切り出しました。実は、松浪さんは産経新聞記者、私は日経新聞記者として同じ時期に横浜支局にいたことがあります。年齢は彼が上ですが、入社年次は同じ平成9年(1997年)でした。彼はは産経新聞では大阪本社採用ではなく、東京本社採用だったと思います。彼は県警担当が長く、一時的に横浜市役所にいるときに記者クラブの席が隣なので、話したことがあります。NHKに進んだ同級生がテレビに出ていてびっくりした、と語るフツーの人でした。大型バイクを乗り回していました。当時既に奥さんとお子さんがいらしたのではないでしょうか。すぐに青森支局に移り、その後、すぐに衆院議員になりました。すでに初当選から10年(途中落選あり)ということで、体の丈夫な健太さんは、「自助」を打ち出して、大阪と日本の閉塞感を打破して欲しいです。
自民党の元財務副大臣の竹本直一さんは、「なぜ土地は消費税が非課税なのか」と質問しました。私は初めて知ったのですが、「土地は取引であり、付加価値をもたらさないので消費税はかからない」(安住淳財務相)そうです。知りませんでした。そのうえで、竹本さんは「住宅も非課税にすべきだ」としました。岡田さんは「私は消費税はなるべく政策目的に使うべきでないと考えている」としましたが、竹本さんは食い下がりました。この辺も自民党の支持層がどういう人かうかがわせるものがありました。
年金の最低保障機能強化を語る以上、最終的なセーフティーネットである生活保護を語るのは不可欠です。再度、公明党の石田さんの質問。吉本興業の人気お笑い芸人次長課長の河本準一さんやキングコングの梶原さんをめぐる報道で、小宮山厚労相が「生活保護の10%削減」に言及したとされる件を問われ、小宮山さんは否定。「5年に1度の基準の見直しの年にあたり、自民党からご提案をうけている10%削減について話した」と最終決定でないことを強調しました。石田さんは「厚労相は生活保護の削減に一歩踏み出したのか」と確認したうえで、今国会で民主党参院議員の梅村聡さんが指摘した生活保護者の資産把握のために銀行の本店が一括照会するサービスについて問いただします。この中で、「きょうは全銀協(全国銀行協会)を参考人に呼ぼうとしたが、(理事会協議で?)来てもらえなかった」としました。そして、石田さんが「厚労相は全銀協に一括照会サービスを依頼したのか」と質問すると、小宮山さんは「受給要件についてより効率的で円滑な資産調査に有効なので、全銀協に前向きに検討している」との現況を説明しました。石田さんは「信金、信組、農協(JA)、漁協(JF)も対象か」とていねいに質問しました。これは公明党地方議員が生活保護申請のお世話をしているからではないかと感じました。それ自体は、違法でないばかりか、むしろ地方議員としての本来事務だと私は認識しています。
[画像]質問する石田祝稔さん、2012年5月30日、衆議院インターネット審議中継から。
[画像]答弁する小宮山洋子・厚労相、2012年5月30日、衆議院インターネット審議中継から。
このように、「自助」の自民党と「公助」の公明党で、公的扶助や年金の最低保障機能について、「生い立ちの違い」を感じました。
日本共産党の高橋千鶴子さんは、「(年金の最低保障機能強化法案で)遺族年金が男性も受給できるようになった(法案だ)。賛成する。そもそも、これまで男性が受給できなかったのは男女差別で、共産党は年金のあらゆる男女差別をなくす」と語りました。「共助」をうかがわせました。なお、高橋さんの質問に対して、小宮山さんは「平成24年度年金交付国債」が消費税増税を条件にしているからといって、来年度も発行するとは限らないと答弁しました。
各党の議論はだんだん深まってきています。そろそろ、法案の修正協議を始めても良い頃合いです。委員室の雰囲気はよく、衆参与野党協議会でもいいかもしれません。じっくり、しかし、確実に一体改革関連法を成立させましょう。
既存マスコミも、あすからは報道して欲しいです。
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野田佳彦首相(民主党代表)と小沢一郎さんの会談が30日昼過ぎ、行われ、社会保障と税の一体改革関連法案について、小沢さんは「今のままでは賛成というわけにはいかない」と答えたと報じられました。小沢さんが会談後に記者団に説明した、とのことです。
岡田克也副総理は、2012年5月30日(水)の衆院社会保障と税の一体改革特別委員会で「総理のぶれない姿勢が明らかになった」「党として合意形成をして、閣議決定して法案を出した」と答弁しました。公明党の石田祝稔さんへの答弁。
民主党主流派内では、「小沢グループ大阪城説」が出ており、小沢グループを大阪城に集めようという考えがあります。
小沢先生は筋を通すお方です。綸言汗のごとし。一国の総理に対して「賛成できない」と言った以上、その筋を通すでしょう。総理は勇気を出して、新進党を解党した小沢一郎さんを切るときが近づいてきました。
ところで、けさの朝刊では、朝日新聞、読売新聞とも、前日の一体改革特別委員会の記事がありませんでした。他の新聞はベタ記事で、「岡田副総理、75歳未満の医療費自己負担3割が限界」「最低保障年金の加入期間はゼロではいけない」と答弁したことなどが伝えられました。ただし、これらはすべて今回の法案ではありません。
朝日新聞デジタルの特設面も、月曜日で更新が止まっています。朝日朝刊の「教えて年金」の企画は国会ではなく、厚労省の官僚に取材して書いた物でしょう。開かれた国会で取材すればしがらみにならないのに、厚労省の役人に教えてもらいながら記事を書くと、しがらみができます。
国会のことを記事にしない理由は、いろいろありますが、能力的なこともあります。
いよいよ、私にしかできないところに来ました。私がやらずして、だれがやる。一体改革をしっかり見守っていきます。
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