[写真]公示前に出陣式と応援演説の事務文書のご案内をしながら歩きました。筆者撮影、一部修整。
2泊3日で出張してきました。公示前ということで、政権交代前の2009年のゴールデンウィークに歩いた町を3年半ぶりに歩いてみました。そこにはやはり第3極乱立で、自分自身世論が見えなくなっているという心持ちがあったからです。
選挙事務長さんは3年前と同じ人だし、事務所の事務連絡の郵送や法定ポスターのテープ張りはメドが付いているようなので、出陣式のご案内と野田佳彦総理の応援演説などの事務連絡文書2枚を持って、およそ150戸ほど訪問し、80人~90人の方と話すことができました。一つの選挙区内の一つの町を一日歩いただけですが、自分の中では、公示前情勢をしっかりと描くことができました。
2枚の紙を「受け取れません」と言ったのは一人だけ。罵声を浴びせられることはまったくありませんでした。また、「この辺の町内会は本人がよく回っている」、「つい先日、趣味の会合に来賓で来た」との声があり、本人が回っていると、回るのが楽です。
側溝のふたが欠けていれば、国地方問わず政治への不満があるかもしれません。門構えを拝見すれば、その方の生活環境が推測できます。
感じたのは、30歳代~50歳代を中心とする女性の第46回衆院選への関心が以前より高いように感じること。
すべて「民主党の○○○○事務所の者です」と、「民主党の~~」から言いましたが、「民主党」という単語で拒否反応を示す方は一人もいませんでした。もちろん、自宅をうかがえば、初めは全員が不審そうにこちらを見ます。商店の方は慣れたものです。
「後援会事務所(公示後は選挙事務所)が近くにできましたので」と言えば、半分以上反応してくれます。これは単純に、事務所から遠い地区になると、ご存じない場合が多い。
そして、やはり民主党としては初めて使える、「野田総理が応援演説に参ります」というキーフレーズが受け止めがいいです。演説会場は、選挙区内とはいえ、新幹線駅で0・5駅離れたところなので、午前中は「○○駅前で(やるので当地から遠い場所なので)申し訳ありませんが、野田総理が参ります」と言っていたのですが、午後からは「野田総理が参ります。掛川駅前で申し訳ありませんが」と口上を入れ替えたら、反応はよく、笑いが漏れることもありました。
本人と「娘が小学校中学校の同級生」というお母さんは、「最近テレビで国会中継を見るのが好きなんですよ」。「暇だから、暇だから」と強調されていましたが、娘さんの同級生が(前)衆議院議員となれば、国会中継も身近に感じるのでしょう。ただ、「今回は逆風なので心配している」とのことでした。
また、実際にお宅を回っているので分かるのですが、興味があるけど、なかなか移動が自由でない方がどうしても多いです。こういった方々の世論の反映に関しては、各党、各陣営に加えて、マスコミも気にしてほしいところです。
自民党の候補予定者の室内掲示用ポスターが張ってあるお宅でも温かい反応でした。この辺、自民党はどういう意図で、どういう経緯で室内掲示用ポスターをお願いしているのか、野党3年間でどう変わったのか、今後の論点として興味が残りました。もちろん、自民党の陣営が回ってきたら、もっと温かい反応をされるのでしょうが。
このほか、「事務所前の駐車場が狭いんじゃないの? 近所の駐車場は借りているの?」との70代ぐらいの女性。「民主党がダメになったのは、マニフェストとかじゃなくて体制。小沢さんのようなぶれない人を、野田、菅、岡田、枝野が引きずり降ろしたから応援できない。小沢さんは筋の通った立派な人だ」「本人に言わなくてもいいけど、選対会議でそういう話になったら言っておいて」との70代くらいの男性。この2人は、自民党員だろうと思います。小選挙区二大政党の時代になり、あくまでもしっかりと51%を積み上げるたたかい。もちろん、しっかりと対応しました。2泊3日で、電車と歩きで事務所に行ったのですから当然、駐車場のことは知らないし、選対会議にも出ていません。さすがに、「どうぞお上がりになってお茶でも飲んでゆっくりしていったら」という自民党員にはついぞお会いしませんでしたが、今後は増えるかも。
到着後すぐに、公示前に到着しないといけない郵送物の宛名張りが大量にあって、「どうしたものか?」と思いつつ、4時間ノンストップで張りましたが、後で分かりましたが、突然、大量に新しい名簿をご協力いただいて、大量に新しいラベルシールが印刷されたとのことでした。それと関係あるかどうかありませんが、「きのう職場で○○さんの後援会に入会したばかりよ!」という女性。原子力災害に興味を持っておられ、比例代表では日本未来の党を検討しているというご意思をおっしゃっていました。ただし、党首名、政党名を正確にはご存知ないようでした。「東京工業大学出身の菅直人首相」を高く評価していて、野田さんは松下政経塾だから好きではないとのことでした。ご主人は、自民党陣営の集会に行っておられるとのこと。衆院選は総理を選ぶものですから、と強調したら、安倍さんの国防軍について、主婦仲間が「うちの息子を軍隊にとられたら困る」と猛反発しているとのこと。安倍さんは誤解もあると強調していますが、誤解を招かないよう、誤解を修正するようメッセージを発信するのも政治家の力です。ちょっとこの「国防軍」に関しては、2週間で払拭できないように感じますが、どうなるか。
10歳代後半の女性も選挙には興味があるようで、選挙の話をされて、とてもうれしそうにしていました。大人の階段をのぼったような気になられたようです。安倍元首相は国民投票法の投票権を18歳にしましたが、選挙権の18歳への引き下げは第46期衆議院の議題となってよさそうです。
門構えの立派な2つのお宅では、それぞれ奥様と思われる方が対応していただきました。お1人は、物腰柔らかくも「よく分からないので、受け取っておきます。ご苦労様です」との反応。もうお一方は、「○○さんはよくやっているけど、民主党代表選で○○さんに投票したのは理解できない。ちゃんとそう伝えておいて」とのこと。私も「同感です」と受け止めたうえで、あくまでも一般論として、「衆院選は小選挙区で民主党の当地の公認は1人だけですから」と返答したら、「そうね」とあっさり。そのうえで、「考えておく」とのことでした。もちろん、公示前ですから投票依頼はしていませんが、「考えておく」とのことでした。門構えが立派な方だからハッキリ言えるのかもしれないし、ハッキリ言えるから門構えが立派なのかもしれません。ただ、意見をコンパクトにさっと述べた上で最後に「考えておく」と保留するという方法は、若い方は参考にされたらいいかもしれません。
ただ、今回私が、再認識したこと、あるいは初めて認識したこと。それは「民主党は庶民の党だ」ということです。それは、私たち自由主義経済・穏健なる保守の考え方を持つ者から、社会民主主義・平和主義を信奉する人まで、幅広く「民主中道勢力が結集」した立党時の私たちの基本理念。野田代表が著書を演説で主張する「中道ではない中庸」。そういう難しい話でもいいんですが、それ以上に、民主党を支持し、さらには民主党のこと、本気で心配している方は庶民なんです。それを噛みしめました。あるいは初めて知ったかもしれません。笑顔で「がんばって」。そういって背中を押してくれる人。その方々の多くが庶民であるという現実は、わが党の綱領とかマニフェストとかより重い。
一方で、選挙に初めて興味を持っている30歳~40歳代前後の女性がどう参加するか、参加をうながすか、残り2週間ですが、興味深いところです。いろいろな政党が出てきて、不安になっているという声もお1人。農家の高齢女性がご近所のお友達の女性と話しているところにお声がけしたら、「またにしてください」とのことでしたが、「またにしてください」はこの1回だけでした。玄関で声を潜めたり、ご近所の様子をうかがう方も、当地では1人もいませんでした。それから、立派な門構えだけどインターフォンに蜘蛛の巣というお宅が複数あって、そのうち、お出になったお1人は70代以上の女性で不安そうでした。おそらく一人暮らしなんだと感じます。そういった現状に踏まえて、地域社会の最構築ができる制度づくりが第46期衆議院に求められます。
いかんせん、自民党陣営が回ったら、おそらくもっと好感触なんでしょう。私が見たところ、民主党対自民党の比較第1党争いは五分五分か、巷間言われている通り、自民党がややリードしている公示前情勢でしょう。それにしても、第3極の政党名は1回だけ、正式な呼び名はついぞ1回も聞きませんでした。
まあ、前回はゴールデンウィーク中だったので、鯉のぼりの大きさに驚いた町でした。もちろん3年の間に3歳分お歳をとられ、ちょっとだけ空き家も多くなったかもしれません。しかし、さまざまな統計指標からも、世論を先導する地域と私はとらえていますし、日本の古い良き伝統と、新しい価値観が共有する素晴らしい町です。やはり足腰強く日本は生きていける。私もその一人なので、こういう言い方も変ですが、日本人はねばり強さには感服します。
そしてこれだけ勉強になる戸別訪問を、公示後禁止している公職選挙法138条の問題。国難の時こそ、法律やルールはしっかり守るべきなので、この選挙はこのままでいいです。しかし、公選法138条は第46期衆議院では改正すべきではないでしょうか。岡田克也副総理は11月9日(金)の閣議後定例記者会見で「選挙制度の自由化というか、あまりにも規制の多いこの選挙運動について、何とかしなければという意見は常に出るのですが、結局はなぜか結実しないというのは非常に残念に思っております。戸別訪問なども、戸別訪問すると何か「モノ」を持って行くのではないかとか、現金のやりとりが行われるのではないかとか、そういう極めて国民を信用しない、そういうことで禁止されているとすれば、またとんでもないことでありまして、もっと自由な中で活動が行われるということが必要だと思っています」と述べています。