【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

首相「一級市民、二級市民」「正社員ゼロ法案では絶対にない」労働者派遣法改悪法案が審議入り 衆本会議

2014年10月28日 17時14分44秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

【衆議院本会議 2014年10月28日(火)】

 労働者派遣法改悪法案(187閣法3号)が、ついに審議入り。直接本会議場に傍聴に行ってきました。かなり傍聴者は多かったのですが、この法案に興味を持つ傍聴者はほとんどいなかったようですが、私としては、逆に、私がしっかりとしなければと意気軒昂になりました。

●テンポラリーワークの原則、法案で落としたのに、趣旨説明演説で強調ーー塩崎厚労相

 塩崎恭久・厚労大臣は、趣旨説明演説の皮切りに、「この法律案は、派遣労働を臨時的、一時的な働き方であるという原則」、いわゆるテンポラリーワークの原則を明確にするものだ、と演説。 ところが、これは、厚労相の答申にもとづき、労働政策審議会が建議した文章に入っていたのに、法律案で落ちています。今国会に出し直した法案は1文字変えただけなので、入っていないのに、趣旨説明演説の冒頭に入ったのはどういうことか。委員会での審議が楽しみです。(関連エントリー

内閣法制局部長が異例の暴露、「派遣は一時的な働き方だ」との答申「厚労省が法案から省く」 参・厚労委



 塩崎大臣は「一部をのぞき、(来年)平成27年4月1日に施行する」と述べました。

●安倍首相、「正社員ゼロ法案や生涯ハケン法案では絶対にありません」「一級市民、二級市民といった決めつけは不適切だ」 

 大臣の辞任から8日たち、安倍首相が少し弱気に感じられました。

 首相は与党議員の質問に答えて「正社員ゼロ法案や生涯ハケン法案では絶対にありません!」とのっけから強調。ところが、きょうの本会議で公明党席からはほとんど拍手がありませんでした。維新の柿沢さんが「労働者を安易に使い捨て、1級市民、2級市民の階層社会になる」との質問に、安倍首相は「1級市民、2級市民といったきめつけは不適切だ」とわざわざ、柿沢さんの表現をなぞらえて、否定しました。

 首相は希望して派遣労働をする人と、正規雇用をのぞむ派遣労働者(不本意派遣)の対応について、法律案は、派遣を希望する人には「均等待遇」に近づき、不本意派遣には「正社員の道が開かれる」法案だと、ぬけぬけと演説しました。

●民主党は菊田真紀子幹事長代理が廃案に追い込むと表明、共産党も。

 民主党は菊田真紀子幹事長代理が質問に立ち、「多様な働き方を否定するものではない」と語りながら、6割が正社員になりたい不本意な派遣労働だと指摘。そして「6割が女性だ」として「派遣労働者の中には、セクハラやパワハラにあっても、泣き寝入りしている人がいる」とし、育児休業の取得率も4%にとどまっている、と女性の貧困につながっている点を説明しました。そのうえで、「民主党は改悪を絶対に阻止する」とし、女性の輝く社会をスローガンにかかげる安倍自民党を批判したうえで、「我々民主党は渾身の力でたたかうことをお誓いし、代表質問とします」と強い決意を表明しました。

 共産党の高橋千鶴子さんも廃案を主張し、「紙切れ1枚で解雇され物のように捨てられるのが派遣労働の本質だ」「労働法制は人間らしい働き方を保障する最低限のルールに過ぎない」としました。

●野党の対応で注目される同一労働同一賃金の原則の法案、首相らは年功序列職能給ではできないとの認識

 野党の対応としては、維新の党、みんなの党、次世代の党の3党に、一部賛成論があり、野党共闘には、今後の対応が注目されます。この3党は規制緩和を重視しますが、この法案は、労働者派遣業者にとっては規制強化であり、「マネキン紹介所」など地方の小規模業者は女性経営者が活躍している分野です。女性の輝く社会という安倍内閣の基本方針ともたがっており、特定の大企業の意向にもとづく法案であることは明らかです。

 そこで、ILO憲章前文やILO条約100号の「同一労働同一賃金の原則」をいかして、維新の党の柿沢未途さんが「同一労働同一賃金推進法案を近日中に議員立法で提出します」と明言しました。柿沢さんは、「年功序列の職能給体系を変えていく必要がある」と付け加えました。塩崎厚労相はみんなの党の中島克仁さんへの答弁で「年功序列の職能給が中心のわが国では、すぐに均等待遇とするには、乗り越えるべき壁がある」と語りました。中長期的課題として同一労働同一賃金・均等待遇すべし。ただ、来年4月1日施行の法案の「対案」とするのは、同一労働同一賃金法案は難しく、海江田万里民主党代表もゆうべ2014年10月27日の定例記者会見で「独自提案と呼んでいます」としています。ただ、民主党と維新のていねいな共同提案の動きは期待できそうです。

【参議院厚生労働委員会 同日】

 先の通常国会で、参議院で時間切れとなった「有期雇用の5年から10年への延長の特別措置法案」(186閣法48号)が採決され、自民党、公明党、維新の党の賛成、民主党、共産党、社民党の反対で、可決しました。本会議で可決後、衆院に送付されます。大学教員や研究所研究員が中心ですが、他の業務にも適用される可能性が審議で指摘されました。施行は来年4月1日。

関連エントリー)

◎自民党政府、労働者派遣法改正案を提出、生涯派遣で一生搾取の「リンカーン前米国」化の奴隷法案を許すな


◎2013年4月4日から「2年間」で「2%」を日銀総裁が撤回 「誤解があったら訂正」大久保勉さんただす

2014年10月28日 11時06分57秒 | 第187臨時国会2014年地方創生国会

[画像]日銀の黒田総裁、ちょっとおつかれかな?・・・2014年10月28日(火)午前10時台、参議院財政金融委員会。(http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=2784&type=live)

 日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁は、2013年4月4日(木)の就任後初の金融政策決定会合後の記者会見で、

日本銀行は、本日、消費者物価の前年比上昇率 2%の「物価安定の目標」を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、「量的・質的金融緩和」を導入することを決定しました

まず、2%の「物価安定の目標」を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現することを明確にコミットし、そのための枠組みとして、操作目標を「マネタリーベース」とする新しい金融調節方式を導入しました。第 3 に、量的にみても、質的にみても、これまでとは全く次元の違う金融緩和を行うということです。まず、量の面では、先程申し上げたマネタリーベースでみると、2 年間で倍増することになります」

 と語った、いわゆる「2年で2倍で2%発言」(黒田バズーカ砲、異次元緩和発言)について、

 2014年10月28日(火)午前10時台の、参議院財政金融委員会で、

 「誤解があったとすれば、訂正しなければならない」と答弁しました。

 これは、民主党の大久保勉さんが、2年程度という期間が、「2015年度中」という表現に変わってきており、2015年度中とは、2016年(3月や)4月のことだから、すでに「2年間」という期間が変わっていると指摘したものです。投資銀行取締役出身の大久保さんは、「伝統的な日銀文学だ」と批判しました。

 岩田規久男副総裁や、雨宮理事らも黒田総裁と同席して答弁。岩田副総裁は「電車の時刻表のようにきちっとはできない」とも語りました。

 岩田さんは民間出身なので、あれですが、正副総裁がとても憔悴した表情のようにも見られました。

 今週も日銀金融政策決定会合を迎えます。

 言行不一致はいけませんが、アベノミクスの重大な歴史的局面を迎えているようです。

  もちろん、すべての責任は、自由民主党総裁、安倍晋三内閣総理大臣にあります。

 大久保質問は、エントリー投稿の午前11時時点でも現在続いています。散会後に、ビデオで見ることもできます。

(このエントリーは、速記なので、未定稿です。マーケット利益関係者は、内容はご自身でご確認いただければと思います。リツイート、シェアなどは筆者としてはOKです)