[写真]質問演説する古本伸一郎さん、民主党ホームページから。
【衆院本会議 2012年5月11日(金)】
マスコミで「消費税増税法案」と呼ばれる、社会保障の安定財源を確保するための税制抜本改革2法案(国税と地方税)が審議入りしました。これで、火曜日の「年金」、昨日の「保育」、きょうの「税制」の3領域がすべて趣旨説明と代表質問が終わりました。来週から社会保障と税の一体改革特別委員会(中野寛成委員長)の審議に入ります。
私も1週間で、3時間×3回の法案趣旨説明と代表質問を聞いたのは初めての経験です。一般傍聴席で、9時間超じっくり聴き、いろいろと勉強になりました。火曜日ときのうは長年の習慣で日本共産党の質問時間にお手洗いに行きましたが、きょうは3時間ぶっ通しで聞き、自信、知識、雰囲気など多くのものを得ました。
一体改革の「エンジン」はなんといっても、180閣法72号です。
社会保障の安定財源を確保するための消費税など国の税制抜本改革法案(180閣法72号)は安住淳・財務大臣が趣旨説明しました。安住さんは「よろしくお願いします」と演説をはじめ、「その趣旨をご説明した次第であります」と演説を終えました。通例は、閣法の趣旨説明は大臣が「ご審議のうえ、速やかに可決していただきますようよろしくお願いいたします」と言うのが通例ですが、民主党与党初の衆参ねじれ通常国会の国対委員長を仕上げた「頼れるアニキ」の知恵を感じました。
社会保障の安定財源を確保するための地方の税制の抜本改革法案(180閣法73号)は川端達夫・総務大臣が趣旨説明しました。ところが驚くことにこの後、3時間、安住、川端両大臣には与野党から一問の質問もなく、ひな壇に座っていただけ。途中で自見庄三郎・国務大臣が国民新党代表として同党マニフェストとの整合性を説明した以外は、すべて総理の野田佳彦さんが答弁しました。野党が総理だけの指名したのは、消費税増税法案に関して、細かい点での異論が少ない可能性があります。
日本共産党の佐々木憲昭さんは「法案を撤回すべきだ」としましたが、それ以外の党は賛否は明かしませんでした。通例、趣旨説明の代表質問で賛否を明かすことは少なく明かさなくていいわけですが、政府・与党は手応えを感じたのではないでしょうか。やや拍子抜けの感もありました。
政権交代直後に、野田財務副大臣とともに財務政務官として税制改正を担当し、その年のうちに「自民党はこれまでこんな大変なことをやっていたんだな」とNHKスペシャルで答えた古本伸一郎さんが、民主党税制調査会事務局長として登壇。
一般会計は45兆円の税収と45兆円の国債による90兆円の収入のうち、20兆円の国債償還に充てています。これを古本さんは「自転車操業を続けるべきではない。国民から預かった税金が借金の返済に消えることが最大の無駄づかいだ」と語りました。これに先立ち、身を切る改革の必要性を指摘しながらも、「国民のみなさんは定数削減による無駄づかい削減を期待しているのではなく、定数削減すらできない人に増税されたくないと思っているのだ」と演説すると、与野党とも静まりかえりました。
[写真]副総理・一体改革担当大臣の岡田克也さんと古本伸一郎さん、ソウル景福京前。
答弁で野田さんは「自転車操業のような状況」と言い換えたうえで、「続けるべきでない」と断じました。
続いて、現自民党税調会長の野田毅さんが登壇し、田村憲久さんから「これが本物の野田だ!」との応援の合いの手をうけました。1996年の第41回衆院選で新進党の小沢一郎党首から「消費税据え置きを公約にしたから」とちゃぶ台返しをされ、選挙に負け、1期生の野田佳彦さんらを落選に追い込んでしまった元新進党政調会長。
「増税無き財政再建」という言葉がふたたび脚光を浴びていますが、野田毅さんは「我が党(自民党)は農業・産業などの画一的な歳出削減による財政再建が限界を迎えて、2007年の参院選に負けました。そして平成21年税制改正法付則104条に消費税増税を盛り込みました」と述べました。野田総理は「初めて政権を担う民主党には見通しの悪さもあった。しかし選挙による政権選択の制度を根付かせなければならない。脱イデオロギーとこれからも続く衆参ねじれのために、歩み寄りたい」という趣旨の答弁をしました。
自民党からもう一人、武闘派の金子一義さんが登場。「名目3%成長、実質2%成長が法律(の附則第18条に)に盛り込まれると、我々が政権復帰したときに訳の分からない条文に縛られるので困る」としました。
公明党を代表して野田総理と同じ1993年初当選の新進党仲間である竹内譲さんが質問しました。ひな壇最前列の野田総理とは対称的に、竹内さんは議員席の公明党最前列。演説時間が近づくと稲津久さん(次期衆院選北海道10区予定候補)と席を替わり、出やすくして、さっそうと登壇しました。
竹内さんは第45回衆院選の大阪16区で野田さんがした「シロアリ演説」を批判。「マニフェストに書いてないことはやらないんです」という発言について、野田さんは「舌足らずで行き過ぎた発言だった」とし、「謝罪いたします」と答弁しました。大阪16区で、公明党幹事長(現副代表)の北側一雄さんを落選に追い込み、初当選した民主党の森山浩行さんは同僚から冷やかされていました。
【公明党が「低所得者対策」を強調 3党協議の対象になるか】
公明党の竹内さんは「低所得者対策の具体像が見えない。給付付き税額控除。そしてそれまでの暫定措置としての簡素な給付措置だ」と指摘しました。一体改革について、公明党の機関誌「公明新聞」は、「社会保障の全体像を示せ」「最低保障年金を取り下げろ」という見出しを付けることが多かったのですが、最近は「低所得者対策を徹底すべきだ」という見出しが目立つようになっています。これについて、本会議後の記者会見で岡田副総理は「与野党協議で簡素な給付措置で合意すれば後は手続きの話だ」と述べ、簡素な給付措置を含む低所得者対策での「新3党合意」をつくるよう、現場に対する期待感を示しました。
社民党の中島隆利さんは「還付よりも低減税率。中小の事業者の(転嫁しづらい状況の)対策を求める」とし、消費税増税に真っ向から反対する発言はしませんでした。
新党きづなは豊田潤多郎さんは堂々と演説。小沢グループから「どうしてそんなに偉そうなんですか?」とヤジが飛びました。しかし、豊田さんは第40回衆院選で新生党公認で当選しており、日本新党の野田さんと同期当選。その後、第41回衆院選では新進党の小沢党首の「消費税据え置き」で落選したのが、野田現総理、公明党の竹内さん、きづなの豊田さん。議場内はまさに小沢一郎さんの怨念に充ち満ちていました。小沢グループは、なぜ「小沢切り」を与野党議員が演説するのか、訳が分からないようすにみえました。いつもに比べると、小沢グループは珍しく、お行儀よく審議を聞いていました。
自民党の金子さんが「2020年にプライマリーバランスをはかるには、この法案ではまだ6%の不足がある。なぜ、(法案に盛り込むのを)逃げたのか?」とただすと、福岡選出の小沢グループが「誰も賛成できねえよ!」とヤジを飛ばしました。そして、「総理は大平正芳を尊敬しているようだが、大平正芳が一般消費税で総選挙で敗れたのは身内の反乱(清和会による40日抗争)があったからだ」と指摘しました。第1次大平内閣の金子一平蔵相は金子議員の父親です。金子さんはずっと自民党です。父の怨念もありました。まさに国会が先送りしてきたことによる過去の負債に充ち満ちた本会議場でした。
野田毅さんは「私も消費税反対の1万人集会で藁人形を燃やされたことがある。そのくらい消費税は難しい。我々は政治生命をかけていのちをかけてとりくんでいるんです」「決められない政治の原因は、衆参ねじれではなく与党内のねじれだ」とし、「6月21日までの会期内に党をまとめ採決すべきだ」としました。その一方で、「私からすれば、(内閣)法制局がよくこのような法案を了承したものだと目を疑う」という彼らしい表現で、修正協議にのぞむ考えを示しました。岡田副総理は記者会見で、「喜んだというよりも、気を引き締めた」とふりかえりました。
ただ、第177回~179回国会での民自公実務者協議のなかで、野田毅さんの反対で法制化されなかった固定資産税の基礎控除の下げ(課税ベースの拡大)と最高税率の引き上げがこの法案に盛り込まれています。野田修正は直近の民意である衆参ねじれによる熟議の国会の果実ですが、同じ第45期衆議院・第21期22期参議院に法案を出してきたということはどういう考えなのか。政府の考えに加えて、野田毅さんも演説で触れなかったので分かりません。しかし、私は、この180閣法72号の第5条はすべて削除すべきだと考えます。
古本さんは「お互いに国民受けの良いことを言う政治から脱却し、言いづらいことを言うようになったのが政権交代の成果だ」としました。そして、「(野田)総理の好物はカレーライスで、最近まで1000円の散髪屋に通っていました」と語り、次のことばで演説を締めくくりました。
「そういう庶民宰相が過去の負債を背負っているんです」。
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[お知らせおわり]
[写真]岡田克也さん、2011年6月28日、宮崎信行撮影。
大震災イヤーとなった平成23年(2011年)の岡田克也さんの政治資金収支報告書 は、政治資金管理団体(岡田かつや後援会)がの収入が1億3199万2283円で前年と比べて33%減少、額にして6451万円の減収と大幅に苦戦したことが分かりました。
総支部長をつとめる「民主党三重県第3区総支部」は8683万0795円。後援会と総支部の総計、岡田さんの場合は団体間のやりとりがないものと思われるので「純計」と考えられますが、これは2億1882万円で、前年比22%減少となりました。
岡田克也さんが公式ホームページで公開した「政治資金収支報告書の要旨」の平成23年(1月1日~12月31日)分で分かりました。公開は平成24年5月8日付。
これについて、金庫番(国会事務所長)は、「支援者の企業様が経費節減。こちらも経費節減をして何とか食いつないだ」と語りました。
単式簿記なので、前年からの繰越金はすべて収入に計上されます。複式簿記ならば前年の資産の部に計上され、内部留保となります。この点が政治資金収支報告書と企業会計の違いです。ただし、政治家の場合は繰越金が政治的資源なので、単式簿記でいいのかもしれません。
減収のおおきな要因。前年(2010年の外相時代)は、帝国ホテルに泊まって岡田外相のあいさつを聴き国会見学をするバスツアーを連続して催し、1939人の参加を得ました。自分たちが育てた岡田さんが与党になりいきなり外務大臣で帝国ホテルに夫婦で泊まってという「最高の冥土の土産」(失礼ですかね・・・)ということで、「5635万円の売り上げ」を記録しました。とはいえ、「旅行代理店もだいぶ頑張ってくれて」ナント2・9万円でしたので、旅行代理店への支払いは5281万円で、写真代・飲み物代を含めてトントンでした。この事業がそっくり消えていますので、この分は減収になります。
しかし、岡田さんの場合は2010年→2011年の繰越金が後援会で5493万円、総支部が4434万円だったのに、2011年→2012年への繰越金は後援会が5284万円、総支部が4580万円となっており、トータルでは微減となりました。いずれにしろ、最大の目的は第46回総選挙への備えですから、不安を残す格好となりました。三重3区(四日市の三滝川より北川、川越町、菰野町など三重郡、桑名市、いなべ市、桑名郡、員弁郡)の方だけでなく、全国のみなさん、岡田克也(岡田かつや)さんの背中を押してください。
総支部での獲得党員は182人(前年は195人)、サポーターは1065人(前年は1258人)にとどまりました。登録月となる5月は、党本部幹事長在任中ですので、率先垂範ができなかったと言わざるを得ません。ただし、当時の党規約では、西暦・平成とも下1ケタ奇数の年は代表選がないので、サポーターが減る傾向がありました。金庫番によると、「震災後の混乱(や党勢の不振)よりも、不況の影響がイチバン強かった」とのことです。
[画像]千葉・幕張の党大会で与党幹事長としてスタートした岡田克也さんの2011年だったが、経費節減圧力の折、献金・パーティー・サポーターとも減収となった、2011年1月13日、民主党ホームページ内動画からキャプチャ。
総支部への個人献金は23人・824万円(前年は33人・863万円)、企業献金は224社・2085万円(前年は247社・2250万円)、団体献金は1団体2万円(前年は1団体3万円)。かつて与党幹事長になって、献金が減った議員はいるのでしょうか。まさに「仕分けの民主党」。
自らが差配した政党助成金の支部交付金は1000万円と他の衆院議員と同額と思われます。
そして稼ぎ頭である後援会主催の政治資金パーティーは7349万円の売り上げ。前年の9004万円から大幅に落ち込み、1億円割れが続きました。金庫番は「毎年回っているから分かるが、景気の影響で、企業の経費節減が相当厳しかった」とふりかえっています。そこで「やはり開催コストがかかるので」(金庫番)、パーティー開催を例年通りの四日市・津・名古屋・東京・大阪の5会場に戻しました。前年は神戸にも進出し8会場に拡大していました。開催会場を絞り、400万円の支出を削減。パーティーの収益率を高めました。
後援会への個人での最高寄付金額者は50万円でした。前の年の100万円の方はいませんでした。
なかなか、苦しいですね。政治資金は景気先行指標。私自身も何とか経費節減でやっていかないといけないなあと、私自身も感じました。
他の政治家の政治資金収支報告書はこれから6ヶ月以上先の、11月末に総務省または都道府県選挙管理委員会の48カ所のいずれかで公開されます。
首を長くして待って、比較しましょう。
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