【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[きょうの国会]学校法人加計学園特区で参考人質疑も新事実出ず 第193回国会閉会中審査

2017年07月10日 17時35分51秒 | 第193回通常国会(2017年1月から6月まで)学校法人森友・加計学園国会

[画像]前川喜平さん、2017年7月10日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 学校法人加計学園の国家戦略特区をめぐる不信感から、内閣支持率が月数ポイント落ちる事態になっています。政府自民党も重い腰を上げて、閉会中審査にのぞみましたが、与野党とも新事実は出ず。今後の方向感が見えなくなりました。

【衆議院内閣委員会 平成29年2017年7月10日(月)】

 8時30分頃開会。秋元司委員長が「文部科学行政の基本施策に関する件(国家戦略特区における学部新設について)」連合審査をしたいとはかり、全会一致で議決しました。散会。

【衆議院文部科学委員会】

 永岡佳子委員長が、内閣委からの連合審査会の要求について受諾することを全会一致で議決。散会しました。

【衆議院文部科学・内閣委員会連合審査会】

●政治自民党側からの新事実は無し。

 自民党の都議選大敗による審査会なので、同じ文書などについて、政府自民党が新事実を出して説明するのかと思っていたのですが、それはなく、木で鼻をくくったような長広舌の答弁。

 午前9時前に、内閣委から連合審査を求められた「親委員会」の、文科委委員長、永岡佳子会長が着席。ただ、委員部員から「理事会が散会するまで待ってください」という趣旨のことを言い、会長は離席しました。9時10分過ぎから、衆議院インターネット審議中継は、ブルーバックとなっています。

 NHK国会中継によると、参考人の、前川喜平・前文部科学事務次官は、西通用門とおもわれるところから国会に入ったようです。参考人は正玄関から入ることが多いような気がしますが、霞が関40年ということもあり、入りやすい所から入ったのでしょうか。

 理事会は、「親委員会」の文科委理事が開きました。民進党が提出した「バクダン資料」をめぐって、配布するかどうかで、与野党がもめました。ただ、自民党の都議選惨敗を経ての閉会中審査ですから、政府与党側から、同じ質問に関して新事実を含めて説明することが求められます。

 午前9時25分頃、開会しました。

●理財局長は昇進、航空局長は退職で、公文書管理規程に違反しているのではないかと追及、福島伸享さん。

 民進党の福島伸享さんから。財務省の佐川前理財局長が出席しないなか、内閣府の答弁を根拠に、公文書管理規程に違反しているのではないかと指摘。国土交通省の佐藤航空局長は退職した、として官房長官に説明責任を求めました。

 福島さんは「構造改革特区室は、ここにいる、後藤祐一さんと私と合計3名で始めたものだ」としながらも、「今の国家戦略特区は、岩盤規制の突破口ではなく、新たな参入障壁をつくっている」と語りました。

●九州北部福岡中間・大分日田市の豪雨激甚災害指定は明言せず、官房長官。

 民進党の緒方林太郎さんの問いに答えて、菅官房長官は、福岡県中間市・大分県日田市への激甚災害指定については、積極的な答弁は避けました。

●前川喜平さん、「2003年から大学の量的規制を撤廃」も、獣医学部は例外だった。

 緒方さんの問いに答えて、前川さんは「昭和51年1976年私立学校助成法で、大学は量より質だ、として5年間新たな設置を認めなかった」としました。そのうえで、「平成15年2003年から、量的規制を撤廃した」ものの、獣医学部は対象になっていないと説明しました。

【参議院内閣委員会】

 「国家戦略特区における学部新設について連合審査の申し入れ」を決定し、散会しました。

【参議院文教科学委員会】

 「国家戦略特区における学部新設について連合審査の申し入れ」があった時の、受諾、日程、政府参考人及び参考人の招致を委員長に一任して、散会しました。

【参議院文教科学・内閣委員会連合審査会】

 ●内閣人事局無い時代の霞が関の有名人、加戸守行元愛媛県知事が登場。

 午後の参では、加戸守行・前愛媛県知事が参考人として登場。西岡武夫文部大臣のころ、加戸守行・文部科学大臣官房長は更迭され、確実だった事務次官のポストを前に省を退職しました。「官僚丸投げ55年体制の内閣人事局が無い時代」では極めて異例なことでした。このことは霞が関他省でも有名となりました。今世紀になってからえひめ丸の不幸な事件のとき、「テレビに出ている加戸・愛媛県知事ってあの人だよね」とずいぶん話題になりました。官房長を更迭されたら、省を去るしかないわけですが、その後、知事になれば、その前の経歴の官房長か事務次官か、という部分は「上書き」されますから、それでよかったのでしょう。ただ、1980年代から大学誘致をめざして、2018年開学ということになったことが、悲願と言えるのでしょうか。時代の流れに押し流された加戸さんが、後輩の前川・前事務次官の横で国会で答弁しました。

 ◇

●見逃したメッセージ、「ブログのようなずさんな演説」とは。

 国家戦略特区を、安倍晋三首相が打ち上げたのは、前回解散の直前でした。

 平成26年2014年9月29日(月)の所信表明演説で、次のように演説しました。

 「その突破口が、国家戦略特区です。今月、本格スタートしたばかりですが、更に改革メニューを充実します。創業や家事支援に携わる、能力あふれる外国人の皆さんに、日本で活躍してもらえる環境を整備します。公立学校の運営を民間に開放し、グローバル人材の育成や、個性に応じた教育など、多様な価値に対応した公教育を可能にしてまいります。安倍内閣の規制改革に、終わりはありません。この二年間で、あらゆる岩盤規制を打ち抜いていく。その決意を新たに、次の国会も、更にその次も、今後、国会が開かれるたびに、特区制度の更なる拡充を、矢継ぎ早に提案させていただきたいと考えております」

 このように演説しました。私は当日、衆議院本会議場で直接傍聴しました。

 この後、民主党本部。

  海江田万里代表は、記者会見で、冒頭次のように語りました。

 「今日は本会議場で安倍総理の所信表明演説を拝聴しました。ただ、はっきり言いまして非常にずさんな所信表明演説だったと思います。ブログに書くような中身が羅列されていまして、全体を通して今、日本の国民が心配しています経済の先行きでありますとか、雇用の不安定でありますとか、あるいは集団的自衛権の行使の問題ですとか、そういう国民の関心についての発言はほとんどなかった」
  私はこれを聞いて、激昂しました。あきらかに私の方を見て、あてこするように、「ブログに書くような」という形容詞句を悪い意味で使った海江田さん。なぜ、海江田さんは私をあてこすったのか。

 それはその4日前のブログで次のように書いたからでしょう。「少数与党で発足したことから初めから厳しかった羽田内閣にとって、与党・日本新党の1期生4人が単独会派「民主の風」を発足させたことは、「悪魔の風」とも言っていいきつい出来事でした。民主党の海江田万里代表は、悪魔の風4人組のうち、今も民主党衆議院議員である3人のうち、枝野幸男さんを党幹事長、前原誠司さんを引き続きネクスト財務・金融相にしました」「海江田万里代表(ネクスト総理)の人事は下手であり、速やかな善処を強くのぞみたい」。

 党内の主導権が握れず悩む海江田さんが、枝野幸男さんを幹事長に起用した努力を、私が、羽田内閣の裏切り者を幹事長にした、と批判したからでしょう。枝野さんは、民主党政権時代は、「民主党7奉行」とされましたが、羽田内閣時代の裏切りと、選挙無き政権交代を、今でも羽田先生らが怒っていることは下野後に私が改めて確認した事項です。
 
 よく私が激高しやすいことを、勝手に心配してくれる人がいるのですが、政治にかかわる者は、激昂しやすくなければ適性がありません。その29日に戻って、私は海江田さんに次のように質問しました。「構造改革特区に関しては、「次の国会も、さらにその次も、今後、国会が開かれるたびに、特区制度の更なる拡充を、矢継ぎ早に提案」すると演説していた。特区に関する提案は国会提出の必要がない」。

 私はここで、とつぜん出てきた国家戦略特区という言葉に対応できていませんが、構造改革特区を含んだ特区は、内閣府令など政省令で対応できるのに、安倍首相が国会回次ごとに法案を提出する、という趣旨のことを言ったことについて、何か、間違えがあったのではないかと指摘したのです。

 これに対して、海江田さんは「今ここにあります(所信表明演説の)原稿を見ますと、(略)今言った「次の国会」とか抜け落ちています。だから、おそらくその問題に気がついて、落としたのではないかなと思います。この原稿に基づく限り、ですね。実際に言ったかどうかは、ちょっと私も。これをずっと見ていまして、特に大きな違いはなかったと思います。そこは確認をしてみてください。」

 と答えました。

 見逃したメッセージとして、「国会ごとに国家戦略特区法改正案を出す」ことについて、海江田さんは違和感を感じなかったようです。
 
 その後、学校法人加計学園獣医学部特区のように、「合法である不適正な事例」が出てきたということになるでしょう。安倍さんが「合法だ」といえば、それで終わりではないでしょうか。

 上の、「2014年9月29日の出来事」について。その82日後、海江田ネクスト首相は、衆院選で落選して、代表を去りました。もちろん、私は海江田万里さんの衆議院議員復帰を切望しています。私は、誰の内閣だろうと、2か月間で15ポイント内閣支持率を落とすような大山鳴動する「この国民にして太平洋戦争在りけり」という国民性には常に警鐘を鳴らし続ける人でありたい。

このエントリーの本文記事は以上です。
(C)2017年、宮崎信行。

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