すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

癒される人,餓えた人

2014年02月15日 | 読書
 「2014読了」20冊目 ★★

 『隠蔽捜査3.5  初陣』(今野敏  新潮文庫)

 文庫本の今野敏シリーズ4作目。準主役とも言うべき伊丹をメインにした「スピン・オフ短編集」だ。かの「踊る大捜査線」や「相棒」でも映像でそうした形でヒットしている。いわゆる派生モノ?だろうが,ある意味では視点の変換だから,味わい深く感じることもある。伊丹の弱さや狡さ,人間臭さに癒される。


 このシリーズに戸高善信という巡査部長が登場する。なかなか魅力ある役柄だ。いかにも現場のたたき上げで,足と勘を大事にする昔ながらのパターン。いつかこの人もぜひ取り上げてほしいものだ。「ちょっと引っかかる」という感覚が職人肌に見えるし,多くの「仕事」が持つ醍醐味とは,その発見にあったりする。


 秋田県では直接視聴できないTBS系で,このシリーズがドラマ化されている。竜崎が杉本哲太で,伊丹が古田新太では少しイメージが違う。「あまちゃん」人気もあるかもしれないが,はっきり言えば二人とも犯罪顔だし…。ここは重鎮ならば中井貴一,佐藤浩市あたりか。それは我慢するから早く放送してほしい。



 「2014読了」21冊目 ★★

 『たとえば君 四十年の恋歌』(河野裕子・永田和宏 文春文庫)

 以前2年ほど続けて「NHK短歌」という番組を視聴していた。選者の一人として登場していた河野裕子は,数名いるなかでも解説に説得力があるなあと感じていた。時期から言うと,河野が乳癌を治癒し,まだ再発していない頃である。あの語り口とともに,覚えている歌があり,そのことを3年前に書いていた


 河野と永田の物語は,雑誌で連載していたから,ある程度わかっていたが,今それをまとまって読むと,人と人が交わり合う,刺激し合うことの複雑な模様に圧倒される。正直解せない歌も多い。ただ,この短歌形式があったからこそ,表出とは次元の異なる「表現」を餓えたように求めた迫力が出てくると悟った。