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公案

2014年02月06日 | 雑記帳
 【公案】(こうあん)

 ①公文書の下書き。②禅宗で、参禅者に示して座禅工夫させる課題。③工夫。思案。(広辞苑)



 シリーズとして読み続けている「隠蔽捜査3」で、主人公が悩み解決のために書物を購入する。
 その中の一冊に「さまざまな公案」について書かれた本がある。

 小説のなかみに直接関わってくるのは、「婆子焼庵(ばすしょうあん)」という公案。

 一人の雲水を20年にもわたって面倒をみていた老婆が、若い娘を使って抱きつかせ雲水を試そうとする。雲水は平然と何も感じないことを答えるが、老婆は烈火のごとく怒り、追い出し庵を焼いてしまった。

 この公案の価値に最初気づかない主人公竜崎伸也
 しばらく頭から離さずに、自分なりの解答を得た。

 読者である私はある程度予想がぽっと浮かび、なあんだ簡単ではないの、と軽口を言いそうになったが、ちょっと考えてみると、そういう決断を求める構えでは座禅にならないんだと気づく。

 案に集中し、問答をいくつ積み重ねられるかが肝心なのだ。

 早く解決をみようとする雲水のその心が、老婆を怒らせたとも解釈できる。


 公案とは、なかなか味わい深い。




 「2014読了」16冊目 ★★

 『疑心 隠蔽捜査3』(今野 敏 新潮文庫)