渡辺恒雄の後継者、宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

野田毅さん「旧内務省系は頭を下げれば甘くなる」 河本さん生活保護が念頭?

2012年05月23日 19時08分06秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革


 衆議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会(中野寛成委員長)は2012年5月23日(水)も総理入り質疑をしました。この中で、公明党の高木美智代さんが「一体改革関連7法案の中でもっとも大事な法案は子ども子育て新システム法案だ」とし「地域型保育については、おそらく(他党も含めて)異論がないのではないか」としました。次期衆院選では30代、次期参院選では40歳代の新人が続々と公認されている公明党ですが、現在のメンバーはベテラン・中堅のため、専門性の強い議員が中心です。そのため、公明党議員が最後に話題を変えてメモを取り出して質問するのはとても重要な場合がありますが、高木さんは「野田総理は小沢元代表に会うようだが、法案を継続審査にして(次の臨時国会で)審議する考えはあるのか」との質問をしました。支持者の間でも考えが割れている、という中間集約を公明党全国本部がしている可能性があります。

 さて、話は変わりますが、お笑い芸人の河本準一さんが年収5000万円あるのに、お母さんが扶養世帯になっておらず、生活保護を受給し続けていたという話題があります。生活保護は本来は国がやるべき仕事ですが、家賃相場が違うことに代表されるように自治体ごとに柔軟な対応が必要なため、国(厚生労働大臣)が自治体(市町村長)に法定委託事務にしています。

 大蔵省出身の野田毅さんの質問の中にその理由がわかるような発言がありました。

 「旧内務省系っていうのは頭を下げると(保険料が)安くなる。(財務省国税庁が)税でそれをやったらどうなりますか」と述べました。財務省国税庁の税はオープンな申告納税方式なのに対して、旧内務省系厚労省の社会保険(日本年金機構)などは個人機密が入った情報をもとにして保険料が決まるので、保険料は頭を下げると安くなる。野田毅さんは触れていませんが、生活保護行政にも通じるところを感じました。

 そこで、野田毅さんは「組織文化が違うんだから」とし、歳入庁構想は「超長期的課題だ」として、さらには「一番の解決策は(統合構想を)止めるべきだ」としました。ちなみに、歳入庁は民主党マニフェストに入っているのですが、野田毅さんは散々マニフェスト違反を追及していて矛盾しています。しかし、野田毅さんが大蔵省出身なのはひろく知られた情報で、それとかみ合せれば、何にも不思議ではない。その、財務省と厚労省の生い立ちの違いを敷衍したうえで、「幼保一体化もそうなんだよ。田村憲久さんが害あって益なし、と言っている」と指摘しました。

 副総理の岡田克也さんは歳入庁構想について、「国民年金保険料の納入者と国税庁の納税者では所得階層が違う」という新しい論点も示しました。自民党時代は金持ち優遇の政治でしたから、郵政民営化法案も、ことの本質が分からないまま投票した有権者が続出しました。同じつては踏めません、今度こそ日本がつぶれます。育ち、資産、現在の家庭環境を踏まえた上での意見を言うべきです。私は自分の利益をドンドン言います。なぜなら、自分の利益が国益・国民益に正比例とはいかなくても、かなり比例するような生き方をしている自信と評価が私にはあるからです。

 民主党の和田隆志さんは「社会保障制度は自助・公助・共助が原則だ」とどこかで聞いたようなフレーズを持ち出しました。大変好感が持てました。自民党議員も本質的に同じ人間ですから、悪い気はしないでしょう。

 和田さんの質問に頼れるアニキ、財務大臣の安住淳さんは、「私の近所にも嫁いできてから40年間、介護に明け暮れていた人がいた」としました。安住さんのお父さんは地元の教師、校長、町長を務めましたが、「生前、父と飲んでいて、ずっと、うちの方の言葉で言えば、下の世話ばかりしてその人の人生何なんだろうねと話していた。そういう人たちが支え合うために社会や政治があるんだと感じた」と話しました。安住重彦さんは昨年3月津波で自宅が全壊した後、ヘリコプターで救出され、避難所で過ごしました。そして、年末、仲間の待つ冥土に旅立ちました。
 

[画像]父・安住重彦さんの逝去後にもかかわらず、毅然と答弁する12月5日の安住淳・財務大臣、衆院予算委集中審議、衆議院インターネット審議中継から。

 上の画像の時点では、「安住大臣の父逝去」の報道はありませんでしたが、すでに亡くなったことを知っていたはずの時間帯です。黒いネクタイで毅然と答弁していました。全壊した家は雑損控除にしようかな、という答弁もありました。消費増税法案の中には相続増税が入っています。安住さんはお母さんもきょうだいもいるし、家屋は全壊しているので、改正前後にかかわらず、非課税なのかもしれませんが、仮に現行法により非課税になったとしても、「安住淳を世に出した」という「特別控除」が仮にあれば、それだけで安住重彦さんが日本国益への貢献(明日への責任)は十分過ぎるほどです。

 小宮山洋子さんは保育について「孫も苦労している」としました。小宮山さんの孫は、世田谷でなかなか希望する保育所に入れないなど苦労したそうです。現在は入れました。和田隆志さんは「私も3歳児の父親です」。

 「こういう時こそ人は見られている」

 東日本大震災のあと、岡田克也幹事長が1期生議員に最初に発したメッセージです。

 一人一人の本性、すなわち性根(しょうね)があらわれる場所を「性根場」といい、「正念場」の語源です。引き続き正念場国会が続いています。

 例えば、自民党で平沼赳夫さんの「刺客」を務めるガッツマンで看護士のあべ俊子さんの家は分家です。あるいは社民党の照屋寛徳議員は9人兄弟の3男坊です。ご両人と話したことはないのに、なぜそんなことを知っているのか。それは2人とも今国会の予算委員会で自分が話したからです。

 あべさんは、3月5日の予算委第5分科会で、「私も実は、我が家が分家なものでございますので、今、両親の墓も含めて考えなきゃいけない」と語りました。散骨についての墓地埋葬法や刑法119条に関する質問です。

 照屋さんは3月6日の予算委・集中審議で、「私は貧農の9人兄弟の3男坊に生まれました。亡くなった両親は、サトウキビ生産と、母豚1、2頭の養豚にいそしみ、私たち9人の子供を育ててくれました。当時の我が家では、サトウキビ代と子豚を売って得る現金収入が全てでした。それでも両親は、9人の子供たちを養育し、学校へ通わせてくれた。私は、ひたすら農業に生き、死んで沖縄の土に返った両親を心の底から尊敬しております」と述べました。TPPに関しての質問です。

 与党経験がある両議員ですが、3月上旬に本予算案が衆院を通過していない状態が初めてだったので、野党議員ながら衆議院・国会の権威にかかわるという緊張感もあって、「正念場」となったのでしょう。「3月1日」というのは日本国憲法59条の予算の30日規定からして極めて緊張感の高い日ですが、2期生ながら予算委員会に起用された赤澤亮正さん。打ち切り動議提出のタイミングをねらい質疑を淡々とこなす、といった役割ではなく、ただ淡々と集中審議をし、その日はそのまま散会するというのんびりした設定で登場し、「きょうなんで岡田副総理に出席を要求したか分かります?先日、エレベーターで2人切りになったときに、『最近、俺に質問してくれないじゃないか』と言われたからなんですよ!ヒッヒー!」という謎の発言。赤澤さん、民主党がもらいたい人材ですね。

 さまざまな正念場が見える国会ですが、それは国会議員はおそれることは何もない。人材の適正配置に過ぎません。そういう意味では、新党きづなの内山晃代表以外の、各党党首、あるいは衆院側トップ幹部が一人も委員会に登場しません。様子見をしているような野党党首ならば、今の時代には必要ない。人材の適正配置で、代われ、ということになります。

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