このSONY製トランジスタラジオ TR-724の修理履歴です。それぞれをクリックしてください。
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修理(6/6)
SONY製トランジスタラジオ TR-724の修理が完了しました。最後に、このラジオの筺体やラジオを包む革を磨いたりトラッキング調整をすることにしました。まず、革磨きをしました。発売以降50年以上は経っているので、革表面のしわやつなぎ目には細かなゴミが付着していました。水を含ませたティッシュや布で、積年のゴミを擦るようにして取り除きました。すると見た目にも分かるほど、革が綺麗になりました。
湿らせたティッシュや布で擦る 裏側の革も丁寧に磨く
次に革の傷んだ箇所を補修しました。ボリュームつまみやチューニングつまみは煩雑にいじる箇所です。その操作箇所の革部分は特に傷んでおり、切れてしまった箇所もありました。その切れた箇所を最初に補修しました。
革と同じ黒色の布を、傷んだ革の幅に合わせてハサミでカット
まず、革と同じ色の布を用意します(今回は黒色)。その布を、傷んだ幅に合わせてはさみでカットします。その布の片面に接着剤を塗って、傷んだ革の裏側に貼り付けるように当てます。これで、革の傷んだ箇所が目立たなくなるよう補修できました。
傷んで切れてしまった革 革の裏側から布を当てる
革ケースの補修が終わると、ラジオの筺体を磨きました。筺体の汚れは油脂分を含んでいることが多いので、水を含ませたり乾いた布で拭いても汚れを広げるだけになることがあります。このため、アルコールを含ませた布で拭きます。それでも汚れが取れない場合は、キャブクリーナーなどの強力な洗浄剤を使うと良いです。しかし、ラジオ部品などを溶かしてしまうことがあるので細心の注意が必要です。私はそれほど使いません。
油脂分の汚れが薄く広がる表面 アルコールで綺麗に拭き取る
最後に外部アンテナのメンテナンスをしました。に薄く油をさしたり磨きました。このラジオの外部アンテナは不思議な構造をしています。最初、このアンテナの根元に付いていた鉤のようなものは何だろうと思っていました。このラジオ専用の工夫が凝らされていました。
鉤のようなものが付いた特殊な外部アンテナ
このラジオ専用の外部アンテナ根元の鉤のようなものは、ラジオをテーブルなどの平面上に置いた時に倒れないようにするための支えでした。このような構造の外部アンテナは他には見たことがありません。このような小さなラジオでは、短波放送を聴くときに外部アンテナを目いっぱい長く伸ばすと非常に倒れやすくなります。これは、倒れにくくするための工夫でした。
外部アンテナをラジオに固定 倒れないための凝った工夫
革ケースは、ハンドストラップが切れて無くなっていました。部品取り用ラジオの革ケースには付いていたので、時間があればこの革ケースの方に取り付けなおそうと思います。また、ジッパーは傷みがひどいので、あまり開け閉めしないほうが良さそうです。なお、トラッキング調整をしようとしましたが、このままでもよく受信するので止めました。
このトランジスタラジオ TR-724はとても気に入りました。その理由として、1.感度がとても良く、低い周波数から高い周波数までよく受信します。さらにAGCがよく効いていてどの放送局も音量がほぼ一定です。2.音が良い。古いラジオは一般的に経年変化のためか高音域が出ず、くすんだ音をしているものが比較的多いです。しかし、このラジオは高音域がよく出ています。中間周波数の帯域幅が広くしてあるのだと思います。3.選択度も比較的良い。夜使っても混信が目立ちません。4.片手にすっぽり収まる大きさ。幅,長さ,厚さが絶妙。微妙な曲線がとても持ちやすい。今でも通用するデザインだと思います。
欠点としては、1.ダイヤルつまみを右に回すと、ダイヤル表示が左に回るのはやや使いにくいです。2.当時のラジオはほとんどそうですが、手動取り付け方式の外部アンテナは無くしそうです。3.筺体がとても華奢です。薄く軽量に作られているため、大事に扱わないと破損しやすいように思います。実際、部品取り用のラジオ TR-724は大破していました。しかしそれでも私のとてもお気に入りの実用的ラジオです。
今回修理したトランジスタラジオ TR-724、黒い革ケースに収納