渡辺恒雄の後継者、宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎幼保一元化の「子ども子育てシステム法案」審議入り 一体改革 第2の郵政法案か?

2012年05月10日 20時55分48秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]小宮山洋子・内閣府少子化担当大臣。

【衆院本会議 2012年5月10日(木)】

 一体改革関連法案の審議入り第2弾。きょうは幼保一元化(幼保一体化)を含めて子育て資源を効率的に配分する「子ども子育て新システム関連3法案」が審議入りしました。

 内閣府の法案で、内閣府少子化担当大臣の小宮山洋子さんが趣旨説明し、厚生労働省の小宮山大臣、文部科学省の平野博文大臣、そして野田総理、岡田副総理が答弁。

 民主党で元内閣府政務官の泉健太さん、自民党の野田聖子さん、馳浩シャドウ文部科学副大臣、公明党の池坊保子・元文科副大臣、日本共産党の高橋千鶴子さん、新党きづなの渡辺義彦さん、社民党の重野安正幹事長が質問しました。

 きょう審議入りしたのは、

 子ども子育て支援法案(180閣法75号)
 総合こども園法案(180閣法76号)
 子ども子育て新システムのために関連法56本を整備する法案(180閣法77号)

です。

 私はこの分野に弱いのですが、3時間強の趣旨説明と代表質問を聞く限りではだいたい分かってきました。来週から始まる衆院一体改革特別委員会(中野寛成委員長)の採決は早くても6月になります。それまでに、自治体の担当者、幼稚園経営者、地方議員はもちろん、子育て経験者の声もどんどん国会にぶつけて欲しいと考えます。現在子育て中の人にとっては、消費税率が改善され、システムが施行し、自治体と幼稚園経営者、民間の保育施設経営者らの利害が一致してから、待機児童ゼロと保育の質の改善につながっていきますので、子育て中の人は待機児童問題は自治体へ。子育てOBはシステムをつくる国会へ。どんどん意見を寄せて欲しいと考えます。

 というのは、多くの人は7年前の第162通常国会の郵政民営化法案をめぐる政局と解散総選挙について「あれはいったい何だったんだろう?」と思っているでしょう。当時の有権者の92~93%は今も日本の有権者です。

 幼稚園経営者と特定郵便局長は似たところがあります。

 なぜ、幼稚園はお寺や教会が多く、公立が少ないのか。幼稚園は学校教育法による義務教育をふまえて養護(保育)と教育をする施設です。これは、お寺や教会、大地主は土地があり、管理者もある一定の学識があるので、敷地内に屋根をかけて、幼稚園にしたという経緯があるからです。幼稚園経営者には議員が多く、地方議員に加えて、民主党・自民党の国会議員にも多くいます。一体改革関連法案の審議にあたる政務三役にも複数名の幼稚園経営者がいます。選挙が安定していますから。きょう、衆議院本会議場で思ったのは、480人中、保育所経営者、社会福祉法人理事(親が理事長)なのは、民主党の青木愛さん一人ではないでしょうか。

 待機児童ゼロの県は多くあり、その県の幼稚園経営者はむしろこぞって総合こども園になりたがるかもしれません。逆に一定の園児がいれば、預かり保育や0~2歳児保育には手を出したくないという経営者もいるでしょう。特定郵便局長は国家公務員なので、選挙活動はお父さん(OB)と奥さんがやっていましたが、幼稚園経営者は選挙活動は自由です。とはいえ、郵政民営化と違い、郵便貯金や共済はありませんから、ああいう狂気に満ちた会期末政局はないでしょう。しかし、私たち一等国日本国のリベンジとして、郵政民営化のように分かる人だけに議論を任せ、分からないのに雰囲気で有権者として行動しない。ですから、保育ママOBなどには、きょうの3時間の議事録や来週からの一体改革特での審議(年金、税制と3本立て)に興味を持って頂きたいと感じます。

 いろいろと記述には間違いがあると思いますが、お許しください。衆議院だけで100時間審議ということになっていますから、きょうは粗ごなし。全体像ということで。

 内閣府大臣の小宮山さんは「子どもは社会の希望、未来をつくる力であり、安心して子どもを産み育てることができる社会の実現は、社会全体で取り組まねばならない最重要の課題です」と切り出しました。 副総理・一体改革担当大臣の岡田克也さんの重野さんへの答弁によると、「保育の量の改善(待機児童対策など)に0・4兆円、保育の質の改善に0・3兆円の消費税」を使います。おおよそ消費税0・3%ぐらいに相当する金額です。消費税増税時に、子ども子育て新システムがスタートし、「人生前半の社会保障を強化するため消費税をあて」(少子化相)、「未来への投資」(野田佳彦首相)とします。

 幼稚園は希望すれば総合こども園になります。保育所はすべて総合こども園になります。総合こども園、継続する幼稚園、届け出保育施設を「こども園」と呼びます。現行の児童福祉法第24条の「市町村(基礎自治体)は保育の責任を負う」と改正。保護者に直接お金を給付し、市町村はこども園の配置を計画し、地域の偏在性をなくし、保護者に紹介します。個人立幼稚園や、総合こども園になりたくない幼稚園も「こども園」の括りになり、保護者への給付があります。これがどうやら今回の法案のミソのようです。さらに家庭内保育、小規模保育、居宅訪問型保育、事業所内保育、さらに0~2歳児の地域型保育にも、給付があります。そして児童福祉法24条の「保育の義務」から逃れた市町村ですが、野田総理の泉さんへの答弁では、「市町村は管内の施設や利用状況を選択し、情報を把握し、利用調整ができます。障害児などの条件に応じて受け入れ要請をすることができる」。消費税が財源なら地域の偏りもなくなり、市町村は今まで以上に腰を落ち着けて事務に取り組めます。市町村によっては事務が面倒だったり、首長の支持団体などの関係から、幼稚園経営者からの認定こども園移行の申請書を取り下げてくれるよう、内々にお願いしている自治体もあるそうです。過疎地に多いでしょう。

 幼稚園や保育所で働く者の立場から言えば、「保育教諭」として10年間の暫定措置として、幼稚園教諭と保育士の資格がある人の垣根を無くします。

 馳シャドウ文科副大臣は、幼稚園経営者の支持があついようで、「幼稚園の預かり保育は、保育所に比べると公的な財政的援助がたりない。これを改善すれば待機児童は減らせる。保育を金儲けの対象にしていいのかという声もあり、株式会社の参入は慎重にすべきだ」という趣旨の発言。「株式会社立の保育所は事故の事例が多く、慎重にすべきだ」とすると、文科相も「構造改革特区による株式会社立保育園に事故があったのは承知している」と認めました。馳さんはこのほかにも、「総合こども園は現行の幼稚園設置基準を満たすべきだ」「運動場の必置義務は必要だ」「保育と教育は極めて神聖な公的営みだ」とたたみかけました。平野文科相は「子ども子育て支援法案の第2条に、「子ども・子育て支援は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有する」との規定を盛り込んだ」と述べ、「運動場の必置規制は望ましい」としながらも法成立から法施行の間に省内で検討したいと逃げ道を残しました。

 自民党の第2次与党期最後の内閣となった麻生内閣は、「脱派閥内閣」とされましたが、あれは総理、内閣官房長官、法相、財務相ら主要閣僚を「文教族議員」でまとめた内閣でした。そして政権交代して、民主党の内閣になると、「子育て」を親がなくても子は育つ、「子育ち(こそだち)」と呼び、「子どもは社会が育てる」という気持ち悪いことを言う学歴と経歴だけは立派な乞食連中に支配されかかりました。なかには「女性の元市長の大学教授」という立派な肩書きの人もいました。最近も政権の審議会委員になりましたが、そちらは行政改革ですから、そちらに没頭していただいて、子育て政策から離れていただきましょう。

 元少子化相で、きょうが勤続20年目にして初めての本会議質問だという野田聖子さんは、なぜ小宮山洋子さんが法案審議入りの直前に厚生労働大臣(兼)少子化担当大臣になったのかと問いました。これは、自民党政権ならば、文部科学大臣(兼)少子化担当大臣になることはあっても、小宮山さんの兼務はなかったでしょう。

 初代の少子化担当の内閣府政務官としてこの苦しみに耐えた泉健太さんは質問演説の中で「専門家の中には、全部の保育所に0~2歳児保育を義務づければ、待機児童はなくなる、という人もいました」と打ち明け、「この法案は与野党の英知の結集である。現状認識が同じならば方向性は同じだとして法案の賛成を求めます」としました。

 そして、民主党政権では待機児童は微減しているとし、「総理、(衆議院第2)議員会館にある保育所も東京都の認証保育所なんですよ」と語ると、実際に1歳児を時々預けている初代アニーで未来のサッチャー、山尾志桜里さんが食い入るように最前列から壇上を見て、それから3時間ずっと聴き続けていました。

 おとといの「年金関連法案」と同じく、自公からは、「民主党vs自公案」ではなく、「現行制度の改善案だ」との意見が出ました。公明党の池坊さんは「私が5年前に文科副大臣の時にやった認定こども園を拡充した案に過ぎない」としながら「保護者の就労状況にかかわらず、保育と教育がうけられる。歴史的な経緯が異なる幼稚園と保育所のいいところを組み合わせた」としました。馳さんと池坊さんは小宮山さんが厚労副大臣時代に、各種団体との懇談の際に、「認定こども園は盲腸のようなものだと発言したことを取り消し、謝罪しろ」としました。小宮山さんは答弁で、議事録の残る場ではなく、記憶もないとしながらも、撤回し、謝罪しました。

 日本共産党の高橋さんは、公定価格である子ども園報酬から、株式会社立総合こども園が利益を出そうとすると人件費を削減することになると指摘しました。新党きづなの渡辺義彦さんが「小宮山大臣、あなたはジェンダーフリー(社会的性差をなくす)論者でしょう」と聞くと、野党席からも「違うよ!」とのヤジが飛びました。小宮山さんは東大総長、成城学園長の娘で、NHKアナウンサー時代は結婚により苗字を変えて活動しました。小宮山さんは「それぞれのライフスタイルに合わせた子育てが大事で、専業主婦による子育てを否定するわけではないが、働きながら立派に子育てしている人もいる」と答弁しました。

 自民党席では田村憲久さんら厚労族が「良い質問だ!」とのヤジを飛ばす場面と、文科族が「その通り!」とヤジを飛ばす場面が混在していたように感じました。池坊さんが「私に分かりやすいように答弁してください」とすると、野田総理が池坊さんの方に体をひねり、「池坊さん、分かりやすい答弁になっていますでしょうか」と声をかけ、新進党仲間の心のつながりを感じました。この後、総理が咳き込むと、自民党席から頑張れ!と声をかけられ、総理が「ありがとうございます」と返す場面がありました。

 重野さんと岡田さんは昨年の通常国会の幹事長仲間で、当初は「3分の2」を目指して民国社再連立をめざした仲間。昨年2月17日の小沢グループによる会派分裂騒動でご破算になりましたが、きょうは2時間55分過ぎに、要求大臣として、ひな壇に岡田さんがこの日初めて登りました。ここで、重野さんは演説の冒頭で、「岡田総理いや野田総理」と間違える場面があり、議場内がどよめきました。民主党席はしーんとし、自民党席はどよめくという不思議な状況でした。重野さんは質問の中で、子ども子育て新システムを実現するには1兆円必要としているが、(あす審議入りする)税制抜本改革法案では0・7兆円しか確保できないと指摘しました。「消費税反対」といえば日本社会党(名称を「社民党」に変更)ですが、重野さんは消費税引き上げを前提にしたかのような質問でした。岡田一体改革相は「0・4兆円を保育の量の拡大、0・3兆円を保育の質の改善に充てる」とし、「残りの0・3兆円を確保できれば例えば、幼稚園が0~2歳児保育を受け入れることを推進できるかもしれない」としました。これは福島瑞穂党首率いる参議院社民党からはでない質問演説でしょう。ただし、一体改革関連法案が参院に回るのは来月以降です。文教族、厚労族、政務三役経験者、与野党、自公、新進党仲間。さまざまなつながりが複雑に絡み合いながらも、泉さんの最初の質問演説にあった「この議場に集う人々は、子どもを生み育てたいと願う国民の希望を実現しなければならない」。その当たり前の圧力を感じて、前に進もうとしている。子どもの成長こそ、もっとも安定した「年金」であり、子どもを育てるのは景気に左右しない安定した財源が必要です。消費税増税は何が何でも必要です。消費税を上げる前にやるべきことがあるだろう。それはもっと政治家を仕分けして、既得権益者の中に分け入って、えげつなく自分の意見を反映させ、反対派を締め上げるという有権者としての「未来への責任」を果たすことです。

 かなり、散漫な駄文となりましたが、来週以降、私も審議を聞いて成長していきたいので、このエントリーは習作ということで、直しは入れないと思います。ご了承ください。

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[お知らせおわり]

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