映画を観ながら「家族の絆」ということをしみじみと考えされられた。山田洋次監督描く「おとうと」は、ややもすれば薄れかけている日本の家族の在り方に対する鋭い問いかけではないかと感じた・・・。
映画「おとうと」を全国封切りの日の30日(土)にユナイテッドシネマ札幌で観た。
映画は山田洋次監督、吉永小百合、笑福亭鶴瓶が主演ということで話題になっている映画である。
ストーリーを書き始めるときりがないので省略するが、映画の公式サイトによると、「東京で堅実に生きてきた姉の吟子(吉永小百合)と、大阪で何かと問題ばかり起こしてきた弟の鉄郎(笑福亭鶴瓶)との、再会と別れを優しく切々と謳いあげる、笑いと涙にあふれた物語」とある。
問題ばかり起こす弟を、吟子の兄の庄平も娘の小春も「縁を切れ!」と迫るのだが、吟子はどうしても弟鉄郎との縁を切ることができない。
いくら問題を起こしても弟を懸命にかばおうとする姉の姿に無償の愛をそこに見てしまう。私はそのとき「血を分けた・・・」という言葉を想い出していた。それこそが「家族の絆」なのだと・・・。
今日本人の中から薄れかけてきているかのように云われる「家族の絆」だが、何にも代えがたい家族の繋がり(絆)を今一度問い直す機会としたいものである。
奇しくも昨夜(31日)NHK総合テレビのNHKスペシャルで「無縁社会」という番組が放映されていた。
さまざまな理由から家族との絆を断ち、寂しい老後を過ごす人たちを追ったものだった。
あるいは、鉄郎もその一人だったかもしれない。しかし、鉄郎は姉の吟子の思いもあり、かろうじて吟子や姪の小春に看取られながら最期を遂げることができた。
映画としては、主演の吉永小百合が彼女の持ち味である優しさや温かさをスクリーンの中で演じきり、相手役の笑福亭鶴瓶も彼の個性を十分に出し切った好演だったと私は見た。
年齢と共に涙腺が弱くなってきていることを感じている私だが、上映中何度も涙し、そして笑った。
山田洋次監督の名作「寅さんシリーズ」を想い出す、涙と笑いの展開はまさに山田ワールである。
笑いと涙、そして「人生とは」と問いかける山田ワールドに酔いしれた2時間だった。