【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

ことし最後の年金支給日に思う 安倍ちゃんの「最後のお一人までお支払いします」ウソ公約 国家が潰れる

2012年12月14日 07時05分37秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗

 備えあれば憂い無し。自民党の方が、追加経済対策の補正予算の編成はうまいでしょうが、どこがやろうと、世界不況ですから来年1~2月の景気は底です。年金にしろ、あるいは政党にしろ、バックアップが大事です。

 きょうはことし最後の年金支給日。おせちとお年玉用ですから計画的に使わないといけないですね。また、きょうの支給分から、私の手元の計算で、おそらく初めて「年金特例債」(解散当日に法律成立)から国庫負担分が出て、国民年金月7万円の方ならそのうち1万円は年金特例債が財源ということになるのでは。

 第1次与党期の民主党は、消えた年金記録5000万件(2007年12月時点)のうち、2860万件(ことし9月時点)の記録を解明し、1671万件を統合し、一生涯の給付額に計算して延べ1兆7000億円分の年金を回復しました。

 ところで、2008年(平成20年)4月というのは、政権交代ある二大政党にとって後世特筆される月でしょう。まず1日から、田中角栄衆院議員が「臨時税率」として議員立法し、田中内閣が「暫定税率」に名を代えた恒久税制である揮発油税に関する時限立法が、自民党の国会対策のミスで失効し、ガソリン1リットル辺り25円下げが実現しました。4月5日はドライブにでかける人が増え、「国民に笑顔の花咲く“民主の春” 暫定税率撤廃サタデー」となりました。

 4月1日から、民主党が乱闘採決で抵抗しながらも成立した改正健康保険法にもとづき、「後期高齢者健康保険制度」がスタート。4月15日の年金支給日には、後期高齢者健康保険料の天引きで自治体に問い合わせが殺到。これに先立ち、福田康夫自民党内閣は4月1日に急遽「長寿健康保険制度」に改名しました。4月27日の補欠選挙では、山口2区で、民主党の平岡秀夫さんがゼロ打ち当確。そして、4月30日、自民党と公明党は衆議院本会議で3分の2ルールを使い、暫定税率を10年間延長する法案を参院が否決したとみなして、再可決しました国会同意人事では、空席期間をおいて、白川方明日銀総裁が誕生しました

 さて、何よりも問題なのは、これに先立つ2007年7月の第21回参院選で、当時の安倍晋三自民党総裁(首相)が、「2008年3月末までに名寄せを完了する」と公約しながら、本人が10月に総辞職したうえ、後継の福田康夫首相のもとでも、8%417万件の記録回復にとどまり、公約が守られなかったことです。

 参照)2008年4月1日付【政見放送】自民党総裁は「年金ウソ公約」を謝罪しろ!

 安倍さんは政見放送の中で次のように語っています。


 「多くの国民のみなさまはこの問題に対して強い憤りを感じていると思う。私も「社会保険庁いったい何をやってきたんだろう」、そういう気持ちです。

 しかし、私は現在の行政の長として、この問題にかんして、一番大きな責任があります。まずは国民のみなさまにおわびを申し上げなければならないと思います。
 そのうえで、この問題は基礎年金番号に統合した10年前から今日に至るまで、社会保険庁において、先送りしてきた問題です。
 私の内閣で、すべて、解決をして参ります。そのためには二つ、私に使命があります。

 第一の使命は最後のおひとりに至るまで、記録をチェックして、まじめに保険料を払って来られた方々にしっかりと年金を正しく、お支払いをしていくということです」

 と話していました。しかし、これは理論的にあり得ない話で、2007年7月の政見放送のさいちゅうにも、年金記録が回復されないまま亡くなった方がいるわけですから、「最後のおひとりに至るまで」「しっかりと年金を正しく、お支払いをしていく」ことができるわけがありません。そのうえで、年金記録の名寄せ期限までに8%しか回復できなかったのです。

 安倍さんの嘘公約は国家の存亡に関わりかねない重大な問題です。 

(画像はTV朝日「報道ステーション」)

[当ブログ内から引用おわり]

 これについて、福田康夫首相は7日の衆院予算委員会で「過分な期待を持たせたという意味で、おわび申し上げねばならない」と一応謝罪しました。翌日の衆院本会議で舛添要一厚労相は「公約違反に当たらない。誤解を与えたことはお詫びする」と答弁しています。「誤解を与えた」とは何様のつもりでしょうか。

 さらにさかのぼれば、参院選の「来年3月まで」公約から100日余りしか経っていない、2007年11月22日に舛添厚労相は「すべての名寄せは不可能」としており、この時点で
◎安倍首相の公約は嘘と判明していました。

 これについて、おそらく2007年12月14日の衆院本会議散会後にテレビ局からマイクを向けられた安倍晋三・衆院議員は質問に答えず「事務所を通してくれないかな」と語っています。その場面が次です。

当ブログ内2007年12月17日付エントリーから引用はじめ] 

Scene 1 謝罪しない福田首相



Scene 2 こういう約束をした安倍前総理の責任は?


Scene 3 安倍さんを直撃!(14日の衆院本会議後だと思います)



Scene4
国民へのヒトコトは、
事務所を通してくれないですか


Scene5 ガード役は安倍政権の中川政調会長




 何も語らず国会議事堂を後にしました。 

[引用おわり]

 このとき、ボディーガード役をつとめた中川昭一・衆院議員は亡くなりましたが、安倍さんは体調を回復して、総理返り咲きが目の前です。

 安倍さん、ひと言謝罪したらどうなんでしょうか。

 ダメだよ、ウソついちゃ、安倍ちゃん! 謝れよ、安倍ちゃん!

 で、実際に93歳の女性が消えた年金のため、年金受給資格の25年間(2015年10月から10年間に短縮)に足りず、一円も年金をもらえないまま亡くなっています。平成20年12月5日の第170回国会の衆院予算委。野党・民主党の山井和則さんの議事録をお読みください。

国会会議録検索システムから引用はじめ]

(前略)

○山井委員 それで、次のフリップをお願いいたします。
 この消えた年金問題で一番残酷なケースは、二十五年ルールというのがありますから、二十五年に足りなかったら無年金になっておられるんですね。私たち民主党、消えた年金問題で無年金になっている人がいるんじゃないかということを今までから追及してきて、やっと五月、六月だけ初めて出してもらいました、無年金の方を。そうしますと、五月、六月だけで三十五人、年金が消えていたせいで無年金だったということがわかったわけです。
 それで、これをごらんになってください。二番目の方は九十三歳なんです。十三年分国民年金が欠けていて、そのせいで無年金になって、何と三十三年分、一千三百万円未払いになっていたんですよ私はこれを見たとき、非常にショックを受けました、本当に三十三年間どれほど苦しい生活をされていたんだろうかと。
 それで、この発表があったときに、一日も早く、特にこの九十三歳の方には払ってください、謝りに行って払ってくださいとお願いしたんですが、舛添大臣、この方、ちゃんと全額もうもらわれましたか、今どうされていますか。
○舛添国務大臣 この九十三歳の女性は十一月上旬にお亡くなりになっております
 年金につきましては、初回の支払い分、五年以内分については十一月に支払い済みでございまして、残りについては、今、十二月の支払いに向けて支給額の処理中でございます。
○山井委員 舛添大臣、確認しますが、一銭でも、この方は年金を生きている間にお受け取りになったんですか
○舛添国務大臣 大変残念ながら、お支払いしたのが十一月中旬お亡くなりになったのが十一月の初旬、間に合いませんでした。(中略)
○山井委員 なぜ本人に謝りに行かないんですか。御子息夫妻に謝ったとかじゃなくて、入院されていたということがわかったら、それこそすぐに払わないとだめじゃないですか。入院されていて、一千三百万未払いが社会保険庁のミスでわかった、そうしたら、一日も早く払わないとお亡くなりになるというのが容易に想定できるじゃないですか。
 五月十五日にこれがわかって、お支払いされたのが十一月中旬。なぜ半年間もおくれたんですか。その間も、私たち必死に、早く払ってくれ、年金というのは生きている間でないと意味がないからと言ったわけですよ。(後略)

[引用おわり]

 みなさん、これを許していて、選挙と政治のしくみがこれからも作用しますかね?

 当時野党第1党で衆議院で115議席持っていた民主党が2008年4月1日に発表した声明全文を最後に付けます。

[当ブログ内民主党、消えた年金&ウソ公約を徹底追及へ 声明全文から引用はじめ]

2008年4月1日

「消えた年金」問題の解決に向けた民主党声明

 5000万件に及ぶ「消えた年金記録」について、「2008年3月末までに名寄せを完了する」としてきた政府・与党の公約は、ついに守られなかった。

 言うまでもなく年金は、国が国民に加入を義務付け、老後の生活を保障する、国民生活の最後の拠りどころである。したがって、年金保険料の納付記録が消えるという事態は、国民生活の根底を揺るがし、国民の政治不信を決定的にするだけでなく、国家の危機そのものである。

 だからこそ、我々民主党は、長年にわたって隠され続けてきた「消えた年金」問題を粘り強く究明し、政府・与党の責任の追及と問題解決のための提言を繰り返し行ってきた。

 それにもかかわらず、政府・与党は我々の要請をことごとく無視し、当面を糊塗することに汲々としてきた。その結果、5000万件のうち、記録が回復(統合)されたものは、全体の8%、417万件にとどまっている。それでもなお、政府・与党は「ねんきん特別便」の送付をもって「公約は守られた」と開き直り、国の総力で問題を解決しようとはしない。

 その姿勢を転換しない限り、「消えた年金」問題は永遠に解決されず、国民の権利は侵され続けることになる。

 加えて、本日から導入された「後期高齢者医療制度」は、不確実な年金から医療保険料を天引きする高齢者いじめの制度であり、即時撤回すべきである。導入を強行した政府・与党の責任はその二重の意味で極めて重い。

 よって、我々民主党は、政府・与党が率直に公約違反を認め、国民に謝罪し、問題解決の再スタートを切ることを要求する。その第一歩として、まず厚生労働大臣は国民に対して責任を取らなければならない。
 
 そのうえで、①社会保険庁解体までの2年以内に、問題解決のめどをつけるために、官民あげての国家プロジェクトとして取り組む②8億5千万件の紙台帳のほか、埋もれている台帳を探し出し、年金記録を徹底的に訂正する③問題の全体像を正しく把握するため、サンプル調査を行う――などの抜本的対策を直ちに実施するよう求める。

 もし、政府・与党がこれまでの手法の間違いと公約違反を認めず、問題解決を放置し続けるならば、国民生活を守るために、速やかに政権を交代して、我々民主党に問題解決を委ねるべきである。

 [引用おわり]