ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

◎消費増税国会、NHK日曜討論でスタート 国対委員長、賛否明かさず「徹底した審議時間」にこだわる

2012年05月06日 19時00分47秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]連休明け国会の「社会保障と税の一体改革」で論戦する自民党の岸田文雄さん、公明党の漆原良夫さんら各党国対委員長ら、NHK画面から。

 2012年5月6日の「NHK日曜討論」に、8党の国対委員長が集結しました。あさって8日(火)からスタートする「社会保障と税の一体改革」をめぐって議論しました。

 NHK日曜討論は、「討論」とはいえ、この番組の内容自体が日曜朝から新しい政治の流れをつくります。とくに召集直前、後半国会直前(予算成立直後)、会期末週前の各党国対委員長集合は、みんなが本音を隠して思惑含みに観測気球をあげるので、視聴者・聴取者にとっては、何が何だか訳が分からない番組だとは思います。

 なので、ざっくりまとめると、「消費増税準備法案など一体改革関連法案については与野党とも100時間越えなどの徹底した審議時間を積み重ねて、そのうえで法案採決の党議を所属衆参議員・支持者が決められる状態にしたいようだ」ということでしょう。油断大敵ですが、私は一体改革関連法案は、特例公債法案(財金委)、マイナンバー法案(内閣委)も含めて、今国会で成立させられる自信を持ちました。

 公明党の漆原良夫国対委員長は、法案の賛否は述べずに、審議時間にこだわりました。漆原さんは竹下内閣の「衆・税制問題等に関する調査特別委員会」の消費税法の審議時間が88時間だった、として、「(新設でないにしても、5%から8%への引き上げには)そのくらいの時間が必要だし、そのほかに年金、子ども子育て新システムの法案がある。100時間を優に超える時間が必要だ」としました。

 この意見に対して、与党・民主党の城島光力国対委員長は「めどとして80数時間は念頭にある」としました。ちなみに、衆・社会保障と税の一体改革特別委員会(中野寛成委員長)での審議時間が100時間を超えるのは、4週間後の6月4日週以降になると思いますが、そのころに6月21日(木)までの会期を延長するかどうか判断したいとしました。

 これに先立ち、自民党の岸田文雄国対委員長は、11法案付託の予定を、マイナンバー3法案と年金交付国債発行法案(現在既に衆・厚労委員会に付託済み)を外して、7法案にしたことについて、「そもそも11本の法案を一括して特別委員会に付託しようとしていたのを7本に選別しました」と語りました。これは徹底した審議時間の確保のために、自民党岸田国対が「前さばき」で成果を挙げたとアピールしたものと思われます。

 みんなの党の水野賢一さんは「増税の前にやるべきことがあるだろう。しかし、審議拒否せずにむしろ特別委で徹底的に議論する」と述べ、一体改革特での徹底審議を強調しました。日本共産党の穀田恵二・国対委員長は「3領域とも、それぞれ特別委員会を設置してもいいくらいの法案だ」と語り、社民党の照屋寛徳・国対委員長も審議時間の確保を述べました。たちあがれ日本の藤井孝男・参院議員も将来的な消費税引き上げが必要だとした上で足元の経済対策での論戦を求めました。与党・国民新党(自見庄三郎代表)の国対委員長として初めて参加した中島正純さんも徹底審議と同党提出の法案による定数削減・連用制一部導入の「身を切る」選挙制度改革を求めました。

 これにより、全党が「徹底審議」を求めたことになります。また現段階での賛否を明言した党はありませんでした。この漆原さんの「100時間を優に超える時間」を一体改革特別委で確保すると、参院での審議時間はギリギリになります。原子力規制庁設置法案を衆参の本会議で審議・採決した場合は、6月21日(木)に間に合わない可能性が高くなります。しかしことしは通常国会のお尻に参院選もないので、与党は1回のみ衆院単独でも延長議決ができます。ですから、漆原発言は、衆院での採決前に会期末が来て廃案にすることをもくろんでいるのではないでしょう。公明党内議員や支持者に「○○時間に及ぶ徹底審議をしたから」ということで、採決に応じるための材料作りだと考えられます。ですから、「採決前の廃案」というシナリオは心配する必要はなさそうです。とにかく、特別委員は、前線に出て衆院第一委員室で徹底的に審議をしながら、実務者が別室で修正協議をするという陣立てになることは間違いなさそうです。やはり、修正協議のいかんが今国会を占うことになります。ぜひ、実務者の名前は各党が報道発表してほしいと考えます。ないしは、質問者が実務者の名前を出して、議事録に載せることが衆院議員として憲政の名場面に立ち会ったあかしを後世に残すことになります。テレビなんか出ても、すぐに消えてしまいます。

 8日(火)の衆院本会議で、「年金関連法案」、10日(木)の衆本で「子ども子育て新システム関連法案」、11日(金)の衆本で「社会保障の安定した財源を確保する税制抜本改革(消費増税準備、相続増税など国税・地方税とも)法案」の趣旨説明と代表質疑が行われます。連休明け第1週で、衆院本会議でお経読み(趣旨説明)と代表質問が3連続するのは異例だと思いますが、全衆院議員や国会ウォッチャーは「門前の小僧習わぬ経を読む」ということで、とりあえず聞いていると、終盤国会まで議論が分かりやすくなると思います。例えば、「現行の消費税の税率”4%”を」などという「アレ?」と思う”お経”があるかもしれませんよ。現行税率では国税分が4%、地方税分が1%でそれぞれ別の法案が提出されています。また「子ども・子育て新システム法案」が通れば、待機児童がゼロになるわけではありません。実は、民主党にも自民党にも、議員には幼稚園経営者が多いことから、修正協議が整うのにイチバン手間取るのは「子ども・子育て新システム法案」ではないかと私は懸念しています。この辺の予習も兼ねて、今週の国会は衆院本会議の「お経読み」が後々まで大事になってきます。6月の会期末からの逆算になりますので、初月度無料の会員制ブログ「今後の政治日程by下町の太陽」は今週が入会する良い頃合いです。

 一体改革関連法案と原子力規制庁設置法案に専念したい終盤国会ですが、その前段階で問題があります。問責政局です。これについて、野党各党が完全に足並みが乱れていることが分かりました。

 自民党は、問責決議案を提出し、賛成しました。今後も更迭しなければ審議拒否するとしました。
 公明党は、問責決議案提出に加わりませんでしたが、賛成しました。今後は、国土交通大臣と防衛大臣が出席する審議だけ拒否するとしました。
 みんなの党は、問責決議案提出に加わり、賛成しました。今後は、国土交通大臣と防衛大臣が出席する審議だけ拒否するとしました。
 新党改革は、問責決議案を提出し、賛成し、審議拒否していますが、きょうの番組に呼ばれていないので、今後の動向は不明です。

 このように、自民党、公明党、みんなの党の野党3党だけでもかなり違います。水野さんは参院議員ですが、自公の出席者は衆院議員なので、参院執行部と認識が完全に一致しているわけではないでしょう。

 一体改革関連法案の担当大臣は、岡田一体改革担当相、安住財務相、小宮山厚労相兼少子化担当相、川端総務相の4人です。これに野田首相、平野文科相、古川マイナンバー担当相が加わる格好になります。前田国交相と田中防衛相は無縁です。防衛省は今国会に法案を一つしか出していません。「防衛省設置法改正案」で、これは「防衛審議官ポスト1人の新設、防衛医大に看護師課程を新設、防大卒業生の一定期間の自衛隊勤務の努力規定を設ける」という法案で、あまり重要性は高くないです。看護師志望の学生は他にも公立大学はたくさんあります。国交省は逆に10本とずいぶんたくさん出しています。私はちょっと国交省関連は苦手なんですが、一つ一つは力の入った国のグランドデザインをつくろうという意気込みを感じる法案ですが、逆に言うと今国会で絶対に成立させるべき法案でないように感じます。日切れ法案はすべて成立済みです。

 こうなると、「参院問責で必ず辞任」の連鎖を絶とうとしている輿石東民主党幹事長(兼)参院議員会長の考えには一定の根拠があるように思えます。ぜひ、ここは人物本位ではなく、過去に残る良い先例をつくるために、両大臣や総理は強行突破できるのではないでしょうか。与党にしろ、野党にしろ、衆院議員団にしろ、参院議員団にしろ、政党というのは一つにまとまっていないと議席数に見合う力を発揮できません。

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