男女雇用機会均等法と労働者派遣法の成立30年を前にした、第187秋の臨時国会。
きょう2014年10月31日(金)、女性の労働法制に大きな一歩となりました。
衆議院厚生労働委員会(渡辺博道委員長=自民党)は、午前9時開会の予定でしたが、1日目の質疑は開かれませんでした。これは朝の理事会に与党・公明党が単独で修正案を出そうとした(出した)ことによる混乱だと報じられています。内閣提出法案の与党修正は、あるとしても、質疑の途中か、採決の直前であり、趣旨説明直後に提出することはありません。
長く理事をつとめる古屋範子さんは、昨年7月に引退した、松あきら参議院議員のあと、党副代表(兼)女性委員長をしており、公明党各級女性議員1000人のトップにあたる政治家です。
報道によると、テンポラリーワークの原則(派遣労働とは一時的、臨時的な働き方であると明記すること)について書き込むようですが、それではこの改悪法案の「穴」を埋めることはとうていできません。衆・委員会段階で与党の足並みが乱れたことで、廃案に大きく近づきました。
【衆議院本会議 2014年10月31日(金)】
午後の衆議院本会議では、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」(187閣法22号)が有村治子・女性活躍大臣から趣旨説明され、8会派が代表質問しました。衆議院本会議での1週間の登壇回数は、内々の申し合わせがありますが、少数会派もこの法案を重視している証拠です。
[画像]趣旨説明する有村治子女性活躍大臣、2014年10月31日(金)、衆議院本会議、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
8人の質疑者のうち、6人が女性となりました。おそらく憲政史上(婦人参政以降)最多の女性質問者と思われます。
民主党の郡和子さんは「結党以来男女共同参画をめざしてきた我が党も大いにエールをおくりたい」としながらも、「この法律案は、正社員との夫と正社員の妻を前提にした法律案ではないか」として、審査中の労働者派遣法改悪案とあわせて質問しました。
維新の党の上西小百合さんは、手振りとノールックを交えた質問演説で、「男女雇用機会均等法の施行で、女性の長時間労働が増え、就職を断念する人が出ている。長時間労働と年功序列により男性有利な賃金体系になっている」と語りました。
公明党の高木美智代さんは「すべての女性が輝くプランを、公明党は政府に提出した」と述べました。
次世代の党の杉田水脈さんは、「子育てに専念したいのに働かなければならない女性労働者が多い。冷戦後の男女共同参画の美名のもとに、悪しき男女平等の思想がはびこった」としました。
日本共産党の高橋千鶴子さんは「職業生活と家庭生活の両立と法律案ではうたっているが、実際には職業生活だけを見据えた、女性の活躍ではなく、女性の活用法案ではないか」と指摘し、「睡眠不足で働く、輝きたい女性を際限なき長時間労働に追い込む法案だ」と強調しました。
生活の党の青木愛さんは「在宅勤務の推進が必要だ」としました。
上記の女性活躍推進法案の趣旨説明前に、採決がありました。
日程第一は、財務金融委員長の報告で、「日豪EPA国内実施2法案」(187閣法11号12号)で、関税とトレーサビリティについて、賛成多数で可決し、参議院に送りました。今国会の衆議院可決第1号。
日程第二は、外務委員長の報告で、「日豪EPA(日本とオーストラリアの経済連携協定)条約の承認を求める件」(187条約1号)。起立多数で可決し、参議院に送付。ただし、日本国憲法第61条の「条約30日ルール」で、これで、日豪EPAの今国会での両院承認成立が確定しました。このため、条約発効も確定。オーストラリア議会でも手続きが進んでいることから、今年度内にも発効する運びとなりました。
午前中に衆院の各委員会で6つの法案が可決しましたが、緊急上程はありませんでした。
【衆議院国土交通委員会 同日】
重要広範議案となっている「土砂災害防止法改正案」(187閣法19号)は全会一致で可決しました。これに先立ち、民主党・みんなの党2党が修正案を提出し、民主党の後藤祐一さんが自治体が危険個所を「指定することができる、という政府案を、しなければならない、に改める」などと趣旨説明しましたが、維新の党までしか広がらず、否決されました。附帯決議がつきました。
【衆議院災害対策特別委員会 同日】
放置車両をどかせる、「災害対策基本法改正案」(187閣法18号)が全会一致で可決しました。
【衆議院内閣委員会 同日】
人事院勧告を完全実施する「国家公務員一般職給与法案」(187閣法6号)、「同特別職給与法案」(7号)、「同退職手当法案」(8号)が、自民党、公明党、民主党の賛成多数で可決しました。有村治子・公務員制度担当相が答弁。
この後、山谷えり子国家公安委員長が「犯罪による収益の移転防止に関する法律の改正案」(187閣法15号)と「国連安保理決議1267にもとづくテロリスト財産凍結特別措置法案」(16号)を趣旨説明し、散会しました。
【衆議院法務委員会 同日】
テロ資金の提供者処罰法改正案(183閣法30号)が引き続き審査され、民主党が「テロ企図者、1次協力者、2次協力者のうち、これまでの法律で検挙者が出ていない2次協力者に対する罰則が、改正法案は厳しすぎる」として修正案を出しました。
閣法と民主党修正案が同時に審査され、維新の党の丸山穂高さん、井出庸生さんの両1期生からの質問に答える格好で、民主党の横路孝弘さんが答弁席から答弁しました。
[画像]答弁席から答弁する、修正案提出者の横路孝弘さん。
いまだ政府の政務三役の経験がない、横路さん、はつらつとした答弁に感じました。
委員長は質疑の終局を宣言したうえで、採決はせず、散会しました。
【衆議院文部科学委員会 同日】
原子力損害賠償の補完的な条約の国内実施法案(187閣法27号)、原子力損害賠償法改正案(28号)が趣旨説明され、そのまま、与党の質疑がされました。
審議によると、「CSC条約」と略すようで、電力会社が国に積立金を払って、賠償にそなえることができるようです。原子力発電所の輸出のために必要な法律案のようです。
【衆議院経済産業委員会 同日】
地方創生のひとつに位置づけられている、「官公需の中小企業への優先的発注法案」(187閣法4号)が宮沢洋一経産相から「アベノミクスを全国津々浦々へ」と趣旨説明され、そのまま与党の質問がされました。
【衆議院地方創生に関する特別委員会 同日】
総理入り、NHK入りで、午前9時40分から開かれ、「まち・ひと・しごと創生法案」(187閣法1号)と「地域再生法改正法案」(2号)が審議されました。委員長は、総理入り質疑の終局だけ宣言して、来週に持ち越しました。また、維新の党の委員から、同日、民主党・維新・みんな・生活4党で、「地方一括交付金復活法案」を議員立法で提出した、と発言がありました。
【衆議院環境委員会 同日】
中間貯蔵・環境安全事業株式会社法案(187閣法5号)が全会一致で可決しました。成立すれば、「30年後に福島県外で最終処分」が法律や附帯決議に書き込まれることになります。いわば、福島県の佐藤雄平知事と内堀雅雄副知事(次期知事)の国への働きかけを反映した「雄平・内堀法」という位置づけができそうです。
【衆議院安全保障委員会 同日】
一般質疑のみで終わりました。
江渡聡徳防衛大臣が、ようやく「Tさん」を『高橋さん」と呼び始めました。民主党の大串博志さんが確定申告書の提出を迫りました。民主党の津村啓介さん、維新の党の足立康史さんの両理事が連携して、たびたび審議が止まりました。足立さんの質問に対して、公明党の石川博崇・防衛政務官(参議院)が答弁し、「7月1日の閣議決定を踏まえた日米ガイドライン(日米防衛協力のための指針)で、周辺事態が削除されると決まっていない」「与党協議会(公明党と自民党)は7月1日の閣議決定以降は一度も開かれていない」と答弁しました。
このように、重要広範議案が委員会で可決し、条約の発効が確定しているのに、けさの新聞はどこも、「政治とカネで国会が停滞」と書いています。私自身、日経新聞政治部出身者として、たいへん不本意です。おそらく現場の記者にも、不本意な人がいるでしょう。前大臣の特捜部捜査のえいきょうなど、まったく感じませんでした。
きょう午後1時50分過ぎには、日銀が追加の金融緩和を決定する、という驚くべきニュースも入ってきました。この時間、日本経済新聞社は午後1時30分スタートで、本社内ホールで、「景気討論会」を開いていたはずです。 追加緩和のニュースが途中で入ってくる時間帯で、討論会をしても意味がありません。
政治部、社会部、イベント部門など新聞社の報道機能が落ちてきているように感じます。また、今国会では、新聞記事が、下仁田ネギの下ネタネギの言い間違え、SM問題、汚らわしい場所発言など下ネタが増えています。記者がストレスを感じている証拠です。会社員なんだから、12月になれば、ボーナスもらえるんでしょ。うらやましいですよ、ボーナス。給料に関係なく、しっかりやってほしいし、それが嫌なら、起業すべし。
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