[写真]外務省の日の丸、昨秋撮影。
●安保法にもとづき地球の裏側で日本自衛隊が米軍に弾薬を提供する後方支援条約が来週から再来週に改定へ
ことし平成28年2016年3月に施行した安保法(平和安全法制)にもとづき、地球の裏側で米軍に日本自衛隊が弾薬などを提供する後方支援の手続きを定めた条約が、来週の2016年8月下旬から再来週9月上旬にかけて、岸田文雄外相とケネディ駐日米大使が署名する見通しとなりました。
2016年8月19日付日経新聞1面が報じました。
条約は、日米ACSA(日米エーシーエスエー)改定議定書。
日本語での正式名称は、「日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との協定(平成8年6月28日条約4号)」。
当ブログがきょねん2015年10月ないしことし3月にかけて報じた記事(
自衛隊・米軍「物品役務協定条約(ACSA)」の改定議定書、2016年秋以降に先送り【追記有】
=全文を後掲=)のように、やはり、3月の安保法施行後、第24回参院選(2016年7月10日)での争点化を避けて、先送りした、との観測が正しかったようです。
外務省の日米ACSAの情報ページはこちらをクリック。(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/acsa/)
●条約には「存立危機事態」などの定義を盛り込むものの、条文そのものの修正は小規模か
条約の改定は、まずその第1条で、「周辺事態」の定義を定めていることから、安保法にもとづき、これを削除し、存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態の3つの事態を書き込み、定義すると思われます。
ただ、現行条約は、その第2条で、「政府は、【その権限の範囲内】で、要請された後方支援、物品又は役務を提供することができる」とあります。憲法解釈が変更され、安保法が施行したことで、「政府の権限」が大きく変わっており、条約そのものの文章の修正は小規模にとどまるとみられます。
●通貨による償還など決済方法も定めるため、大平3原則にもとづき、国会提出へ
条約はその第10条で「後方支援、物品又は役務の要請、提供、受領及び決済の実施については(略)手続取極にのみ従う」としています。「手続取極」では、物品の決済に「通貨による償還」ができるとして条約を裏打ちしていることから、日本国政府の財政措置になるため、国会で「条約の承認を求めるの件」が第192回秋の臨時国会(9月下旬召集)に提出されると思われます。
安保法に先行した2015年日米防衛協力のための指針いわゆるガイドラインは、両軍の協力の指針に過ぎず、大平3原則(法律、財政、高度に政治的)にもとづく条約ではないとの判断から、国会には提出されていません。
●集団的自衛権に関する初めての条約は衆議院のみがヤマ場
2014年7月1日の解釈改憲から始まった集団的自衛権の法整備は最終局面となります。ただ、国会での条約承認を求めるの件は、憲法の規定上衆議院通過後30日で自動的に承認されます。そのため、第192回秋の臨時国会での審議は、衆議院を通過したとたんに事実上終わります。条約の承認を求めるの件が採決で否決されたことは国会史上ゼロ。そのため、第192回秋の臨時国会で、野党が争点化する場合も、衆議院で強行採決されれば、それでおしまいとなります。
●日豪ACSAも近く改定へ
ACSAは、日米ACSAのほかに、日豪ACSAもあり、こちらも早々に改定されるでしょう。また、新しく、「日英ACSA」をつくろうという声が、日英外務・防衛両省にあります。
[当ブログ内記事から全文引用はじめ]
(初投稿は2015年10月31日午前6時)
日本とアメリカの2国間条約である、「日米物品役務相互提供協定条約」(ACSA)の改定議定書が提出される見通しとなりました。
2015年日米ガイドラインと安保法に付属した条約で、すんなり両院承認されるのか、それとも政局の道具になるのかは、平成28年2016年通常国会の国対責任者に委ねられることになりそうです。
【追記 2016年3月3日】
改定は、第24回参議院議員通常選挙明けの、2016年秋以降の国会に先送りされました。
【追記終わり】
現行のACSAは、第6条の有事の後方支援で、物品の提供について、「日本自衛隊の武器もしくは弾薬の提供または米軍の武器システムもしくは弾薬の提供が含まれるものと解してはならない」との表現で、除外しています。2015年ガイドラインと安保法で、日本自衛隊から米軍への弾薬の提供ができることになりましたので、ここは改定されるでしょう。
このほか、条約中の「周辺事態」の言葉は、2015年ガイドライン・安保法で、「重要影響事態」と書き直されると思われます。
また、第7条では決済として、物品の提供を受けた場合は、物品または通貨で返す(相互融通する)ことになっています。また役務の提供については、決済方法を事前に合意し、その対価には消費税がかからない「軽減税率」を定めています。この条項がどうなるか注目したいところです。
日本はオーストラリアとも、物品役務相互提供協定条約を結んでおり、これにより「準同盟国」と呼ばれていますが、日豪ACSAがどうなるかは不明。
2016年通常国会は、前会で審議され無かった2国間条約3本が継続で審査されるはこび。
[当ブログ内記事から全文引用終わり]
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