【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

日豪EPA(日本オーストラリア経済連携協定)の国内実施法案提出へ 関税審議会が財務省に答申

2014年10月02日 21時59分24秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

 
 日豪EPA(日本とオーストラリアの経済連携協定)が閉会中の2014年7月8日(火)に署名されましたが、条約の承認に加えて、条約実施にともなう国内法律整備法案が第187回臨時国会にも提出される見通しになりました。

 法案名は「関税暫定措置法改正案」と「日豪経済連携協定に基づく申告原産品の情報提供法案」。

 17年前の橋本龍太郎首相(自民党総裁)とハワード首相(保守党代表)による文書の取り交わしから始まった日豪EPAですが、豪州産牛肉が日本に浸透しもはや「オージービーフ」という言葉もあえて使わないほど日常生活に浸透したことしになって突如妥結して驚きました。(外務省の経緯のまとめ記事→http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j_australia/index.html)

 その背景には、日米のバイを中心とした環太平洋マルチのTPP交渉に関する何らかの露払い(あるいは先延ばし策)や集団的自衛権による日豪物品役務相互協定から安全保障条約を長期的に見越したパラダイム、防衛装備品の移転などが考えられますが、同国も隣国です。いずれにせよ、米国産牛肉の輸入が一時中断から再開した現在もオージービーフが安く安定して日本の食品スーパーに提供されている日常をみても、日豪貿易はWin-Winの関係、戦略的互恵関係だと考えます。

 この日豪EPA(日豪経済連携協定)の発効に向けて必要な国内法整備について、きのう2014年10月1日(水)、財務省の「関税・外国為替等審議会」(伊藤隆敏会長)が麻生大臣に「経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結に対応した関税率等の改正についての答申」を出しました。

 内容としては
 (1)オーストラリア産牛肉の輸入が激増して国内産牛肉を圧迫しないよう、輸入量に制限をかける「セーフガード」
 (2)原産国表示を明らかにするための書類の5年保存の規制
 (3)(関税がない)飼料用小麦が(関税がある)食料用小麦に転用されないように、承認済み工場などの検査をする

 こういったことについて、国内での実施法律の整備が必要になるようです。

 あまり詳しくないので、答申全文を下にコピペします。財務省のウェブサイトのまとめ記事には、概要も載っています(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/customs_foreign_exchange/sub-of_customs/report/kana20141001.htm) 

 ただ、自由貿易推進論者の私としても、国内法整備というのはなかなか大変なもんなんだな、という感想を持ちました。

 関税定率法改正法案などの日豪EPA国内実施関連法案は今国会、第187秋の臨時国会で提出されることになりそうです。

[財務省ウェブサイト内「
経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結に対応した関税率等の改正についての答申」関税・外国為替等審議会から全文引用はじめ]

- 1 - 

(別紙)
Ⅰ.日豪経済連携協定について
経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定(仮称)(以下「日豪
経済連携協定」という。)は、本年 7 月 8 日に署名された。オーストラリアは、我
が国にとって第 4位の貿易相手国(これまでの二国間経済連携協定相手国の中では
第 1 位)であり、日豪経済連携協定は、我が国にとって初めての先進国かつ主要貿
易相手国との経済連携協定といえる。
また、我が国における最初の経済連携協定である日シンガポール協定が発効し
てから 10 年以上が経過し、現在 13 本の経済連携協定が発効している中、協定で
定められた特恵税率の適用に関する原産地手続等についても、一定の定着が進ん
でいるところである。
こうした状況の下、日豪経済連携協定では、これまで我が国が締結してきた経
済連携協定にはない、以下のような新たな制度が導入されている。
1.原産地手続の「自己申告制度」の導入
経済連携協定締約国からの貨物の輸入に対し当該協定で定められた特恵税率
を適用するためには、当該輸入貨物が経済連携協定締約国の原産品である必要が
ある。
これまで我が国が締結してきた経済連携協定では、輸出締約国の公的機関(商
工会議所等)が発給する第三者原産地証明書を輸入国税関に提出することにより
当該輸入貨物が締約国原産品であることを証明する制度(第三者証明制度)が採
用されていた。
一方、アメリカ、カナダ等の先進国の自由貿易協定においては、特恵税率の適
用において、輸入者等が自ら輸入貨物の締約国原産性を申告する制度(自己申告
制度)が広く導入されている。今般の日豪経済連携協定の相手国であるオースト
ラリアにおいても、これまでアメリカ、チリ、マレーシア、韓国との自由貿易協
定において自己申告制度が導入されている。
この自己申告制度は、特恵税率適用のために原産地証明書を取得する手間が省
け、輸出入関係者の手続が簡素となり、貿易円滑化に資するという大きな利点が
ある。
今般の日豪経済連携協定においては、輸出入を行う事業者等が自己申告制度と
第三者証明制度を選択的に利用できるようにすることで、原産地手続の利便性が
向上するとの考えから、自己申告制度が我が国の締結する経済連携協定として初- 2 -
めて導入されることとなった。
2.牛肉に係る特別セーフガード措置の導入
日豪経済連携協定においては、牛肉の関税引下げに伴いオーストラリア産牛肉
の輸入数量が同協定で定められた一定の数量を超えた場合、関税率を現行水準
(38.5%)に戻す特定の農産品に係る特別セーフガード措置が、我が国が締結する
経済連携協定において初めて導入された。これにより、関税引下げによる国内消
費者の便益の向上と、我が国にとってのセンシティブ品目である牛肉についての
必要な国内産業保護との適切な調和が図られることとなった。
3.飼料用に限定した麦の関税撤廃
また、日豪経済連携協定では、同様に我が国のセンシティブ品目である麦(大
麦・小麦)についても、飼料用に限定し、関税が撤廃された。また、厳格な用途
確認が必要であるため、関税が撤廃される麦は「税関当局の監督の下で飼料の原
料として使用するもの」に限定された。
日豪経済連携協定の締結のためには、上記のような新たな制度を中心に、以下
のとおり国内法令を整備する必要があると考える。
(参考) 経済連携協定の締結と国内法整備について
関税法第 3 条は「輸入貨物(信書を除く。)には、この法律及び関税定率法その他関
税に関する法律により、関税を課する。ただし、条約中に関税について特別の規定が
あるときは、当該規定による」と規定している。このため、経済連携協定に規定する
特恵税率やその適用のための原産地基準等は、別途の国内法上の規定を設けることな
く関税法第 3条ただし書の規定に基づき当該経済連携協定の規定を適用することとし
ている。
他方において、協定を適切に実施するための手続を明確にする必要がある場合や、
協定の義務を国内法化して実施することが協定上予定されているような場合等には、
国内法を整備することとなる。
- 3 -
Ⅱ. 個別の法令整備項目について
1.原産地手続
(1)輸入締約国としての対応
① 輸入貨物の原産性の事後確認手続及び原産性を満たさない場合の措置
日豪経済連携協定において、輸入締約国の税関当局は、輸入される産品が
締約国原産品であるか否かを決定するため、輸入通関時の審査に加え、輸入
の許可後に
・ 輸入者に対する貨物の原産性を示す情報の要請
・ 輸出締約国の権限ある機関又は輸出締約国税関に対する第三者原産
地証明書及び原産品申告書の有効性の確認の要請
・ 輸出者や生産者に対する貨物の原産性を示す情報の要請
・ 輸出者や生産者の施設に対する原産性の確認のための訪問の実施
を行うこと(事後確認)ができることとされており、また、この事後確認にお
いて貨物が原産性を満たさないと認められる場合等に特恵税率の適用を否
認することができることとされている。
これまでに我が国が締結している経済連携協定においても、日豪経済連携
協定と同様に、事後確認に係る手続及び特恵税率の適用を否認することがで
きる要件に関する規定が設けられており、これらの事後確認手続等について
は、関税法第 3 条ただし書の規定に基づき、それぞれの経済連携協定の規定
が適用されると考えられてきたところである。
日豪経済連携協定において採用された自己申告制度においては、輸出締約
国の発給機関による貨物の原産性に係る事前審査手続を不要とし、輸入締約
国の税関当局が事後確認を行うことにより、適正な特恵税率の適用の確保を
図ることとなるため、事後確認の位置付けがこれまでより重要なものとなる。
また、この事後確認において貨物が原産性を満たさないと認められる場合
及び日豪経済連携協定に規定する手続要件が満たされない場合(オーストラ
リアの政府当局が日本の税関当局の訪問の要請について回答を行わない場
合や輸出者又は生産者が十分な情報を提供しない場合等)には、それらを理
由として、特恵税率の適用を否認することとなる。
このような事後確認手続等による結果が、輸入者等の権利・義務に与える
影響を踏まえると、自己申告制度における輸入通関手続を明確化し、輸入者
等の予測可能性の向上を図る観点からも、事後確認手続を関税関係法令にお
いて規定するとともに、原産性を満たさないと認められる場合及び手続要件
が満たされない場合に特恵税率の適用を否認されることがあることを新た- 4 -
に関税関係法令において規定することが適当と考える。
また、上記のとおり、過去我が国が締結している経済連携協定にも事後確
認手続等に関する規定が含まれていることから、当該事後確認手続等に関す
る関税関連法令の規定は、日豪経済連携協定だけでなく、我が国が締結して
いるすべての経済連携協定を対象とする一般的な規定とすることが適当と
考える。
② 輸入申告時の原産品申告書等提出
日豪経済連携協定において、特恵税率適用のためには、
・ 原産品申告書 及び
・ (適当な場合には)当該産品が締約国原産品であることを示す他の証

を、輸入国税関に提出することが必要とされている。
この協定の規定を受け、輸入申告時における提出書類に原産品申告書を
追加することが必要であるとともに、適正かつ迅速な通関を可能とする観
点から、当該輸入貨物が原産品申告書の記載通り原産性を満たしているこ
とを説明するための必要最小限の資料の提出を輸入申告時に求めることに
ついて、関税関係法令において規定することが適当と考える。
(2)輸出締約国としての対応
① オーストラリアの税関当局に対する情報提供等
日豪経済連携協定において、両締約国は、第三者原産地証明書及び原産品
申告書に関する情報を事後確認するために相互に支援することとされてお
り、また、上記Ⅱ.1 .(1)①のとおり、輸入締約国の税関当局は、輸入
される産品が締約国原産品であるか否かを決定するため、輸出締約国の権限
を与えられた機関又は輸出締約国の税関当局に対し、第三者原産地証明書及
び原産品申告書の有効性に関する情報提供を要請することができることと
されている。
この規定に基づき、オーストラリアの税関当局から我が国に情報提供要請
があった場合に、財務大臣が必要な情報をオーストラリア税関当局に提供す
るための規定を法令上設けることが必要と考える。
また、日豪経済連携協定において、相手国に提供される情報は協定実施
のために必要な範囲に限られることや、公共の利益や正当な商業上の利益
等を害するような秘密情報の相手国への提供までは求められないこととさ- 5 -
れていること等を踏まえ、オーストラリアの税関当局から情報提供の要請
を受けた場合であっても、
・ 我が国が提供する情報が目的外に使用されるおそれがあるとき
・ 当該情報提供により我が国の利益を害するおそれがあるとき
・ 当該情報に輸出者又は生産者の秘密を害するおそれのある情報が含
まれており、当該情報をオーストラリア側に提供することについてそ
の者の同意がないとき
等には、財務大臣は、オーストラリア側からの要請に応じないことができ
る旨、法令において規定することが適当と考える。
② 税関職員による資料の提出の求め及び質問検査
オーストラリアの税関当局から貨物の原産性確認のために求められた情
報を我が国税関として適切に収集できるよう、原産品申告書を作成した、又
は原産品申告書の基礎となる書面を作成した輸出者又は生産者に対し、財務
大臣(税関職員)が資料の提出の求めや質問検査をすることができる権限を
新たに付与するとともに、当該資料提出要請や質問検査に正当な理由がなく
応じなかった者に対する罰則を科すること等について、新たに法令において
規定することが適当と考える。
③ 関係省庁との協力
上記の情報提供等にあたっては、我が国及び我が国事業者等への影響等に
鑑み、貿易政策や産業政策を司る関係官庁との緊密な連携を図ることが望ま
しい。
このため、
・ 上記①の情報の提供の際には、財務大臣は経済産業大臣とあらかじ
め協議し、同意を得ること
・ 上記②の質問検査に経済産業省の職員が立ち会うことができること
等について、新たに法令において規定することが適当と考える。
④ 書類の保存
日豪経済連携協定において、原産品申告書等を作成した輸出者又は生産者
は、当該原産品申告書等に係る貨物が締約国原産品であることを示すために
必要なすべての記録を 5 年間保存することとされている。
この協定の規定を受け、オーストラリアにおいて特恵税率の適用を申請し- 6 -
た貨物の輸出者又は生産者のうち、原産品申告書等を作成した輸出者又は生
産者が、輸出された貨物が日本の原産品であることを明らかにするための書
類を 5 年間保存することについて、新たに法令において規定することが必要
と考える。
⑤ 虚偽の原産品申告書等を交付した輸出者又は生産者に対する措置等
日豪経済連携協定において、両締約国は、自国の法令に従って、誤りのあ
る又は虚偽の第三者原産地証明書又は原産品申告書等が使用され、又は送付
されることを防止するための適切な措置を定めることとされている。
この協定の規定を受け、自己申告制度の適正な実施を確保するため、虚偽
の原産品申告書等を交付した者に罰則を科することについて、新たに法令に
おいて規定することが適当と考える。
(3)その他
日豪経済連携協定においては、第三者証明制度と自己申告制度とが併存す
ることに伴い、次の関税関係法令の規定の整備が必要と考える。
・ 第三者原産地証明書を利用して日豪経済連携協定に基づく特恵税率の
適用を受けようとする者が輸入申告をする際に提出することとされて
いる書類に、同協定に基づく第三者原産地証明書を追加。
・ いわゆるAEO制度に基づく特例申告貨物について、当該譲許の便益
の適用を受けようとする特例輸入者が保存することとされている書類
に、同協定に基づく原産品申告書及びその他の資料を追加。
以上のような法令面の整備のほか、今後の我が国における自己申告制度の
実務的な運用に当たっては、自己申告制度導入の目的や、諸外国における自
己申告制度の運用の実態等に鑑み、制度の適正な執行の観点及び貿易手続の
簡素化・効率化の観点の双方に十分配慮することが適当と考える。
また、自己申告制度は我が国にとって新たな制度の導入となることから、
関係者等への新制度の丁寧な周知や、我が国事業者等に対するオーストラリ
ア税関による事後確認に関する我が国事業者等への支援にも十分配慮するこ
とが適当と考える。
- 7 -
2.牛肉に係る特別セーフガード措置
(1)牛肉に係る特別セーフガード適用手続の新設
日豪経済連携協定において、オーストラリア産牛肉の関税引下げに伴い、
その輸入数量が協定で定められた一定の数量(注)を超えた場合、関税率を現
行水準(38.5%)に戻す特別セーフガード措置が規定された。物品を特定し協定
の締約相手国からの輸入数量を基準に発動を行う特別セーフガード措置は、
経済連携協定としては今回初めて導入されるため、同措置発動のための具体
的な輸入数量の算出方法等、具体的な適用手続に係る規定が国内法に存在し
ない。
したがって、特別セーフガード措置の発動に係る規定とともに、輸入数量
算出に使用する統計の指定や、オーストラリア産牛肉の輸入実績の告示等、
具体的な適用手続を関税暫定措置法(以下「暫定法」という。)上に新たに規
定することが必要と考える。
(注) 協定発効 10 年目までの、各年の具体的な数量を協定で規定。
生鮮等牛肉:初年度 13 万トンから、10 年目に 14.5 万トンまで、毎年段階的に増加。
冷凍牛肉 :初年度 19.5 万トンから、10 年目に 21 万トンまで、毎年段階的に増加。
(2)既存の生鮮等牛肉及び冷凍牛肉に係る関税の緊急措置との調整
オーストラリア産牛肉については、暫定法第 7 条の 5 に規定する既存の全
世界向けの関税の緊急措置(注 1)(以下「緊急措置」という。)を適用しないこ
とが協定上規定されている。
現行の制度を維持した場合、オーストラリア産牛肉の輸入増加が原因とな
って緊急措置を発動することとなれば、日豪経済連携協定の適用を受けて輸
入されたオーストラリア産牛肉は税率引上げの対象とならず、その他の国の
みが、税率引上げの影響を受けることとなる。このような取扱いを解消する
ため、オーストラリア産牛肉を除いた輸入数量(注 2)が基準となる水準を超え
ることを緊急措置の発動条件とすることが適当と考える。
なお、上記のみを条件とした場合、全世界からの輸入数量は増加していな
いにもかかわらず緊急措置が発動され、消費者等に対して不必要な負担を与
える可能性がある。このため、全世界からの輸入数量が基準となる水準を超
えることという条件についても、緊急措置の発動条件として維持しておくこ
とが適当と考える。
(注 1) 全世界からの生鮮等牛肉又は冷凍牛肉の累計輸入数量が、基準となる一定の水
準(対前年度比 117%)を超えた場合、暫定税率(38.5%)によりWTOでの譲許税- 8 -
率(50%)より低い水準まで引き下げている実行税率を、譲許水準まで戻す措置で
ある。
現行制度では、緊急措置の発動条件を、累計輸入数量が前年度の輸入実績又は
米国におけるBSE発生前の水準である平成 14 年度及び平成 15 年度の平均値の
いずれか大きい方と比べて基準となる水準を超えることとする特例措置を設け
ている。
なお、緊急措置は、暫定税率に係る措置と一体として設けられたものであり、
本特例措置を含め暫定税率と一体的に年度改正において検討を行うことが適当
である。
(注 2) 経済連携協定に基づく関税割当(日メキシコ経済連携協定及び日チリ経済連携
協定)の適用を受けた牛肉の輸入数量も除く。
3.飼料用麦の関税撤廃に伴う措置
(1)麦が飼料の原料として使用するものであることを担保する措置(承認工場制
度)の新設
日豪経済連携協定において、オーストラリア産の麦のうち、税関当局の監督
の下で飼料の原料として使用するものについては関税が撤廃されることから、
税関において、麦が飼料用に使用されたことの確認等を行うための制度が必要
となる。麦は、これまで政府による輸入(いわゆる国家貿易)により一元的な管
理が行われてきたことや、制度の利用が見込まれる製造工場の大部分が既に関
税定率法第 13 条の飼料用とうもろこし等を扱う承認工場となっていることか
ら、制度を利用する事業者の利便の観点等を踏まえ、同法に規定する承認工場
制度(注)と同様の制度を、暫定法上に新たに設けることが適当と考える。
(注) 関税定率法の規定により、特定の原料品を輸入して、法律で定められた製品を製
造した場合に、当該原料品の関税を減免税する制度。税関長の承認を受けた工場に
おいて、一定期間内に当該製品を製造すること等が必要とされる。また、帳簿の備
付や製品製造後の税関への届出等が必要とされる。税関職員による当該製品や帳簿
書類の検査等が行われることにより、原料品が特定の製品製造に使用されたことが
確認される。
(2)既存の特別緊急関税制度(Special Safeguard:SSG)との調整
オーストラリア産飼料用麦については、暫定法第 7 条の 3 及び第 7 条の 4 に
規定する数量ベースSSG及び価格ベースSSG(注 1)を適用しないことが協
定上規定されている。 - 9 -
現行の制度を維持した場合、日豪経済連携協定の適用を受けて輸入されたオ
ーストラリア産飼料用麦の輸入増加が原因となって数量ベースSSGを発動
することとなれば、オーストラリア産飼料用麦は税率引上げの対象とならず、
その他の麦のみが税率引上げの影響を受けることとなる。このような取扱いを
解消するため、オーストラリア産飼料用麦を除いた輸入数量が、輸入基準数量
(注 2)を超えることを数量ベースSSG発動の可否を判断するための条件とす
ることが適当と考える。
なお、上記のみを条件とした場合、全世界からの輸入数量は増加していない
にもかかわらず数量ベースSSGが発動され、消費者等に対して不必要な負担
を与える可能性がある。このため、全世界からの輸入数量が輸入基準数量を超
えることという条件についても、数量ベースSSG発動の可否を判断するため
の条件として維持しておくことが適当と考える。
(注 1) 数量ベースSSGは、輸入数量が輸入基準数量を超えた場合に関税率を引き上
げるものである。価格ベースSSGは、個別の輸入申告毎に、課税価格が一定の
水準を下回った場合に関税率を引き上げるものであり、個別の価格ベースSSG
の発動は、他の輸入申告に影響を与えないため、オーストラリア産飼料用麦の関
税撤廃に伴う数量ベースSSGのような調整は不要。
(注 2) 輸入基準数量は、過去 3 年間の平均輸入数量を基に過去 3 年間の国内消費に対
する輸入割合や国内消費の変動量を勘案して算出される。
4.その他
(1)特定の用途に供することを要件として関税の譲許をした物品
日豪経済連携協定において、高糖度粗糖(精製用)、ナチュラルチーズ(プロ
セスチーズ原料用・シュレッドチーズ原料用)等については、特定の用途に供
することを要件として特恵税率を適用することとされていることから、関税暫
定措置法施行令における特定用途向け特恵税率適用に係る当該物品の指定等、
所要の規定整備を行うことが必要と考える。
(2)一定の数量を限度として関税の譲許をした物品
日豪経済連携協定において、麦芽、オレンジジュース等については、一定の
数量を限度として協定で定められた特恵税率を適用する経済連携協定に基づ
く関税割当制度を導入することとされていることから、経済連携協定に基づく
関税割当制度に関する政令における当該物品の指定等、所要の規定整備を行う
ことが必要と考える。 - 10 -
また、これらの物品の中には、各輸入者への割当数量が、当該輸入者による
国産品の使用量に応じた一定数量を超えないことを条件としているものがあ
ることから、制度の適正な運用のため、関税割当制度の所管官庁と物資所管官
庁との適切な連携が可能となるような仕組みを設けることが適当と考える。

[全文引用おわり] 


JA全中廃止へ「農協法改正法案」を第189通常国会に提出へ 第187秋の臨時国会で首相・農相答弁

2014年10月02日 21時29分23秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【参議院本会議 2014年10月1日(水)】
【参議院本会議 2014年10月2日(木)】

 第187秋の臨時国会の代表質問で、参議院自民党の伊達忠一幹事長(北海道選挙区)、野村哲郎さん(鹿児島選挙区)の2人がともに、JA全中の廃止も含めた農協改革に反論しながら、安倍晋三首相(自民党総裁)と西川公也農相に質問。ほんのわずかに語尾に逃げ場はつくりながらも、9割以上の断定調で、農協法改正法案を第189回通常国会(2015年1月召集)に提出することを明言しました。

[追記 2015年1月6日 午前9時]
昨年末に衆議院解散があり、第188回特別国会が開かれました。このため、2015年1月召集の通常国会の回次は「189回」となりました。タイトルを「189回」に修正しました。[追記終わり]

 野村哲郎さんは「私ごとですが、35年間JA中央会に勤めてきました。(安倍官邸の)規制改革会議から突然全中廃止の報告が出て驚きました。もちろん私も昭和29年(1954年)の法律施行時の通りでいいとは思わず、時代に合わせた変化が必要ですが、唐突としか言いようがありませんでした」と批判しました。

 そして、野村さんは、「聖徳太子の17条の憲法では、和をもって貴しとなす、と言います。JAグループも人の和によって有機的に結びついた協同組合です。農協組織内での自己改革すべきであり、政府が押し付けるべきではありません」と語りました。

 初日の伊達忠一さんも「ことし5月に(安倍官邸の)規制改革会議からJA全中の廃止の勧告があったときは、耳を疑いました」と語りました。

 西川農相の答弁は「農協改革はあくまでも、農家の所得を増やし、農村のにぎわいを取り戻すために、農家が主体となって将来に安心感をもてるようにするものです。(5月の勧告を踏まえて)与党・自民党が6月にとりまとめた方向性を真摯に受け止めつつ、担い手に評価してもらえるJAをつくるために、系統農協内の自主的な議論をみながら、次期通常国会に法案を提出します」と答弁しました。

 これを聞いて分かるのは、JA改革と言っても、全中とそれ以外の系統JAで、明らかに考えの相違があると考えられます。そして農水省は、全中に上納金を支払っている単位農協などの世論をより大事にしており、それを頼りに突破できると考えているように、質疑答弁からは感じました。

 自民党本部内でのコップの中の争いが高まりそうです。いずれにせよ、閣議決定までは高みの見物ですし、党本部内で疲弊してもらって結構ですが、国会での農業改革のタブーがすっかり少なくなってきた気がします。自由に物を言える権利は、農業者みずから確保しなければなりません。


感染症予防法改正案を今第187臨時国会に提出へ 塩崎厚労相が答弁

2014年10月02日 20時37分58秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

【参議院本会議 2014年10月2日(木)】

 代表質問2日目が行われ、自民党から2人目の野村哲郎さんが質問しました。

 この夏は「デング熱」というのが東京・代々木公園の周りで伝染するという出来事がありました。

 これも踏まえて、感染症対策の質問がありました。

 1998年に再整備した法律、「感染症予防法(感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律)」(平成10年10月2日法律114号)で、まとまっています。

 塩崎恭久・厚生労働大臣は「感染症対策の強化のために、正確な情報の収集、分析、発信のために、献体を集めることが大事です。感染症予防法の改正案を今国会に提出します」と語り、今第187回秋の臨時国会(11月30日まで)に感染症予防法改正法案を提出すると明言しました。

 厚労委は、労働者派遣法改正法案(第187閣法1号)が提出されており、審議順は衆院側理事会で話し合われる見通し。

  改正法案の提出については、けさ一部で報道されていました。

 感染症予防法を初めて読みましたが、基本的には県知事への委任が多い法律です。基礎自治体では、改正地方自治法で、中核市と特例市が一本化されたので、人口20・1万人の新中核市(旧特例市)が保健所を運営しなければならず、「負担が重いとの声が出ている」(前国会での日本共産党の塩川鉄也・衆議院総務委員)ようです。

 塩崎答弁はありませんが、報道では、「第1類感染症」と「第2類感染症」が県知事が献体を病院などから提供してもらいやすくする法改正のようです。第3類に「コレラ」、第4類に「狂犬病」があり、これはその対象外となるようです。興味深いし、危機管理もありますので、感染症予防法の第6条は、次のように分類しています。

[感染症予防法第6条の全文引用はじめ]

第六条  この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。

2  この法律において「一類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  エボラ出血熱
二  クリミア・コンゴ出血熱
三  痘そう
四  南米出血熱
五  ペスト
六  マールブルグ病
七  ラッサ熱
3  この法律において「二類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  急性灰白髄炎
二  結核
三  ジフテリア
四  重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)
五  鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH五N一であるものに限る。第五項第七号において「鳥インフルエンザ(H五N一)」という。)
4  この法律において「三類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  コレラ
二  細菌性赤痢
三  腸管出血性大腸菌感染症
四  腸チフス
五  パラチフス
5  この法律において「四類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  E型肝炎
二  A型肝炎
三  黄熱
四  Q熱
五  狂犬病
六  炭疽
七  鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H五N一)を除く。)
八  ボツリヌス症
九  マラリア
十  野兎病
十一  前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病であって、動物又はその死体、飲食物、衣類、寝具その他の物件を介して人に感染し、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの
6  この法律において「五類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一  インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)
二  ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)
三  クリプトスポリジウム症
四  後天性免疫不全症候群
五  性器クラミジア感染症
六  梅毒
七  麻しん
八  メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
九  前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く。)であって、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの

[終わり]

 ということで、5類感染症の最後に省令委任がありますが、ほとんど法制化されています。

 また、この法律の前文は、感染症予防と国政府、県など「公」の責務を描いた名文に感じました。ちょっと全文引用してみます。

[感染症予防法前文を全文引用はじめ]

 人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。
 医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。
 一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
 このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。
 ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。

[終わり]