時は1988年。私と同年代の方ならば、「三菱ミラージュ」というクルマの形は思い出せなくても、松任谷由実様の「リフレインが叫んでる」という曲のことは憶えていることであろう。
当時私は大学生だったが、あの頃は誰のクルマに乗っても、由実様のアルバム「Delight Slight Light KISS」のカセットテープが流れていたものだ。
本日紹介するクルマは、そのミラージュの兄弟車だった「ランサー」である。
ランサーといえば、「ランタボ」とか「ランエボ」等のスポーティーなイメージの強いブランドネームなのだが、この3代目ランサーは、どういうワケか5ドア車だった。
このグラッシーなキャビンは、当時の「スプリンター・シエロ」とも共通する処理である。
「セダンにして、アクティブなフォルム」。ロングルーフ+ラップラウンドしたウインドウは、確かに流麗かつ斬新だった。
三菱お得意の「サイクロンエンジン」。1300SOHCから1800ディーゼルまで、なんと5種類の仕様が存在した。
今も昔も三菱の最高峰グレードである「GSR」は、1600ccDOHCエンジンをインタークーラーターボで武装し、145ps/21.0kg-mを発揮。
ブラック基調のインテリアが、スポーツ心を昂ぶらせる。
「SXサルーン」という豪華装備グレードには、「オートヒーター」が標準装備!
ただし「エアコンはオプション」だった模様で、この「オートヒーター」というモノがどのように素晴らしい空調装置なのかは、私にはいまひとつ理解できなかった。
「見やすい盤面透過照明メータ」。GSR等のスポーティーグレードには、昼と夜とで盤面の色が変わる、素晴らしい「カメレオン機構」が付いていた。
写真で見る限り、針が盤面の色に隠れてしまっており、見やすかったとは思いがたいのだが、実物は見やすかったのかもしれない・・・
このクルマの偉いところは、ベーシックグレードの「S」を除く全車に「パワー・チルト・テレスコピック」のステアリングが付いていたことだ。
特にこの昭和の時代なのに、テレスコがほぼ全てのグレードに標準装着されていたことには驚いた。
ちなみに、今私が乗っている「レガシィ2.0i」にはテレスコは付いていない。
それで不便を感じたことはないとはいえ、世の中には色々な体型の方がおられるので、こういうモノは、やはり付いていた方が親切とはいえよう。
グレードやカラーも実に数多く揃っており、5段マニュアルのギヤ比もエンジンや駆動形式に合わせて5種類が存在した。
コスト重視の現在では考えられないことである。
だが、やはり「ランサー」というブランドのイメージにはこの5ドア車はまったく合っていなかったように思われる。
歴代ランサーの中で、もっとも存在感が希薄なのが、この3代目だったかもしれない・・・合掌。