宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

出入国管理法改正案で「第二、第三夫人は健康保険法の対象外だ」「日本では犬食禁止は法制化せず」補正予算成立、衆議院委員会の攻防へ

2018年11月07日 17時49分18秒 | 第197回臨時国会2018年12月までの「定例日無視延長なしのひどい国会」」

 補正予算が全会一致で成立しました。

 水曜日が定例日の衆議院内閣委員会が開かれ、初入閣6名を含む9大臣が所信表明。宮越光寛大臣が法案答弁することが多そう。次回は各党の一般質疑があります。

【参議院本会議 平成30年2018年11月7日(水)】

 「平成30年度第1次補正予算」が、投票総数235、賛成235、反対0の全会一致で可決し、成立しました。序盤国会を終えました。

【参議院予算委員会 同日】

 「平成30年度第1次補正予算(案)」の審議2日目、基本的質疑2日目。締めくくり質疑の後、午後4時11分から討論。衆議院と違って、全会派が討論し、各々、賛成を表明しました。全会一致で「原案通りに可決すべきだ」との審査報告がまとまり、本会議に上程され、成立しました。

 来年通常国会へ向こう9か月の政治闘争の論点に「付箋」が張られました。

●外国人材拡大と健康保険。

 足立信也さんは、「出入国管理法改正案」(197閣法1号)をめぐって、外国に住む扶養家族が日本の健保3割負担を使えないようにすべきだとの機運が高まっていることをふまえ、「イスラム教の国から来た外国人技能実習生が、一夫多妻制のもと、どうなるのか」と問いました。根本匠・厚生労働相は迷走しながらも、第一夫人である配偶者は健保が使え、子供ら扶養家族も健保が使えるが、第二、第三、第四夫人は健保が使えないという政府解釈を示しました。これについて、第一夫人や子供も、外国在住の場合は健保が使えないようにしようという法規制の機運が高まっています。午後の締めくくり質疑で別の議員が、ベトナムでは犬食が盛んだが、台湾では犬食を禁止する法律があると紹介し、日本でも法規制してほしいとしました。これに対して安倍晋三首相(自民党総裁)は「食文化には多様性がある」と答弁し、日本では規制する必要性はないとしました。外国人技能実習生など人材拡大法案の審議は長期戦になりそうな気配です。

 山下貴司法相は、外国人技能実習生へのマイナンバー付与について「良いご指摘だ」とあいまいな答弁でしたが、石田真敏総務相は「特別永住者などにも付与されており、日本人同様に付与される」と明確に答弁しました。

●教職員給特法にょる残業代ゼロは県選出国民民主党議員も関心。

 教師の残業代ゼロの元となっている「給特法」の改正について、柴山昌彦文部科学大臣は「今まさに議論の最中だ。教員の専門性を高めていきたい」とし、審議会のとりまとめに従う方向性を示しました。野党側としてはこの議員は国民民主党で、日教組全国本部の推薦は無いと思いますが、1人区選出のため、「県教組」の推薦は受けているんだろうと思います。

●水道法改正案は1年半経っても議論続く。

 希望の会(自由党)の青木愛さんは、「水道法改正案」(196閣法48号)について。自由党支持者ら新自由主義を拒む考えの人の中には、水道を外資に売り渡す法案ではないかとの観測があるようですが、青木さんは「広域連携が必要な点もある」とし、売り渡しよりも生き残りのための法案だという認識を示しました。

 与党・公明党の谷合正明さんは「モバイル型応急仮設住宅」について山本順三・防災担当大臣に質問しました。

●九州電力などの再生可能エネルギー固定買い取り中止について。

  共産党の仁比聡平さんは、九州電力の太陽光発電の固定買い取りの拒否について。

●消費税軽減税率のキャッシュレス決済優遇と省庁の障害者法定雇用率水増し問題。

 維新の清水貴之さんは、来年10月の消費税10%時に軽減税率8%の商品でキャッシュレス決済を優遇する案について、「機器がいる」と指摘。経産相と経財相は、キャッシュレス決済で零細商業者の機器の導入費はさほどかからないとの認識を強調しました。清水さんは、各省庁の障害者法定雇用率水増しについて「民間企業ならば罰金をとられるのにという声が強い」と閉会中の地元の声を紹介しました。

 また、麻生太郎財務大臣は、共産党の小池晃さんと立憲の有田芳生さんに対して、「指をさすな」と語りました。同日はアメリカ中間選挙で上院はトランプ共和党が過半数、下院は民主党が過半数のねじれ国会となりましたが、アメリカ人は平気で指をさしますので、指をさすのが失礼だというのは、グローバルスタンダードではありません。

【衆議院内閣委員会 同日】

 第一委員室をつかって、各大臣の所信を聞きました。

 先の通常国会では、上川陽子法相が秘密保護法担当大臣として内閣委でも所信を述べましたが、今回からは、宮越光寛・沖北相が秘密保護法担当大臣になったとのこと。参院側でターゲットになっていた山下貴司法相は内閣委には出席しないようです。

 きょうはまず、委員長が就任あいさつ。続いて、菅義偉・官房長官(兼)沖縄基地負担軽減相、山本順三・国家公安委員長(兼)防災担当相、石田真敏・マイナンバー相、石井啓一IR相、宮越光寛大臣、平井卓也クールジャパン相、茂木敏充経財相、片山さつき地方創生相、桜田義孝五輪相の9人が所信表明。

●特区法改正案の成立お願いは保留か。

 この中で、片山さつき大臣は、国家戦略特区法改正案が継続になっていることについて、とくに言及しませんでした。

●桜田大臣、サイバー基本法案は努力する。

 答弁が不安視されている、桜田五輪相は「サイバーセキュリティー基本法改正案」(196閣法45号)の法案成立について「努力する」と控えめな表現。

●宮越大臣は張り切り、海洋再生エネ法案と成年被後見人適正化法案に意欲、子どもの貧困対策大綱見直しも前向き。

 一方、宮越さんは政府が再提出した「海洋再生可能エネルギー特措法案」(197閣法5号)の成立、「成年被後見人の権利の制限の適正化法案」(196閣法56号)の審議と成立をお願いしました。さらに、「来年10月の幼児教育無償化について自治体と連携したい」「子どもの貧困対策大綱制定から4年が経ったので見直しを検討する」と積極的な意欲を示しました。但し、上述の通り、秘密保護法担当相が内閣府の宮越大臣に移ったということですが、これを機に、秘密保護法の運用状況の政府報告をないがしろにならないようにしてほしいものです。

●女性活躍推進法の3年後見直し規定で法改正には言及せずも改善を検討。

 特区にはあまり言及しなかった片山さんですが、「女性活躍推進法の3年後見直し規定」を受けて、法改正には言及しませんでしたが、意欲的に検討するかまえをみせました。

●IRカジノは依存症対策も所掌強調。

 石井IR相は、IRの整備だけでなく、「依存症対策にも万全を期す」と所掌事務を強調。

●TPP11拡大は日本主導、全世代型社会保障は高齢者の働き方改革。

  茂木さんは「TPP11は12月の発効が確定したが、参加国の拡大についてはわが国が主導権を持つ」と明言。アメリカが来年ねじれ議会になるので、トランプ大統領のグローバリズム見直し保護主義(メイク・アメリカ・グレート・アゲン)に修正がかかることも予想されます。茂木さんは、全世代型社会保障担当大臣にもなったので、「高齢者の多様な働き方を進める」との、微妙の国策マターを総理と共有している立場を明確にしました。茂木さんは今、生きていて、楽しくてしかたないでしょう。

 次回は金曜日。
 
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出入国管理法(案)の成立を前提とした「健康保険法改正案」第198回通常国会に提出のアイディア、健康保険組合員の外国在住の扶養家族は除外

2018年11月07日 06時12分37秒 | 第198回通常国会2019年1月、改元、参院選へ激闘

[写真]厚生労働省、3年前の、2015年7月、宮崎信行撮影。

 「健康保険法改正案」を、2019年通常国会に提出する構想が高まりました。

 健康保険組合、または、協会けんぽの保険証を持つ人の扶養家族で、外国に住んでいる場合は、日本国内で保険証を使えず、10割自己負担となる改正法案。海外留学中の日本国民などの対応は、今後詰めることになりそうです。

 これは、きょう現在国会で議論されている「外国人材拡大のための出入国管理法及び法務省設置法の改正法案」(197閣法1号)をめぐって、野党の玉木雄一郎代表らが、先週の本会議で外国人技能実習生の医療保険の適用範囲の明確化を安倍晋三首相(自民党総裁)に求めたことなどから検討の機運が高まっていたものです。

 自民党が外国人材拡大の法律制定を見越して、健康保険組合と協会けんぽに加入する被保険者の扶養家族について、外国に住んでいた場合は、日本国内で医療を受けられないようにする方向性となりそうです。自己負担3割でなくなるという意味ですが、診察そのものを拒まれることもありそう。国民健康保険や公務員共済などは対象外。

 この話は、けさの、朝日新聞と読売新聞がともに1面トップで報じました。このような「抜きネタ」が朝読1面トップで「同着」になるのは、私はほとんど見た記憶がありません。自民党内に、一気呵成に外国人技能実習生など外国人材の拡大を仕上げてしまえという圧力が強まっているのかもしれません。

 法務省が所管する出入国管理法改正案の提出後に、厚労省が所管する健康保険法改正案の検討が始まるという、「政治日程の乱れ」が生じており、来夏の参院選に向けて、政府与党が総崩れになる気配が出てきました。

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