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桜と絵本と豆乳と

自然の摂理に合わせる原則

2014年05月05日 | 読書
 「2014読了」49冊目 ★★

 『隠蔽捜査4 転迷』(今野 敏  新潮文庫)
 

 今年になって5冊目の『隠蔽捜査』だ。いつもながら主人公竜崎の思考や口調が快い。内容的には今までより少し展開が抑えめかな?それはともかく,意外な知識を得た。「家宅捜索は日の出から日没までしかできない」という一文。ああトリビアだなあと思った。きっと日没の時間に終わる根拠があるのだろうな。


 日の出から日没までの仕事といえば,第一次産業が主たるものだ。自然相手だから当然だが,今は原則とは言い難い。人間は,時間を支配しようと明かりをつくり,自分たちの都合に合わせて仕事の量や時間帯を拡大してきた。それなのに取り締まる側の警察が,一部であっても日没で終わる原則を持っているとは…。


 「転迷」そのもの広辞苑には載っていない。「転迷開悟」という四字の仏教用語である。「迷いを転じて悟りを開くこと」とある。今回の話でいうと,次々に事件や問題が押し寄せてきて,処理の過程で迷いが多く生じているのだが,このシリーズの場合,いつも「原則・本質」に立ち返ることから解き解されていく。


 再び「日の出・日没」に拘れば,警察は(それ以外の機関も?)いい原則を持っているではないか。一日何時間と決めていることが多いが,自然の摂理で変化する時に合わせて原則を作ったのは,素敵だ。自分たちで都合よく変えられるものとは,案外信用できないものだ。柔軟さと自分勝手をはき違えることがある。